多様な活動に取り組む団体の先進事例を一挙に公開!大交流会「テーマ別トーク」サマリー
2021年4月18日
いくつになっても誰もが住み慣れたその土地に心地よく暮らしつづけられる“ええまちづくり”に向けて、大阪府内で活動する地域団体が集い、活動の背景やポイントを共有する大阪ええまちプロジェクト「大交流会」。
この記事では、2021年2月26日(金)27日(土)にZoomウェビナーにて開催された大交流会の4つのテーマ別トークのレポートをお伝えします。
テーマ① 地域でつながり支え合う、心地よい『居場所』づくりに向けて
ゆるやかで継続的な住民とのつながり、地域の関係者との密な連携が、一生住みたい街づくりを促進(テーマ①)
「地域でつながり支え合う、心地よい『居場所』づくりに向けて」と題したテーマ別トークには、東大阪市で男性高齢者向けのサロンを運営する「おやじかふぇトライ」と、枚方市で活動する「きんじろう会すやま」の皆さんが登壇。
おやじかふぇトライはゆるやかつながりを大切にしたサロンを運営し、閉じこもりがちな男性高齢者の居場所を提供することで介護予防に貢献。サロンではコーヒーとパンを提供し、ダーツ、紙飛行機飛ばしをはじめ、民謡歌手のライブといったイベントも展開。地域のさまざまな活動者との交流、参加者が発表できる場づくりなど今後の抱負を語られました。
きんじろう会すやまは「積小為大−−−小さいことを積み重ねていけば大きなことになる」という二宮金治郎の言葉をモットーに、人生100年時代に高齢者が輝く社会貢献の場を提供。枚方市が独自に開発した「ひらかた体操」の指導や夏祭りなどの行事による街おこし、サロンでのふれあい活動、移動支援・ウォーキング補助といった住民同士のマッチング活動など多彩な取組を紹介されました。
後半は参加者からの質問に各団体が回答する形で進行しました。なかでも参加者の関心の高かった質問とその回答を共有します。
※ トークの内容を絵や図で表現したグラフィックレコーディングはこちらから確認いただけます。
男性の参加を促すためにどのような広報をしている?
おやじかふぇトライは自治会の回覧・ポスター、民生委員をはじめとした地域のいろいろな活動団体の口コミが中心であることに言及。男性は歴史の好きな方が多いので、歴史をテーマとした講座やイベントも考えていきたいということでした。
きんじろうの会すやまは、高齢者がどのようなことを考えているのかを把握するために、毎月課題を変えて探っているとのこと。宣伝は回覧だけでは顔が見えないのでポスティングを行なっているとのことでした。
運営資金をどのように確保している?
2年間受給した助成金で必要な備品・機材を揃え、後は参加費をもとに継続的に運営しているというのがおやじかふぇトライの回答。
きんじろう会すやまでは、各種サービス提供のマッチング先からリターンを獲得。さらに活動拠点を介護事業所からの場所提供のもとに運営しているとのことでした。
行政や生活支援コーディネーター、その他外部の団体との関わりについて
おやじかふぇトライでは地域とのつながりを考え、地元の障がい者の就労施設が作っているパンを購入しサロンを運営していることを紹介。また、社会福祉協議会の協力や、地域包括支援センターに所属する生活支援コーディネーターとも連携しながら活動を進めているということでした。
きんじろうの会すやまは、枚方市の目標である200ヶ所の居場所づくりの100ヶ所目に当たるとのこと。地域包括支援センターとのつながりを密にし、センターへの協力することが良い街づくりにつながることを実感。さらに市内800の公園に種植えから育てた花を公園に贈呈しているという素敵な取り組みが紹介されました。
最初のハードルを乗り越えれば、Zoom活用などICTへのモチベーションは急上昇(テーマ②)
コロナ禍でとくに関心を集めている、地域でのICT活用について、富田林市を拠点に20年以上取り組みを進めてきた「きんきうぇぶ」と、その活動に学びつつ独自の展開を行なっている大阪市都島区社会福祉協議会が、それぞれの活動を紹介。
見守り活動、パソコン教室、健康体操からスタートしたきんきうぇぶは、シニア層を中心とした利用者のニーズを読み取りながら、行政との連携、そしてプロボノによる支援も受けながら幅広い社会貢献活動を実践。コロナ禍の中ではZoomの普及に力を入れつつ、リアルな場も大切にするハイブリッドな活動を報告されました。
都島区社協は、1棟のマンションにおけるシニアを対象としたICT普及活動を紹介。生活コーディネーターが1戸1戸を訪問し、通信環境の確認、機器の使い方などを指導しつつZoomへのハードルを下げていく試みが話されました。
両団体が共通して語ったのは「ZoomなどICT活用は導入期こそ大変だが、それをクリアすると後は意外なほどラクになる」という実感でした。
後半からは参加者からの質問へ回答する回答する形で進行していきました。ポイントをまとめる形で紹介します。
※ トークの内容を絵や図で表現したグラフィックレコーディングはこちらから確認いただけます。
通信費負担、スマホを持っていない問題、利用トラブルをどう乗り越える?
