ワークシート活用で変わる総合事業~現場で使える評価・実践ツール~2025年度 市町村向け地域づくり研修会から【後編】
2025年11月7日
「高齢者の多様なニーズに応える地域づくりを、どう評価し、どう進めればよいのか?」全国の市町村担当者が抱えるこの課題に、2024年度に改正された総合事業のガイドラインにおいて、新たな評価の指標が示されました。
大阪ええまちプロジェクト「市町村向け地域づくり研修会」(2025年7月15日開催)では、講義とグループワークを通して、新たな評価の考え方と指標について、さらにデータ活用とワークシートを取り入れた、いま自治体に必要な取り組みは何かを検討するポイントについて理解を深めました。
この記事では、講師に岩名礼介氏をお招きした講義の重要なポイントについてお伝えします。
(こちらは後編になります。前編はこちら)

講師:岩名 礼介(いわな れいすけ)氏
三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング 政策研究事業本部 社会政策部 主席研究員
https://www.murc.jp/service/professionals/37531/
総合事業の評価の枠組みは、国がはっきりと示しています。あとは、私たちがそれをどう使いこなし、自分たちのまちの現在地を正確に把握できるかにかかっています。
データとツールを使って、今すぐ始められる総合事業改革の具体的なステップを見ていきましょう。
1. データで見る人口推移と地域の将来像
まず、皆さんのまちの人口がどう変化し、高齢化がどこまで進んでいくのか、データで確認してみましょう。
これから使うのは、「総合事業の充実に向けたワークシート」というもので、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが厚生労働省の補助金事業で作成した無料のExcelツールです。先にツールの概要を説明します。
ワークシートの目的と構成
このワークシートは、多くの自治体が総合事業の充実に向けた取り組みを進められずにいる問題を解決する、支援ツールとして開発されました。簡単に言うと「今の総合事業のわがまちの体制は大丈夫か」を見ることができます。
保険者が地域包括ケアの取組を行うにあたって「人材」と「お金」の問題は、もう制約条件として避けられません。
地域支援事業実施要綱で示された評価の視点や指標に準拠しながら、自治体が自らの立ち位置を客観的に把握することができるように設計されています。
(ワークシートの具体的な活用方法は、「5. ワークシート活用ガイド」を参照してください)

このワークシートは6つの大項目と、それぞれに紐づく中項目で構成されています。
多くの項目は市町村名を選択するだけで多くのデータが自動表示され、すぐに客観的な現状把握ができるようになっています。

このワークシートの基本的な使い方ですが、左上のところに都道府県と市町村を選ぶ欄があります。
今日は高槻市を例にしていますが、別にどこでも選べます。大阪だけでなく、他の地域でも、選ぶだけで2050年までの人口の推計が全部自動的にグラフ化されて表示されるようになっています。

2020年を起点とした2050年までの人口推計が自動的に表示され、「この年がピークですよ」というのをオレンジに着色して示しています。。
3つの人口推移が示す未来
右側のグラフでは、3つの重要な指標をグラフ化しています。グラフの3本の線、グレーは生産年齢人口、つまり担い手です。多くの地域で右肩下がりになっていると思われます。
オレンジ色の線は75歳以上人口の推移を、2020年を100とした場合にどうなるかを表しています。総合事業の「上限額」がどう変化するかの予測になります。高槻市の場合、ほぼ横ばいで推移します。
紫色の線は85歳以上人口について2020年を100とした場合の推移です。85歳以上の人口は実人数ではそんな多くないのですが、認定率が高いです。率が高いということは、そのうちの6割は要支援・要介護者になるということですから、この紫の線の意味するところは「介護需要の動向」と、ほぼ連動する、ということです。
高槻市では2035年に85歳以上のピークを迎えます。つまり、高槻市では「上限額は横ばいで大きく変わらないのに、需要だけが上がっていく」という未来が予測されるわけです。
ワークシートが教える危険信号
上限額は真っ平らになっています。ここで重要なのは、需要は上がってくるという構造です。だから、今の段階で上限スレスレだったりすると、いずれ上限額突破、ということになります。
グラフから大きなトレンドを掴んでいただくと同時に、皆さんがこれから事業計画を考える時に注意していただきたいことがあります。総合事業の上限額は75歳以上人口で決まりますが、実際のサービス需要は85歳以上人口と連動します。この2つの指標が異なる動きをするため、上限額だけを見て計画を立てると、実需要とのギャップに直面するリスクがあるのです。
このように、ワークシートはどんなリスクが潜んでいるのかを可視化するツールとして設計してあります。
2. 総合事業の3つのアプローチと評価指標

