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ええまちづくりのええ話

大阪府内の地域団体の活動事例や、行政職員や生活支援コーディネーターの研修の発表も広く掲載。
団体の活動の参考にしたり、市町村の仕組みづくりに役立つ記事がたくさんです。

住民や行政と一緒に力を合わせて 目指すべき太子町の未来像を、見える化したい。

2017年8月24日

太子町で、住民主体の地域づくりを推進されている、貝長 誉之さん。太子町立総合福祉センターを拠点に、買い物支援や高齢者交流サロンのサービス開発のほか、住民さんとの触れ合いを通じて、地域のお年寄りを支えておられます。生活支援コーディネーターとして現在の太子町と、これからの太子町について、どのような活動をされているのかお聞きしました。

貝長 誉之 さん

JA職員を経て、社会福祉法人太子町社会福祉協議会へ。コミュニティーソーシャルワーカーとして地域の福祉に取り組んだ経験を活かし、ていねいに町を巡回するスタイルで太子町のまちづくりに取り組んでいる。社会福祉法人太子町社会福祉協議会総務係長、第1層生活支援コーディネーター。

コンパクトな町の特徴を活かして巡回を重ねる。住民さんとのコミュニケーションを通じて、高齢者向けサービスを開発しています。

以前から社会福祉協議会の職員として活動し、平成29年度から生活支援コーディネーターを務めています。大阪府の東南部に位置する緑豊かな太子町は、人口が約13,500人、4×4km四方の小さな町です。町の端から端まで車で15分もあれば回れるコンパクトさを活かし、ていねいに地域を訪ねるようにしています。高齢化率は27%程度で、要介護認定率は府内で2番目に低い状況です。農村部ですから元気に畑仕事をしたりするお年寄りも多く見られますが、独居老人もいれば老老介護もあり、都市部と同じ状況もあります。この町でたった1人の生活支援コーディネーターですが、いろいろな方の協力をいただきながら精力的に活動しています。

各地区や自治会などを行政とともに巡回し、新しい介護予防・日常生活支援総合事業が始まり「要支援が打ち切られるのでは?」という住民さんの誤解を解いたり、2015年から10年かけて急速なスピードで少子高齢化が進むという事実をていねいに説明してきました。また総合福祉センターにお年寄りの方が店員にもお客さんにもなれるカフェを開発しました。これは2016年10月から開始した高齢者向けサービスですが、いまではお年寄りたちで運営しています。毎月1回ミーティングをして、売上や注意点なども共有していて仕事みたいですよ。店員をしてくださる方にはコーヒーマシーンの使い方など、きちんと研修を受けていただくようにしているので、単に余暇を過ごすのではなく、ここに役割があることでキラキラ輝くお年寄りの姿が印象的です。そのほか、住民さんから希望があり「タブレットの使い方講座」を携帯電話会社の方に講師を派遣していただいて開催したりしています。これも地元の携帯ショップを通じて、すぐに実現化することができました。これは、企業にも担い手になってもらえる事例だと思います。

総合福祉センターでのカフェの様子

生活支援コーディネーターは目的達成型。
住民と行政がともに歩めるような道筋を示すことが大切です。

もともとある問題を解決するコミュニティーソーシャルワーカーと違って、生活支援コーディネーターは目的達成型だといえます。住民が主体となって地域づくりを進められるようにお手伝いすることが大切です。それには行政も住民と目線を合わせる必要があります。そこで私たち生活支援コーディネーターは住民が望む太子町の目指すべき将来像を、行政にきちんと伝えていくことが肝心です。住民・行政・社協の3者がひとつになれるように役割を果たしていきたいです。

さまざまな高齢者向けサービスを、意欲あるボランティアさんに担ってもらうだけでなく、自然と住民の方にも担ってもらえるようにしたいと思っています。そのためには行政の丸投げといわれるようなことではなく、私たちも1〜2年かけて住民さんと一緒にサービスを育てていくことが肝心です。無理なく長く続いていくような制度にすることを心がけています。

開催回数37回、参加人数延べ700名の勉強会から発足した協議体『SASAE愛太子』と魅力ある地域づくりに貢献したい。

住民が主体となった地域づくりを推進する上で大きな役割を果たしているのが協議体『SASAE愛太子 (ささえあいたいし)』です。この住民主体の協議体は、太子町オリジナルの地域包括ケアシステムの構築に向け、町会・自治会等を対象にして開催した勉強会(開催回数37回。延べ700名参加)の内容を踏まえて発足しました。約20名の地域住民の方が運営していまして、超高齢社会を迎える太子町の地域づくりの企画・立案のほか、活動で得たノウハウなどを地域や団体などに展開しています。これからは10年後を見据えて新たな担い手を育成するにあたり、中学生にも興味を持ってもらえるようにアプローチしていきたいですね。それには魅力的な広報活動が重要で、より効果的なツール制作やSNSによる発信力の強化をしなくてはならないでしょう。私自身も生活支援コーディネーターとして協議体『SASAE愛太子』を支え、『高齢者交流サロン』や介護予防の『元気ぐんぐんトレーニング』も含めて、太子町全体で魅力ある地域づくりに貢献していきたいです。

サービスを開発する上で、もっとも大切なことは「なぜ利用したいのか」を追求することです。

太子町の大きな課題は「移動支援」、「集いの場・交流」、「買い物支援・生活支援」、「隣近所・町会の活性化」の4つ。意欲ある住民の方とのワークショップの中で出た「近い将来にあったらいい行政サービス、地域のたすけあい」と思うものです。たとえばボランティアのドライバーによる「移動支援」なら、「単に移動するという手段ではなく、どんな目的があるから移動したいのか」といった、具体的な理由を突き詰めて考えるようにしています。そうしなければ“絵に描いた餅”になってしまい、誰も利用しないサービスになってしまう危険性があると思います。「集いの場・交流」は、先に申し上げたような『高齢者交流サロン』は現在5カ所あって、このモデル事業を拡げていく動きが具体的に始まっています。「買い物支援・生活支援」、「隣近所・町会の活性化」も協議体の皆さんとともに企画しているところです。

空き家活用など行政との連携も円滑。
スピード感をもって仕組みを作っていくことで、福祉にやさしい町づくりを実現する。

今後、総合福祉センターで実施しているカフェのサービスを各地区に展開していくためには、集会所だけでなく空き家も活用していく必要があります。それには行政の他の部署とも連携しなくてはいけませんが、太子町は社協と行政の連携が円滑なので、スピード感をもって対処できるケースが多いです。手厚くフォローできているのではないでしょうか。

左)生活支援コーディネーター 貝長さん 右)太子町 小泉さん

地域包括ケアシステムという制度は、長期的視点にたって進めていく時間のかかる仕事ですが、必ずやり遂げるという信念のもとで粘り強く業務にあたっています。住民さんや行政の方とひとつになって、太子町を盛り上げ、福祉の町、健康の町をつくっていきたいと思っていますので、これからもご協力のほど、よろしくお願いいたします。

〈貝長さん1日の流れ〉

8:30 出社
9:00〜11:00 地域の集会所を訪問。バリアフリーなど設備状況を確認、住民の要望をヒアリング。
11:00〜12:00 町役場で打ち合わせ
13:00〜15:00 高齢者サービスの運営管理
15:00〜19:00 資料作成、総務業務など
19:00〜21:00 協議体の勉強会に参加。地域の課題やニーズをヒアリング。
21:00 業務終了

 

太子町の小泉さんのインタビュー記事はこちら

 

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