ええまちづくりのええ話

インタビュー
2040年問題を見据えて覚悟が必要 ”地域包括ケアシステムの最新動向” (服部真治さんの講演)

2018年10月30日、府内の市町村担当者等を対象としたセミナー「先行事例に学ぶ! 総合事業サービスB 型の事業化と運用について」を開催しました。

本編では、医療経済研究機構研究員の服部真治さんによる「地域包括ケアシステムに関する最近の動向について」をテーマにした講演をお伝えします。

服部 真治さん

医療経済研究機構研究部主任研究員兼研究総務部次長

鳥取大学地域学部特任教員

さわやか福祉財団 研究アドバイザー

東京都八王子市にて健康福祉部介護サービス課の後、厚生労働省老健局総務課の後、現職。

研究分野は介護保険制度、地域包括ケアシステム

 

私は、介護保険の制度改正(平成27年度)から創設された介護予防・日常生活支援総合事業の策定に関して厚生労働省で担当した後も、今でもこのテーマに関わり続けています。

B型(※1)について「どうすればいいのか?」という問い合わせのメールが毎日何通も届きます。それはそれでありがたいことでして、先進事例として防府市や八王子市の取り組みをご紹介しています。

 

ところが、「うちではできませんよ」「ゆるゆるすぎる」と否定的な反応をされるところが多いです。

これは、厳しい言葉になりますが「覚悟が足りない」ということなんです。

先が見えてない、地域が見えてないということで、そこをお伝えしていくしかないのかなと思っています。

(※1 B型とは、介護保険(総合事業)の中で、住民主体によって提供される介護予防・生活支援サービス事業)

 

また、最近の動向としてトピックに上がっているのは2025年ではなく2040年問題こそ見据えていく必要があるということです。

地域包括ケア研究会座長の田中滋先生からは、ポスト地域包括ケアシステムという言葉すら出始めました。

地域包括ケアシステムが機能するのは2025年までで、そのあとはどうなるのかという問題提起であり、今から2040年に起きることを見据えていかないといけないという指摘です。

 

2020年、大阪府では1万人以上、介護人材が不足する

高齢者が置かれている状況において、大阪府は日本の中でも非常に厳しい、というのは多くの皆さんが感じておられるところでしょう。

2025年以降、後期高齢者の数は横ばいに転じますが、同時に生産年齢(15-64歳)人口が減少していきます。つまり、人気のない職種になっている介護人材の不足がますます深刻化するということです。わずか2年後の2020年に大阪府では1万人以上の介護人材が不足します。

 

 

最近の介護福祉士の養成施設の定員充足状況も右肩下がりで、2016年には定員17,730人のところに7,835人しか集まっていません。

要介護認定を受けたのに大阪ではサービスが使えないということがあちこちで起きるという予告だと思います。

介護認定を受けてから日常生活動作が改善して自立する人は1%以下

政府としては、消費税10%に引き上げによる月額8万円の介護人材の報酬アップ、介護ロボット導入、海外からの人材受け入れを含め、さまざまなことをやっていくと言っています。

 

しかし、それだけでやっていけるのでしょうか。そういった危機感を含めて「介護の世界にパラダイムシフトを」と安倍総理が言いました。日本のリーダーが介護にパラダイムシフトを起こす、つまり介護の常識を変えると言っているわけです。

 

何を変えるかというと、今までは目の前の高齢者ができないことをお世話するのが中心でしたが、介護がいらない状態までの回復を目指すということです。

「自立支援に軸足を置く」と安倍総理は言われていますが、おかしいと思いませんか。

 

自立支援に軸足を置くというのは介護保険制度の根幹で、介護保険法の第一条(※2)に書いてあることです。

安倍総理のこういう発言があるということは、今の自立支援はその第一条を満たすことができていないということではないでしょうか。

(※2 介護保険法第一条 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。)

 

2040年へ向けて、あらゆることをやっていかなければいけません。地域包括ケア研究会報告書では、これまでの本人がどう介護予防をするかという1次予防だけではなく、環境にも働きかけるという0次予防にも言及しました。