では、具体的に総合事業をどう評価し、改善していけばよいのでしょうか。
国が示す評価の枠組みは、「高齢者の視点」と「保険者の視点」という2つの目線で整理されています。
特に重要な「高齢者の視点」は、さらに3つのアプローチに分かれます。

この3つのアプローチは、「できる限り住み慣れた地域で自分らしく」という理念を具体的な取り組みに落とし込んだものです。
アプローチ1:「選択肢の拡大」~「自分らしく」を選ぶために~
これは、要支援状態になっても、その人にあった支援を選べるように、従前相当以外の選択肢を増やすアプローチです。デイサービスやホームヘルプだけでなく、地域の多様なサービスや活動を選べる状態を目指します。
評価のポイント:目指すべきは「従前相当サービスに依存するモデルからの脱却」です。アウトカム指標は非常にシンプルで、「従前相当サービスが位置づけられたプランの割合が減少しているか」、あるいは「ケアマネジメントB/Cの件数が増えているか」で測ることができます。
現場のヘルパーさんから聞いた話ですが、要支援の方の掃除ニーズ、実は掃除をして欲しいというより、顔を出してもらいたい、ということも結構あります。誰かに来てもらって、コミュニケーションを取る機会を作りたい。
そのニーズって、別に訪問介護のヘルパーでなきゃいけない理由はないですよね。でも現状は、こういうケースもほとんど従前相当サービス、つまり専門職による高コストなサービスで対応している。本来なら、住民ボランティアとか、有償ボランティアでも十分対応できるはずです。
だから「選択肢の拡大」ができているかのアウトカム指標は、「サービスの中に占める従前相当の比率がどれぐらい減ってきているか」ということになります。従前相当サービス以外の多様なサービスが準備され必要な人が利用できているか、それが重要です。言うまでもありませんが、要支援者の方の中には、専門職がケアしたほうがよい方もいらっしゃいます。そういう方が従前相当サービスを使えるようにするためにも、人材面での制約が大きくなっていくる中で、多様な選択肢を用意することが大切になります。
アプローチ2:【ポピュレーション・アプローチ】~「できる限り」元気でい続けるために~
これは、元気な高齢者ができるだけ長く元気でい続けられるように、社会とのつながりを支援するアプローチです。多くの人は元気なので、一人ひとりに手厚く関わるのではなく、地域全体に働きかけます。
原則は「広く、細く、長く」。
- 広く:高齢者全体に働きかけます。
- 細く:お金や人をかけすぎず、行政が手を引いても住民が主体的に回る仕組みにします。体操教室も素晴らしい成果ですが、参加者は高齢者全体の数%です。残りの90%の人はそこには関わっていません。働く、趣味のサークルなど、どれだけの高齢者が何らかの社会参加をしているか、多様な参加のかたちを後押しすることが重要です。
- 長く:社会参加はやめた瞬間に効果が低下して要介護リスクが高まります。長く続けられる環境が重要です。
評価のポイント:アウトカムは「社会参加率」です。これは日常生活圏域ニーズ調査の「問5」(詳細は後述)のデータを分析すれば簡単に算出できます。特に、社会参加が減少しがちな75歳以上の参加率に注目することが重要です。
アプローチ3:【ハイリスク・アプローチ】~「住み慣れた地域」で暮らし続けるために~
これは、病気や転倒などをきっかけに元気がなくなり始めた人を、早期に集中的に支援し、元の生活に戻すアプローチです。認知症初期集中支援や入退院支援と同じく、「初期集中支援」が鍵となります。
原則は「太く、短く」。
- 太く:従前相当サービス以上のコストをかけてでも、専門職が深く関わります(必要な報酬上の保障を行うことが大切です)。
- 短く:3ヶ月などの短期間で成果を出します。だらだらと続けません。「自転車のひと漕ぎ目は重い」のと同じで、最初の「グッ」と踏み込む力を支援するのがこのアプローチです。
評価のポイント:これは単に筋トレの場などではありません。かつての二次予防事業が失敗したのは、マシンを使った筋トレが目的化し、プログラム終了後、家にマシンがない利用者が運動を継続できず、せっかく改善した機能が元に戻ってしまったからです。
重要なのは、本人が「自分でやりたい」と思えるように動機づけを主体としたカウンセリングプログラムとすること。したがって、評価すべきはプログラム終了直後の身体機能ではなく、「半年後、1年後の生活状態やサービス利用状況」です。
これら3つのアプローチは目的も手法も全く異なります。それぞれのアプローチの原則を理解し、適切な評価指標を置くことで、初めて効果的な事業運営が可能になります。
3. 上限額管理の実務ポイント
総合事業は自由度が高い分、財政的なマネジメントが極めて重要です。特に上限額の管理は、自治体の財政に直結する重要な業務です。
しかし、私の経験上、国が配布する計算シートで入力ミスをしている自治体が少なくありません。
一番多い間違いが、「原則の上限額」を計算する際に差し引く「介護予防支援」の額です。ここに、総合事業以外の「介護予防サービス費」や「地域密着型介護予防サービス費」まで含めて入力してしまうと、上限額が不当に低く計算されてしまいます。逆に、移行前年度の額を同様に間違えると、上限額は不当に高くなります。
皆さんの地域は大丈夫でしょうか? 研修でお配りしているワークシートには「上限額チェックリスト」的な機能も含まれています。
過去の実績額と上限額の推移をグラフで可視化することで、「上限額が急に変動している」「実績額が上限を大幅に下回っている」といった異常に気づくことができます。
上限額の運用を間違えると、単価の引き下げなど強引な手段を取らざるを得なくなるかもしれません。そうなる前に、今一度、ご自身のまちの財政状況を正確に把握してください。

