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ええまちづくりのええ話

大阪府内の地域団体の活動事例や、行政職員や生活支援コーディネーターの研修の発表も広く掲載。
団体の活動の参考にしたり、市町村の仕組みづくりに役立つ記事がたくさんです。

団体・民間企業との地域内の連携から生まれる「地域づくり」とは?/門真市・大東市で活動する団体インタビューより

2024年6月20日

大阪ええまちプロジェクトでは、事業がスタートした2017年から2022年の6年間でプロジェクト型支援による活動基盤強化をサポートしてきた地域団体・NPOを対象に、2023年8月24日から9月11日にかけて活動状況などについてのアンケート調査を行いました(調査対象:83団体、回答数:35団体:回答率=42%)

今回の調査では、地域での新たな担い手として注目が寄せられている「地域内の事業者(民間企業)」との連携についても確認したところ、アンケート結果では多様な回答をいただきました。また、下記の通り今後の連携に向けた意向・関心が高いことが分かりました。

・事業者と連携している(連携したことがある)と回答:約66%
・今後、地域の事業者との連携について「強く希望する」「希望する」と回答:約83%

「事業者との地域内連携」について、実践事例がある2つの団体へインタビューを行い、具体的な連携の事例やポイントをお聞きしました。

 

事業者連携その1:ゆめ伴プロジェクトin門真実行委員会(門真市)の事例

2018年から活動を開始した ゆめ伴プロジェクトin門真実行委員会 では門真市内の認知症の人や家族、介護事業者、市民団体、NPO、行政、社協が一緒になり、認知症になっても輝けるまちを目指しています。認知症の人が主役となり、地域の人と共に楽しみ、活躍することのできる場や機会を地域社会に複合的に創出する活動を行なっています。

2020年、コロナ禍の中でも「折り鶴」でつながる「かどま折り鶴12万羽プロジェクト」を実施し、折り鶴の制作や鶴を用いたアート作品に仕上げることを通じ、認知症の人や要介護高齢者の方々が「誰かの役に立ってる!嬉しい!」と感じる場を作ってきました。

アンケート調査では、イズミヤショッピングセンター門真と連携した事例の情報提供をいただいたので、連携の内容、きっかけや大事なポイントを「ゆめ伴プロジェクトin門真実行委員会」プロデューサーの森安美さんお聞きしました。なお、インタビューの際には、イズミヤショッピングセンター門真 館長(当時) 古角陽一さんも同席くださいました。(インタビュー日:2023119日)

写真中央が古角陽一さん、写真右端が森安美さん

Q:イズミヤさんとどういった連携をされているのでしょうか?

ゆめ伴プロジェクトin門真実行委員会 プロデューサー森安美さん(以下、森さん): 202310月からイズミヤショッピングセンター門真の一角をお借りして、「いのち輝く折り鶴JAPANパビリオン」を開設しました。

このパビリオンでは、認知症になってもいのち輝く未来社会を実践する場として、認知症や高齢者の方が活動の担い手の主役となり、誰もが折り鶴で交流できるスペースや、認知症の方や高齢者の約10万羽の折り鶴をつなげた「いのち輝くツルナリエ」の常設展スペースなどを設けています。

 

Q:イズミヤさんとはどういったきっかけで連携が始まったのですか?

森さん:きっかけはイズミヤさんからの声かけでしたね。

イズミヤショッピングセンター門真 館長 古角陽一さん(以下、古角さん):地域団体との連携を考えたとき門真市で盛り上がっている地域団体として、すぐに思い浮かんだのが、ゆめ伴さんでした。お声がけの際は門真市の職員さんを通じて紹介をしてもらえました。
このショッピングセンターはオープンして50年ほどが経っています。50年間ここに存在してきて、お客さんの日常に寄り添った、普段の居場所にもなっているのがお店の特徴です。オープン当時は駅前で唯一の商業施設でしたが、周辺にさまざまな施設もできている中で、より日常に寄り添った店舗、愛着を持ってもらえる場にできたらと考えて、高齢者や子どもの「居場所づくり」をテーマに施設づくりに取り組んでいて、ゆめ伴さんと一緒に何かできたらと考えました。

森さん:最初に古角さんからも、「気楽にできたら」と言ってもらえたので、自分たちのできる範囲で「それなら、月に1回折り鶴ステーションとして(みんなで折り紙を)折る日を作りましょうか」というところから取組を始められて、住民の方々にも活動が広がり、実績が積み上がってパビリオンを開設するまでになりました。

 

Q:取組の背景にどういった企業としての方針があるのでしょうか?

