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ええまちづくりのええ話

大阪府内の地域団体の活動事例や、行政職員や生活支援コーディネーターの研修の発表も広く掲載。
団体の活動の参考にしたり、市町村の仕組みづくりに役立つ記事がたくさんです。

第2回ブロック会議 住民主体の互助活動事例紹介②東京都狛江市元気スクールグループ

2018年1月30日

大阪府内の高齢者の介護予防、生活支援、生きがいづくりなどに関わる市町村担当者、生活支援コーディネーターなどが、住民主体の互助の具体的な活動事例を学びながら、情報共有と関係者間のネットワーク強化を図る、大阪ええまちプロジェクト第2回ブロック会議(中央ブロック)が開催されました。

住民主体の互助活動の先行事例として、東京都狛江市から元気スクールグループの代表・山口正忠さんなどをお招きし、介護予防体操の自主グループから通所型サービスBになった活動についてお聞きしました。

 

左から元気スクールグループ 石井さん、羽田野さん、山口代表、地域包括支援センターこまえ正吉苑 大井センター長、狛江市福祉保健部高齢障がい課高齢者支援係長 森さん

高齢者と市が共催する介護予防体操教室『元気スクール』

東京都の多摩地域にある緑豊かな環境の狛江市。この全国で2番目に小さい市で、高齢者が中心となって、介護予防体操教室を運営するのが『元気スクールグループ』です。

代表の山口さんが2010年に市が開いた介護予防体操教室に参加したことをきっかけに、翌年に自主グループとして団体を設立。その活動が評価され2012年から狛江市との共催でグループを運営しています。

現在は3グループに拡大し、野川・狛江が通所型サービスB、和泉が自主グループとして活動。各々20〜30名が参加して週1回1時間30分のプログラムを専任講師による指導の下で実施し、体操による健康維持はもちろん、仲間づくりの場にもなっています。

介護予防教室でたまたま出会ったメンバーで団体を立ち上げた

Q:元気スクールグループの成り立ちについて教えてください。

 

山口:私は80歳の頃に介護予防教室に参加しました。そのとき「80歳になっても体操を週に1、2回すれば運動能力が向上するよ」と先生に言われました。それから3カ月が経って講座修了時に体力測定をしたら数値が改善していたんですね。年齢を重ねても継続することの大切さを痛感しました。そのときに教室に参加していたメンバーが、地域包括支援センターの方に勧められて始めたのをきっかけに12名で『野川元気スクール』を発足したんです。

今でこそ順風満帆に見える団体ですが、当初は活動を続けることが困難でした。週に1回、年52回開催する会場の確保ですら困難だったわけです。講師に依頼するような資金もなく、転倒予防体操教室を撮影したビデオを見ながら、皆で体操をしていました。やがて「ビデオを見ながら体操しても面白くないのでやめようか」という声も出るほどでした。それでも地域包括支援センターの方々や先生たちのおかげで立ち上げられた団体でしたから、すぐに私たちが弱音を吐いて「やめます」という気持ちにはなれなかった。皆でなんとか続けようとなったわけです。

そんな時に狛江市の目に留って、2012年から市との共催で活動できることになりました。その際に『野川元気スクール』に加えて『狛江元気スクール』も開設し、2グループに広がりました。

継続のポイントは、会員の関心を高める創意工夫です。

Tシャツ・反射区プリント入り5本指ソックス・オリジナル手帳・クリアファイル・豆本といったグッズを揃えたりいろいろ工夫をしました。そのなかでも、“留学制度”を制度化したことが大きかったのではないかと思います。

留学制度というのは、介護予防体操教室の講座受講者が、会費免除で元気スクールに通ってもらうことで、その良さを感じてもらい、入会につなげる制度です。費用負担がなく、仲間なども変わらずそのままなので、参加しやすい仕組みです。参加者が出席しやすい環境を整えさえできれば、リーダー、会場、講師、資金は後からついてくる。リーダーも無理矢理決めなくても自然と決まっていくだろう。これが、立ち上げから今日までを振り返って得た実感です。

その他にも、“苗床制度”と言いまして、だいたい、元気スクールの1グループの採算を合わせるには20名の参加者が必要なのですが、新規に立ち上げてその人数を集めるのは大変です。そこで、既存の他のグループから10名程度を移籍して、残りは新規のグループで集めるようにすれば、20名も達成しやすくなっていきます。もう一つが“協業制度”と言いまして、会員が別のグループに行っても無料で振替出席ができたり、グッズや備品などは、複数のグループが共同購入することでコスト削減を図ったり、といったことができています。