4. ケアマネジメント改革で変わる現場
今回の改革のもう一つの大きな柱が、ケアマネジメントの見直しです。
これは、パンク寸前の地域包括支援センターを救い、本来の機能を取り戻すための改革です。今回の総合事業ガイドライン改定のキーワードは「紙から人へ」であり、紙と向き合う時間を減らして、人と向き合う時間に当てようという、非常に真っ当な改革です。

これまで、従前相当サービスを利用する場合、ケアプラン作成やサービス担当者会議、月次のモニタリングなどが必須でした(ケアマネジメントA)。しかし、従前相当サービス以外の多様なサービス・活動を利用する場合は、これらのプロセスを省略・簡素化できる「ケアマネジメントB/C」が活用できます。

現場の実態として、利用者さんに何か変化があれば、月次のモニタリングを待たずに事業所から地域包括支援センターへ連絡が来るはずです。つまり、必要なコミュニケーションは既に取れているケースがほとんどでしょう。今回の改革は、こうした実態に合わせて形式的な業務を減らし、専門職が本来の対人支援に集中できるようにするものです。
ここで重要な制度変更があります。
ケアプラン作成件数が減ると、件数ベースで委託費を支払っている場合、地域包括支援センターの収入が減ってしまいます。そこで国は、「ケアプラン作成件数単位では評価しがたい業務」について、包括的に委託費を支払うことを可能としました。自治体には、1件いくらという支払い方から、エリアのケアマネジメント機能全体を評価する形への転換が求められます。
つまり、件数が減ったとしても、これまで評価されてこなかったアウトリーチ等の業務を新たに評価することで、地域包括支援センターの収入が変わらないように設計できるわけです。
地域包括支援センターの職員は、プラン作成やサービス担当者会議といったペーパーワークから解放され、その時間を使って、孤立・孤独状態にある人へのアウトリーチや、住民活動のフォローアップなど、「人と向き合う業務」に注力できるようになります。
これは、ケアマネジメントの軽視では決してありません。むしろ、誰にでも同じプランを作るのではなく、一人ひとりの状態を丁寧に見極めるアセスメントの重要性が格段に増すことを意味しています。
5. ワークシート活用ガイド
ここまでお話ししてきた「データに基づく現状把握」と「適切な評価」を実践できるように開発された「総合事業の充実に向けたワークシート」で、分析を自動化し、皆さんの貴重な時間を節約していただきたいと思います。
ツールの入手方法と事前準備
ワークシートは以下のURLからダウンロードできます。
https://www.murc.jp/houkatsu_02/
ダウンロード後、最初に確認していただきたいのは、このファイルにはマクロが組み込まれているという点です。多くの自治体ではセキュリティ上、マクロ付きファイルの実行が制限されているため、システム担当部署と事前に調整し、使用許可を得ておく必要があります。「総合事業の評価のために国の事業で作成されたツール」であることを説明すれば、通常は理解を得られるはずです。
