ええまちづくりのええ話

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生活支援コーディネーターと地域を支える「協議体」の運営例-豊中市の「地域福祉ネットワーク会議」参加レポート

2017年11月17日

生活支援コーディネーターの悩みとして「“協議体”とどう関わればよいのかわからない」といった声が聞かれることがあります。
福祉先進地域といわれる豊中市の「地域福祉ネットワーク会議」にお邪魔して、協議体の運営のヒントを探してきました。

*豊中市は、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」が始まる前から「地域課題の共有」を大切に考え、地域福祉ネットワーク会議を7つの地域に分けた「日常生活圏域」ごとに開催していたことから、これを第2層の協議体として位置付けました。豊中市の社会福祉協議会 福祉推進室長 勝部麗子さんへのインタビュー前編の説明もご覧ください。

100人で会議?
豊中市の日常生活圏域ごとに開催される「地域福祉ネットワーク会議」

2017年8月22日、豊中市の「中東部地域福祉ネットワーク会議」が、市内にある総合福祉施設「ローズコミュニティ・緑地」で開催されました。
他の市町村の「協議体」は高齢者に関わる担当者が集まることが多いのですが、この会場には、地域の高齢者に関わる担当者だけでなく、障がい者や子どもに関する担当者・職員もいます。

また、市の地域福祉課、保健予防課、保健医療課、健康増進課、くらし支援課、救急救命課、市の歯科医師会、国際交流協会、男女共同参画推進センター、社会福祉施設連絡会、人権擁護委員、住宅協会といった関係機関の担当者も参加しています。豊中市は、高齢者のことを高齢者に関わる担当だけで考えるのではなく、地域の高齢者・障がい者・子どもに関わる人たちが「オール豊中」で参加して一緒に考えていきます。この日は傍聴者も含め、100人近くが一堂に会しました。

配布された参加者名簿からも、地域で様々な人が活動していることがわかります。
いったい、この人数でどのように地域課題を協議していくのでしょうか。

全員で「知る」こと、「考える」こと。
それでも解決しないことは「ライフネット総合会 」へ

冒頭に社会福祉協議会から、地域の福祉計画の進捗状況と、この会の狙いが確認されました。

  1. このエリアで、何が起きているかを参加者全員が知ること
  2. どうやって連携・解決していくのかをワークショップ形式でみんなで考えること
  3. みんなで考えて解決しないことは、ライフネット総合会にかけて、解決策を考えます。この場を使うことで、行政に担当がいない場合は担当をつける、または課題を解決するシステム作るなどで解決をはかります

という発信がなされました。

それぞれが地域の当事者として、必ず課題を解決していきましょう!と誘いかける意気込みが伝わってきます。

「子ども」「高齢者」「障がい者」の取組事例や事業の共有。
知ることで、活かせる。

まずは「子ども部会」「高齢部会」「障がい部会」からそれぞれの取り組みの報告がなされます。

【空き家を使ったサロン】

市に増えてきた空き家を使って、アクティブシニアたちが集まってマージャンをしたりなんでも相談会をしたりなどの活動。女性の参加が多く、ここに参加している女性の多くが「何かここでやれないか」という意欲に満ち溢れていることが伝わってきます。

【豊中あぐり】

アクティブシニアの男性たちの農業アクション。70人くらいがいきいきと参加し、収穫した作物は、子ども食堂や、ひきこもりの若者たちの就労支援に協力いただいた店舗に提供したり、収穫したお芋で芋焼酎を作ったり…という「楽しみながらの社会参加」活動。

*「豊中あぐり」で収穫した野菜は、このネットワーク会議の会場でも販売されており、会の終わりには山盛りの野菜が完売。「こないだ食べたけど、おいしかったよ」と口コミも広がり、地域資源が無駄なく循環していることを感じます。

【マンションサミット】

転勤族が多いので、孤立を避けるためのマンション内の助け合い、交流を促進する活動。子ども・障がい者・高齢者それぞれに密接に関わる話題です。

【子どもの居場所つくり】

夏休みで体重を減らしてしまう子どもがいるため、子ども食堂という形で月1~2回活動。
毎日子どもに栄養を採ってもらう、というよりは、本気で関わってくれる大人がいることを伝える時間としたい、という言葉に参加者の多くが頷いていました。

【ぐんぐん元気塾】

高齢者の体力増進、社会参加を目指して体操をする活動。
「貯金」ならぬ「貯筋」通帳をつくり、参加すると「筋」力がついていくという「継続参加」の仕掛けを紹介されました。
最初は体を動かすのがきつそうだった人が、この数カ月でみるみる元気になったそう。

【サービス・事業の共有】

行政をはじめ各関係機関からも、利用できるサービスや事業について配布物の説明がされました。
たとえば市の歯科医師会からは「在宅歯科ケアステーション」のご案内。
もともとはひきこもり状態の方の往診希望がきっかけで在宅歯科ケアを始めたそうですが、地域の高齢者も利用できるなど、地域全体が知っておくべきサービス・事業を把握することができました。

そのほか、地域福祉課からは「安否確認ホットライン」、くらし支援課からは「特殊詐欺防止啓発チラシ」、住宅協会からは「住まいの相談窓口案内チラシ」など、「知っておく」ことでいざというときに役立つ様々な情報が共有されました。

地域課題を考えていくための8つの視点

そして、本日のメイン「地域交流会」。豊中市の社会福祉協議会 福祉推進室長 勝部麗子さんが豊中市の特徴を挙げつつ、「地域課題を考えていくための8つの視点」を説明。

これらの視点をもとに、「もし豊中が100人の村だったら」と題し「村民」になりきってワールドカフェ形式で意見交換するワークショップが始まりました。

「村人」になりきることで遠慮なく意見が言える!?