 

デイサービスと一般介護予防の隙間に通所型サービスBを

Q:どういう判断のもとに狛江市は『元気スクールグループ』と共催に踏み切ったのでしょうか。

 

森:共催に至るまでに他にも体操をされているサークルは山ほどあって、元気スクールさんとだけ共催をするということは内部でも議論をしたところでした。決め手は何点かあり、根本は介護予防体操教室が市の事業だったことが挙げられます。いわば『元気スクールグループ』の活動は市の事業の延長ということで共催に踏み切ることができました。また、山口さんが市役所に来てくださって、介護予防の重要性に対する非常に強く想いを私たちにも伝えてくれました。

 

Q:狛江市の総合事業通所型サービスBについて教えてください。

 

森: 通所型サービスBの必要性を感じて狛江市が『元気スクールグループ』にお願いしたきっかけは、総合事業の中で現行相当のA型、B型と一般介護予防があって、要介護認定を受けられた方は何かのサービスを受けることになるのですが、軽度な方は本格的なデイサービスには抵抗を感じている方も多くいらっしゃいます。そんな場合に、気軽にやってみようと思えるのは、地域住民やボランティアの方が自主的に取り組んでいる、一般介護予防事業や通所型サービスBなんです。

介護予防の必要性が高い人が介護予防のサービスを受ける上で、一般介護予防よりはしっかりしているけどデイサービスまではいかないという、隙間を満たしてくれるようなサービスの類型ということで、狛江市としては通所型サービスBの担い手として、元気スクールグループさんにお願いしました。

 

菱谷:いろいろな自治体も悩んでいると思うのですが、一般的な介護予防の通いの場が狛江市さんにもある中で、そこの線引きを再度確認させて下さい。元気スクールとの違いは何ですか?

 

森:一般介護予防事業は週に1回が望ましいと国で言われているが、私たちは厳密に縛っていません。内容は体操以外でもいいし、必ずしも週1回とも縛っていないんです。体力測定も厳密に求めるものではなく、まずは通いの場が地域にあるということが望ましいと考えています。

 

Q:地域の住民の方とお繋ぎする立場、コーディネートをする側として、このような団体さんの存在はいかがですか。

大井:地域包括支援センターがあるこまえ正吉苑が、元気スクールの立ち上げから関わっていて、顔の見える関係があるのは心強いですね。地域包括支援センターへ相談に来られる人が、みなさん介護保険サービスに馴染む方ばかりではありません。そうしたときに、デイサービスなどの一律なメニューを提示するのではなく、身近な存在として元気スクールさんを紹介しやすいというのは、ありがたいことだと思っています。

 

質問1

生活支援コーディネーターは事業とか制度をつくる上で実際にどういう動きをしたのか?

 

森:元気スクールさんが立ち上がった当時は生活支援コーディネーターの制度はありませんでした。そのため、介護予防教室をやっていたこまえ正吉苑の先生(看護師のセンター長)に多方面で支援していただきました。お金の管理、出席者管理など、小さい事務も含めて知識が必要になってきたときも、こまえ正吉苑の先生がフォローして下さっています。

 

質問2

一般介護予防から通所型サービスBに移行させて本当によいのか、私の市でも考えることがあるのですが、事業の継続性や事務的なことはどうしていますか。

 

森:一般介護予防事業とデイサービスの中間を担って頂けるサービスということでB型をやりたいと必要性は感じていました。ただ、何がなんでも一般介護予防の活動をB型に持って来ようという気持ちはありませんでした。元気スクールさんの内容がたまたま必要としているB型と合致していたのでお願いをしました。
事務は実積報告を毎月提出してもらっています。地域包括支援センターとケアマネジメントを介した連携や情報共有をしています。

石井:事務的な負担についてお話しますと、通所型サービスBになったことで狛江市から補助金の交付を受けています。それまでは自主事業で助成金を申請して、その結果が出ないと1年の資金の見通しが立たない状態でした。その心配がなくなりましたね。

ただ元気スクールは講師が気功・ヨガ・ピラティスなどの有資格者で充実しており、一度見学に来られた方はすぐに入会を希望されます。そこには講師への謝礼、ボランティアは有償なのか無償なのか。有償ボランティアとして報酬がいくらの設定が良いのかといった課題などもあり、運営の改善やレベルアップは常に必要だと感じています。

本レポートは11月21日開催の第2回ブロック会議の発表内容より作成をしています。

 

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