基本機能①:人口分析と将来予測の見える化
ワークシートを開いたら、まず左上のプルダウンメニューから都道府県を選び、次に市町村名を選択してください。これだけの操作で、2050年までの人口推計が自動的にグラフ化されます。
グレーの線(生産年齢人口)、オレンジの線(75歳以上人口)、紫の線(85歳以上人口)、この3本の線を見比べることで、「上限額は変わらないのに、需要は1.5倍になる」といった、自分のまちが直面する未来の姿が一目で分かります。今の段階で上限額ギリギリの運営をしている自治体は、早急に対策を講じる必要があります。
基本機能②:上限額と事業費の時系列分析
次に重要なのが、過去から現在、そして未来への財政推移を可視化する機能です。
毎年、都道府県を通じて国に提出している「地域支援事業交付金事業実績報告書」のExcelファイルを、そのままワークシートに読み込ませるだけで、自動的にグラフが生成されます。
ここで確認すべきポイントがいくつかあります。
まず、上限額が不自然に上下していないか。75歳以上人口の変動に連動するはずの上限額が、急激に変動している場合は、どこかに計算ミスがある可能性があります。
次に、実績額が年々減少していないか。これは見過ごされがちですが、極めて重要です。需要が確実に増えているはずなのに実績額が下がっているということは、サービス供給力が限界に達している証拠です。事業所が「もう要支援の方は受けられません」と断り始めている、あるいは撤退し始めている可能性があります。
さらに、ワークシートは令和12年度(2030年度)までの推計も表示します。
一つは「令和元年と令和5年の実績値を結んだ線」をそのまま延長した推計、もう一つは「令和5年度実績に85歳以上人口の伸び率を乗じた」推計です。これらの推計線が上限額に接近している場合は、今から手を打つ必要があります。
基本機能③:ニーズ調査データの自動分析
このワークシートでは、日常生活圏域ニーズ調査のデータ分析ができます。特に「問5(地域での活動)」の分析は、この1問だけで性別、年齢別、地区別、活動別の分析を行うことで30-40ページの報告書を書くこともできるほど、情報の宝庫です。
データの準備と入力
ニーズ調査の生データ(RAWデータ、CSV形式)を、指定されたシートにコピー&ペーストするだけで、あとは自動で処理されます。
社会参加率の算出方法
ワークシートは独自のロジックで「社会参加率」を算出します。問5には「ボランティア」「スポーツ」「趣味」「老人クラブ」「町内会・自治会」「学習・教養サークル」「介護予防のための通いの場」「収入のある仕事」など8つの活動項目がありますが、どの項目でも構わないので「週1回以上」参加している人、または複数の項目で「月1〜3回」参加している人(合計すれば週1回相当)を「社会参加している」と定義します。
なぜこの定義が重要なのか。それは「どこに参加するか」は市民の自由だからです。行政が「体操教室に来なさい」「老人クラブに入りなさい」と指定する必要はありません。大切なのは、何らかの形で社会とつながっているかどうかです。