古角さん:全社的な サスティナビリティ経営方針 があるのですが、「重点テーマ」の1つに、【地域の「絆」を深める】というテーマがあります。ゆめ伴さんとの連携は、これに沿った活動として、本社のウェブサイト内でも紹介されています。

他の取組事例では、3階フロアには公民連携の取組として「子どもLOBBY」という施設があります。子どもが宿題したり、日中に学校に行けない子が過ごしたりできる場所です。また保護者さんへの相談支援も行っています。
館内のこういった取組を通じて、お客様との関係性についても変わってきました。以前はこちらから「いらっしゃいませ」と声をかける形でしたが、今ではお客様の方から「こんにちは」とあいさつをしてくれることもあり、お客様との距離感は縮まりました。アンケートなどでは得られない生の声をダイレクトに聞くことができるようになっています。

 

Q:連携にあたって大事だと感じるポイントがあれば教えてください

古角さん:「地域づくり」という点で目的が一緒だったこと、同じ目線だったことがポイントだと思います。森さんは目標に向けて進むことに責任感を持っておられますし、ゆめ伴さんの仕組みは、共感を広げていろんなところでできる、参加しやすいシステムになっていると思います。この取組は直接的にお金を生むことはありませんが、イズミヤのファンになっていただけることにつながるので、社内でも主旨を理解してもらえていると感じます。

森さん:同じ目的、同じ目線があるので、上下でなくフラットな関係性で取り組めていると感じています。特に心がけていることは、折り鶴ステーションやパビリオンで日々起きる喜びやストーリー、エピソードを古角さんとも共有して、共感を生み出せるように取り組んでいます。

 

事業者連携その2:NPO法人住まいみまもりたい(大東市)の事例

住まいみまもりたい」では、2016年から大東市の補助事業として「生活サポートセンター」を運営しています。養成講座等を受講した生活サポーターが高齢者の暮らしの困りごとを支援するという住民同士の互助を推進しています。一方でサポーターだけでは対応が難しいケースも増えてきたことで、民間事業者によるサービスを含めた地域の資源集として2019年にウェブサイト「知っときゃ安心!大東チャンネル(※)」を立ち上げ、民間事業者が中心となる第一層協議体を運営しています。
(※)ウェブサイトは、大阪ええまちプロジェクトの「プロジェクト型支援」によって制作しました。

アンケート調査の回答から、ウェブサイトによる民間事業者の紹介だけでなく、その事業者間でも連携が進んでいるとお聞きし、具体的にどういった連携が行われているか「住まいみまもりたい」理事長の吉村悦子さんに話を伺いました。(インタビュー日:20231129日)

写真右端が吉村悦子さん

 

Q:改めて大東市の第一層協議体の体制を教えてください

住まいみまもりたい 理事長 吉村悦子さん(以下、吉村さん):第一層協議体には、現在100社以上の事業者さんが掲載されています。ウェブサイトを立ち上げた2019年当時は40~50社だったので倍以上に増えています。

登録している事業者さんの3~5団体程度がNPO法人などの非営利組織ですが、それ以外は多くは営利企業です。でも、ここで「お金儲けをしよう」と考えている事業者さんはいません。大前提として、協議体で何かを一緒にしようとした時にはお金のやり取りを発生させないことが約束になっています。例えば、事業者さんが所有する施設などの空いている時間を使って何かやることについても利用料はかかりませんし、逆にウェブサイトに事業者側の情報掲載することも無料になっています。

 