はじめは各校区の「子ども」「高齢者」「障がい者」それぞれに関わる担当が一つのテーブルについています。そこに行政担当者や各機関の人が加わり6~7人ほどでグループになり、「●●校区の子ども村」「高齢者村」「障がい者村」になります。
それぞれの村では、まず挨拶と簡単な自己紹介のうえ、村長さんが決められて進行します。村長と村人で、その地域で起こっている村人の課題をピンクの付せんに書いて出していきます。

たとえばとある校区の高齢者村では、「一人暮らしが増えていると思います。自分が担当する地域でも、全部は把握できていません」

さらに、「二人暮らしであっても、息子と二人暮らしの高齢者のお宅は掃除が行き届いていない場合がある」という課題も挙がってきました。

ある校区の障がい者村では「坂が多いので、足が悪い人などは買い物が大変」「転勤族が多いので、顔見知りが少なく必要な情報が入ってきづらい」といった課題が共有されていきます。

村民になりきることで、現実世界の立場や老若男女かかわらず、それぞれの課題を出しやすい雰囲気になるようです。和やかな雰囲気でどんどん課題が出されていきます。


自己紹介で普段の仕事の内容も話すので、お互いの普段の業務を知ることもできます。

課題がたくさん出てきたところで、次のお題は「出てきた課題のカテゴリ分け」です。
似た課題をそれぞれまとめて、名前を付けていきます。

こちらの高齢村で出てきた課題は、「孤立」「買い物」「認知症」「その他」にカテゴライズされてきたようです。

さらに次のそれぞれのカテゴリについて、「こうなればいいのにな」という理想を水色の付せんに書いてみましょう、というお題が出ました。
「夢のようなことでもいいんです。貧困が問題なんやったら行政や国に期待することでもいいし。現実的なことを言ったとしても、『それを書いた人がやりなさい』とは言いませんので、理想を自由に書いてください!」と勝部さんが促すと、会場からほっとしたような笑いが起きました。

するとある高齢村では「高齢のみの世帯」に対し「二世帯住宅に助成金を出してはどうか」、認知症の問題については「認知症についての理解を深める機会を増やす」などの解決策が出てきました。

ある子ども村では「近所づきあい」「挨拶・声掛け」「地域の活動への誘いかけ」など、誰にでもできる、地道な解決案が出てきています。

村長を捨てて隣の村へ。新しい風が村に入っていく

そして次に何をするのか?というと、なんと「村民大移動」です。
村長と、課題が書かれた付せんたちを残して、村民は同じ校区の隣の村に移っていくのです。
村長は、新しい村民を迎え入れつつ、「村で起きている課題」を新しい仲間に説明していきます。

すると…「高齢村」には「もと障がい者村の村民」、「障がい者村」には「もと子ども村の村民」「子ども村」には「もと高齢者村の村民」が移住してくることになります。
村長さんに村の課題を伝えられた新しい村人たちは、今度は黄色い付せんに、課題に対して自分ができることを書いて貼っていきます。

とある子ども村では、「虐待」問題に対して、親や子どもが高齢者施設に気軽に遊びに来て息抜きしてくださいね、という新しい解決案が紹介されていました。

この村民移動を繰り返すうちに、それぞれが普段知っている・使っている・提供しているサービスや知恵の循環が起こります。

たとえば高齢者の「移動困難」問題については、障がい者村の「コミュニティバスの巡回を利用しては?」という案が出てきたり、「買物困難」問題についても「私の障がい者施設では、月に数回、利用者さんをスーパーにお連れする“買い物ツアー”をやっていますよ。それに便乗するのはどうですか」といった目からウロコの案も出てきたりしていました。

そして最後の村民大移動で、最初の村長さんの村に戻ります。

そこで村長さんは、いままでに移住してきた村人からもらったアイデアを、もとの村人たちに共有します。もとの村人たちは、これまで自分の業務のジャンルでは気づかなかったアイデアが出てきていること、ジャンルを超えた連携の重要性を実感します。

また、行政や各機関の担当者も村民となって一緒にワークショップに参加すすることで、行政担当者は地域の課題とニーズを肌で感じることができ、地域のサービスの担い手たちは行政の担当者との距離を縮めることもできます。
豊中市の「地域福祉ネットワーク会議」が終わるころにはみんながさらに結束力を固めて、笑顔で帰られる方が多いのが印象的でした。

***

皆さんのまちの協議体は共に地域を支えていく「チーム」意識を醸成するためにどのような工夫をされていますか?大阪ええまちプロジェクトが取材に伺いますので、ぜひ情報をお寄せください。

豊中市の取り組み関連リンク

社会福祉協議会のCSWが「生活支援コーディネーター」を兼任している背景(豊中市社会福祉協議会 勝部麗子さんのインタビュー:前編)

市民登録ボランティアを0人から8,000人に増やした豊中市の「地域の耕し方」とは?(豊中市社会福祉協議会 勝部麗子さんのインタビュー:後編)

 

 

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