年齢別・性別分析で見える真実
自動生成されるグラフで、まず驚くのは男女差です。「女性の方が高い社会参加率」と思われがちですが、実はほぼ同じ水準の自治体が多いですね。なぜか? 男性は前期高齢者の「収入のある仕事」が高く、高齢者全体の参加率を引き上げいるからです。
しかし、年齢別に見ると事実が浮かび上がります。男性は75歳を境に参加率が急落します。仕事を辞めた後、他の活動にシフトできないのです。一方、女性は早い段階から多様な活動に参加しているため、なだらかに推移します。ただし、80歳を超えると「もういい年だから」といった残念な理由で辞める方も少なくありません。
地区別分析で見える地域の動き
日常生活圏域ごとに分析すると、さらに興味深い発見があります。ある地域で支援した際、特定の地区だけ男性の「収入のある仕事」参加率が急上昇した年がありました。調べてみると、JAの農産物直売所ができた年でした。男性たちが野菜を作って売り始めたのです。
このように、地区レベルまで落とし込むと、一つの施設や取り組みで数字が動くのが見えます。市全体では見えない変化が、圏域別分析では鮮明に浮かび上がるのです。
実践的な活用方法
ステップ1:現状把握
まず、ワークシートに自分の市町村を入力し、基本的なグラフを出力します。人口推計、上限額推移、実績額推移を印刷し、関係者で共有します。「うちのまちは大丈夫か?」という危機感を共有することから始めましょう。
ステップ2:詳細分析
実績報告書のデータを読み込ませ、過去5年間の推移を分析します。特に以下の点をチェックしてください。
- 上限額計算に誤りはないか(急激な変動がないか)
- 実績額が減少傾向にないか(供給力の問題はないか)
- 従前相当サービスの比率はどう推移しているか
- 一般介護予防事業費が異常に高くないか(全国平均よりも大きい場合は、ポピュレーションアプローチへの財政投入として適切か、効果の観点から評価したほうがいいでしょう)
ステップ3:ニーズ調査分析
最新のニーズ調査データを入力し、社会参加率を算出します。できれば過去3回分のデータを入力し、時系列で比較してください。コロナ禍の影響で一度下がった参加率が、どこまで回復しているかが分かります。
さらに、地区別、年齢階級別(65-69歳、70-74歳、75-79歳、80-84歳、85歳以上)、男女別にクロス分析すると、「75-79歳男性の参加率が著しく低い」「A地区だけ80代女性の参加率が高い」といった具体的な課題や成功要因が見えてきます。
ステップ4:アクションプランの策定
データ分析の結果を踏まえ、具体的な対策を検討します。例えば:
- 75歳男性の参加率が低い → 退職後の男性向けプログラムの開発
- 実績額が減少傾向 → 事業所へのヒアリング、従前相当以外のサービス開発
- 特定地区で成功事例 → 他地区への横展開を検討
データ活用の意味
データは変化を捉えるためのもの。なぜその変化が起きたのか、データだけでは分かりません。でも、現場を知っていれば必ず理由が見えてきます。
このワークシートは、あくまでも現状を可視化するツールです。大切なのは、そこから何を読み取り、どう行動するか。グラフが示す未来は、決して確定したものではありません。今から手を打てば、必ず変えることができます。
【質疑応答】
Q:民間企業へのアプローチ方法は?
岩名:前編の内容の延長になりますが、まずはお互いを知るための勉強会から始めるのが良いでしょう。地域の介護の実態やニーズに関するデータを提供し、民間企業が何をできるか、どう連携できるかを話し合う場が必要です。その際、行政と民間企業の間を繋ぐコーディネーターの役割が非常に重要になります。
6. まとめ:明日から始める第一歩
理論と実践、両方から総合事業のフルモデルチェンジについてお話ししてきました。情報量が多く、お腹いっぱいかもしれませんが、明日から始めるべきことはシンプルです。
- まず現状把握から始める
今回ご紹介したワークシートを使い、ご自身のまちの人口動態、財政状況、そして住民の社会参加率を客観的なデータで把握してください。 - 小さな実践から始める
いきなり全てのサービスを変えるのは困難です。まずは一つの地域包括支援センターエリアで、利用者の棚卸しをしてみる。ケアマネジメントBを試行的に導入してみる。小さな成功体験を積み重ねることが、大きな変革につながります。 - 地域資源を再発見する
生活支援コーディネーターと連携し、「介護の土俵」の外に目を向けてください。地域のスーパー、飲食店、スポーツジム、移動販売車。皆さんのまちには、まだ気づかれていないたくさんの資源が眠っているはずです。
今、大きな時代の転換点を迎えています。しかし、総合事業という、これ以上ないほど自由な制度が私たちの手にはあります。
データを軸に、地域の多様な主体と手を取り合い、持続可能な地域共生社会を創ることはできるはずです。
どうもありがとうございました。
参照リンク
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「第9期介護保険事業計画期間における介護予防・日常生活支援総合事業の充実・活性化に向けた方策に関する調査研究事業報告書」
https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2024/04/koukai_240425_16.pdf