Q:現在の体制になった背景を教えてください。

吉村さん:もともと事業者参加型の協議体にしていこう、という大東市の方針がありました。住民のニーズについては、(民生委員児童委員、校区福祉委員、自治会長・区長等の地域住民と様々な相談支援機関が参加し、個人単位から地域全体の課題まで幅広く協議し、情報共有を行う会議)を第二層協議体に位置付けており、そこで検討した話を第一層協議体で話し合うことにしています。

第一層協議体の会議の様子

例えば、小地域ケア会議からあがってきた住民の見守りや買い物のニーズを捉えて、配食の事業者さんがそういったニーズに応える付加価値をつけてサービス提供をしていたりします。

 

Q:協議体に参加する事業者にはどんなメリットがあるのでしょうか?

吉村さん:ケアマネさんがウェブサイト「知っときゃ安心!大東チャンネル」を見ているので、そこから仕事につながることがあるようです。このウェブサイトはケアマネさんがケアプラン作成にも活かせるように作っていました。
また、現在は大東市の広報誌に高齢者に向けた情報の特集などで、協議体に参加している事業者さんの取組を紹介することもあるので、その点はメリットとして感じてもらえているかもしれません。

 

Q:事業者さん同士で具体的にどのような形で連携が行われているのでしょうか?

吉村さん:2回の頻度で開催する協議体の会議では、登録事業者さんが集まってきます。前回の参加者は約40社でした。
そこでは小地域ケア会議で出てきたニーズについて共有して、参加者のみなさんができることや、やりたいことを話し合っています。事業者同士の情報交換にもなっているので、会議中にマッチングすることもありました。

第一層協議体でのグループワークの様子

事業者同士の連携については2022年ごろから考え始めました。きっかけは2020年に「生活サポートセンター」でスマホ講座をやり始めたときに、講師になってくれる人や講座を開催できる場所を事業者さんから協力を得られないか、というのがきっかけでした。
認知症カフェや、体操教室など、飲食店の空いている場所や企業の空きスペースを活用させていただいたこともあります。

 

Q:取組の中で意識されていることがあれば教えてください

吉村さん:やるからには、関わってくれる事業者さんがメリットを感じてもらえる形にしたいと思っています。事業者さんにとっても、これからますます高齢の方が増えていく中で、高齢化に伴う課題の解決をビジネスにしていくことはすごく大事だと思いますし、良いサービスを作って欲しいなと思うので、それが叶うようにできることを一緒に考えています。

 

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今回インタビューした2団体からお聞きできた連携事例はそれぞれ違う形でした。
ゆめ伴プロジェクトin門真実行委員会さんでは、イズミヤショッピングセンター門真さんのスペースを活用した常設展やイベント開催といった直接的な連携の事例、一方で、住まいみまもりたいさんからは、団体がコーディネーターとなり、地域の事業者の連携を促進させるという事例でした。

地域包括ケアシステムの構築にあたっては、NPO、ボランティア、民間企業等の多様な事業主体による重層的な支援体制を構築することが求められます。
いずれの事例からも、読者のみなさんが地域内で連携をしていく際の考え方やヒントつながればと思います

また、「地域内での連携に向けて実際に話を聞いてみたい」「連携に向けて自団体で何ができるか考えたい」などをお考えの場合は、ぜひ大阪ええまちプロジェクト事務局までお声がけください。

 

大阪ええまちプロジェクトでは、地域団体・NPO向けに下記の支援プログラムを実施しています。

・仕事のスキル・経験を活かしたボランティア「プロボノ」が団体を支援する「プロジェクト型支援」
2024年度の申込締切は724日中です)

・大阪府内で先進的に地域活動に取り組む先輩団体への相談や現地訪問等をおつなぎする「随時個別相談型支援」
(今回紹介した、「ゆめ伴プロジェクトin門真実行委員会」「住まいみまもりたい」は先輩団体です)

 

上記の支援プログラムについてご案内する説明会を2024627日〜710日の間に4回開催予定です。

説明会の詳細やお申し込み方法については下記URLからご確認ください。

https://eemachi.pref.osaka.lg.jp/2024/05/12235/

 

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