 

それだけではなくハイリスク者の早期発見・早期介入についてもやっていかなければならない。もう「ここだけをやればよい」というものではないということです。

一般介護予防事業のアンケートをとると「通いの場を増やす」というのは非常に人気があります。

それ以外は、まず「通いの場を増やす」ことをやってから、という話をよく聞きますが、そんなことを言っている場合ではありません。

 

今健康な方をどうするかということはもちろん大事なことです。

最近の高齢者は若くなっている。高齢者は65歳以上じゃなくて75歳以上にすればいいのではないかという議論もありますが、それに対して「年金を払いたくないからだろう」という声も出ます。しかし、体の状態が若返ってきている傾向をどう考えるか、とは別に、認定を受けている人をどうするか、という問題はあります。

 

平成24年度厚生労働省老人保険健康増進等事業の報告書には、「介護がいらない状態への回復ができているのか」という調査をしている。それによると悲しい現実ですが、要支援認定ですら支援が終了するのはごくわずかです。

 

しかも「なぜ終了したのか」という理由を見ていくと「ADLが改善したため」とか「IADLが改善したため」(※3)という割合はごくわずかで「入院」「施設入所」などが圧倒的に多い。「良くなったから終了」した人は実際には非常に少数です。

(※3 ADLは日常生活動作のことで「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」。IADLは手段的日常生活動作のことで「掃除・料理・選択・買い物などの家事や交通機関の利用、電話対応などのコミュニケーション、スケジュール調整、服薬管理、金銭管理、趣味」などの複雑な動作を指す。)

介護保険のサービスは自立支援と言ってきたけれども、介護がいらない状態にはもっていけていないということです。実態は一度認定を受けたら基本的には使い続けるということです。

本当に支援の終了はできないことなのでしょうか。

 

介護保険サービスを一度利用してしまうと抜けるのは困難? −−−−寝屋川市の事例から

寝屋川市で私が関わっているモデル事業を簡単に紹介します。これはC型(短期集中予防サービス)モデル事業で、いままでの介護保険の世界になかった大きな概念が入っています。それは3ヶ月から6ヶ月間と期間が決まっていることです。訪問リハも通所リハも訪問看護ステーションも終わりは決まっていない。このC型だけは終わりが決まっています。

 

しかも、単価は市町村が決めることができ、自己負担がゼロでもいい。

ここまでやってどれくらい効果が上がるかという事例です。厳密にRCT(無作為化対照試験)で比較しましたが、寝屋川市ではだいたい2割くらいの方が終了できました。

 

これまで短期集中予防サービス以外に介護保険サービスを利用していない方とこれまで介護保険を使っていた方を比較すると「なるほど。そういうことか!」ということが見えてきます。

 

介護保険を使っていなかった方の場合は40%が終了。今まで介護保険を使っていた方は16%で、かなり差がある。今まで介護保険を使っていた人が、生活機能が高まっても介護保険サービスを継続する理由は「楽だから」「安いから」。状態は終了した方と同じであっても「楽だから続けます」ということになっています。

 

これをどう考えるか、そして「終了」された人たちはその後どこへ行くのか。これは本日のテーマであるB型についても、C型のケースと同じことが起こり得ると想定されます。ここを考えないとうまくいかないのではないかと思います。

 

市町村に委ねられる要介護状態の重度化防止と地域共生社会づくり

やれることは何でもやるということが求められていて、自治体をとりまく制度上の状況も非常に厳しいものになっています。

平成30年4月施行の地域包括ケアシステム強化のための介護保険法一部改正のポイントは、一つは要介護状態の重度化防止、もう一つは地域共生です。

 

私はもともと自治体にいた人間ですので、「ここまでやるとは」と思いました。

まさか自治体にランキングをつけてお金を配る時の単価も変えるとは思ってもなかったです。もう限界なのでここまでやるしかないという印象を受けます。

 

「介護保険ができた結果、地域が壊れてしまった」と言われるNPOの方はたくさんいらっしゃいます。

それは、市場に任せて事業者が工夫をして、競い合っても質の良い地域はできない、ということなんですね。

 

市場システムを活用して介護サービスをひろげてきたこと自体は大きなメリットもあったが、デメリットもあった。それをコントロールするには市町村のマネジメントが必要だということを投げかけられているということです。

自立支援、重度化防止方針に関しては、市場システムに任せてほったらかしではなく、地域ケア会議をやっているかとか、さまざまな事業をやっているかどうかを問うているわけです。マネジメントをどうしているかで順位がつき、お金が変わってくるのです。

 

地域共生社会、美しい言葉です。

我がこと丸ごともきれいです。でもきれいすぎて、「我がこと丸ごと、きれいごと」で、結局「何も変わらないんじゃない」という人も多いことは確かです。

 

地域の方々が地域の課題を自分たちで理解し、自分たちでどう対応していくのかが求められるようになっていて、さまざまな改革の骨格が示されています。

地域の方に我がこととして気付いてもらい、自分たちで考え、動いていくというのがメインで、そこに難しさあります。2020年代初頭全面展開と書かれていて、もう数年しかありません。

 

2040年を見据え、「助け合い」を軸に置く

最近、厚生労働省が使っている資料を見ると、多様な就労・社会参加、健康寿命の延伸、医療・福祉サービス改革が挙げられ、とにかくあらゆることをやっていきましょう、と示されています。

改革の中では経営の大規模化とか協働化、つまり小さな介護事業所を改めようということも入っています。それを受け止めるのは自治体です。ところが自治体も、人口が減っていく中で税金も減っていくので、はたして耐えられるのでしょうか。

 

総務省の資料によると、自治体もパラダイムシフトが必要といっている。スマート自治体に変わります、破壊的技術を使いこなすなど表現がすごいです。たとえば介護保険の認定といった事務作業は、人間ではなく、AI・ロボティクスに任せるということです。

 

さまざまなものを共通化し、できる限りAIに肩代わりさせ、自治体職員の事務作業をなくしていく。そしてこれからの自治体はプラットフォームビルダーになると述べられている。公・共・私の取り組みを支える「手のひら」に自治体の職員はなっていく。

 

総務省も「行政のフルセット主義からの脱却」という激しいことを言っています。

つまり、すべての自治体に同じような課が配置されているのではなく、◯◯課は◯◯市、別の課は県がまとめて担うというように、柔軟に運営するという考え方です。

 

このスライドは分かりやすいと思って用意しました。公・共・私と分けたもので、地域の住民ニーズに充分に応えられていない状況が示されています。

 

総務省のもう1枚のスライドを見た時、総務省が考えていることがよくわかりました。

 

大都市部に関しては基本的に市場サービスが充実しているので、これでニーズを満たすけれども、満たせないものもたくさんあり、それに関しては共助によるサービスをどう構築するかが課題。

共助による助け合いが広く行われている地方・地域はどうなるか。

「私」の部分、つまり市場サービスは人口が減り、高齢化が進む中でビジネスとしてなりたたないので消えていく。今の共助を継続し、拡充していく。それしかないということです。

 

役所もダメ、地域も厳しい、市場サービスも厳しい、じゃあ答えはというと「共助」「地域」、つまり助け合いを真ん中においくしかないということです。

 

生活支援コーディネーターに求められること

これまで述べてきた状況を踏まえ、今、私たちにできることはなんでしょうか。

介護保険の世界で、助け合いを広げていくための担当者は「生活支援コーディネーター」と呼ばれる方々です。

 

そして、あっという間にこういうことを言うんだなと思いますが、生活支援コーティネーターは高齢者以外の支援、子どもたちも含めた支援もやっていくという指針も示されています。

この生活支援コーディネーターが重要で、その武器がB型ということです。

 

 

テーマ別討議のレポートに続く

ええまちづくりのええ話へ戻る