都島区社協では、生活支援コーディネーターが最初に「(一般的な事業者との契約では通信容量のプランによって)これくらいかかります」と費用感を訪問時に説明。Wi-Fiやデバイスがない利用者には、期限を絞った機器の貸し出しで対応しているそうです。Zoomの音声が聞こえないといったよくあるトラブルには、その都度スタッフが出向いて対処してきたとのこと。きんきうぇぶは寄付で入手した貸し出し用スマホを提供する他、近隣のスーパーやマクドナルドといったショップでWi-Fiが使えるところを紹介されているようです。
ICT活用に向けて高齢者を前のめりな気持ちにする要因や工夫とは?
Zoomをやっていることで「すごいね!」と周りから褒められることで意欲が高まるというのが両団体の共通したコメント。息子さんや娘さんに「お母さん、すごい!」とほめられることや「孫とZoomしてん」というような家族とのコミュニケーションに活用できるとモチベーションが高まることも指摘されました。
都島区社協では、3年間続けていた「在宅医療勉強会」がコロナ禍で中止になってしまった時に、オンラインで再開すると「やっと聴ける」「やっと勉強できる」という声も上がっており、ご自身の関心ある活動に参加するためにICT活用に前のめりになっているエピソードも聞けました。
この1年で見えた変化や今後の取り組みについて
リアルな対面とオンラインのハイブリッドが、今後の方向ときんきうぇぶ。都島区社協は外出がままならない高齢者の「地域で活動する人たちの様子を知りたい」というニーズに応える仕組みを考えていきたいと今後の抱負を話されました。
住みなれた街での自分らしい暮らしを支える仕組みづくりとその実践(テーマ③)
地域における共助のカタチとして広く関心が高まっている「生活支援の有償ボランティア」には、それぞれの地域で実践を重ねてきた大東市の「住まいみまもりたい」と寝屋川市の「寝屋川あいの会」が登壇。具体的な実践を分かりやすく、そして熱く語られました。両団体には、子育て中のお母さんたちによるプロボノチーム「ママボノ」が支援を行っており、それが非常に役立っているとのことです。
「住まいみまもりたい」が平成28年に立ちあげた生活サポートセンターは、高齢者が高齢者を支える仕組みとして、ゴミ出し、窓拭き、庭の手入れなどのサービスを30分以内250円で提供。お互いに「ありがとう」という感謝の気持ちを抱き合うことを大切にし、「利用者が自分でできることは取り上げない」ことに留意しつつ、高齢者の自立を支える取組を紹介されました。
「寝屋川あいの会」は有償ボランティア活動のパイオニアとして、2001年から活動を開始、2009年からは寝屋川高齢者サポートセンターを運営。有償でのボランティアというスタイルは当初は珍しいことだったが、理念を大切にしながら地道な活動を続け、行政、社協など他団体との連携を深めることで、20年目の現在では100名を超える活動者を擁し、全国の志を同じくする団体からの相談も寄せられているという現況を報告されました。
参加者からの質問に回答する後半でのやりとりを、質問の多かったトピックを中心に共有します。
※ トークの内容を絵や図で表現したグラフィックレコーディングはこちらから確認いただけます。
支援するボランティアの方々にどうやって集まっていただくのか?
住まいみまもりたいでは毎月サポーター養成講座を行い、受講者に登録を呼びかけました。さらに地域のサークル、フィットネスセンター、企業などにポスターの掲示を依頼するなど、市の広報紙だけに頼らず積極的なプロモーションを実施されています。
寝屋川あいの会では、「思い」を同じくする方々による口コミがボランティア獲得の一貫した柱であると強調されました。
コロナ禍で活動はどのように変化した?
住まいみまもりたいでは、養成講座の定員を半分にし、活動者が交流する茶話会の時間を短縮。緊急事態宣言が出ているときは家の中での生活サポートに対してストップがかかったが、命に関わる買い物支援は家に上がらずに受け渡しすることで継続したとのこと。
寝屋川あいの会は、高齢者施設への訪問は面会謝絶になり支援が不可能に。反面、在宅支援は大きな落ち込みはなく、ほぼ横這いで推移しているとのことでした。
身体的な看護もサービスに含まれる?また、何かトラブルがあったときはどのように対処する?
生活支援は介護保険外のサービスになるので「身体に触れるサービス」はできないと両団体は指摘。また、意図せぬ事物破損や活動者が怪我をしたときには、ボランティア保険で対応できるとのことでした。
ボランティア参加者にモチベーションを維持して活動してもらうためには?
「思い」の共有と日頃のていねいなコミュニケーション、そして地域の福祉関係者らからその活動が認められ、「素晴らしい人たち」と思われている雰囲気を感じることで意欲が高まると寝屋川あいの会。寝屋川市が生活支援ボランティアをエッセンシャルワーカーと認定したこともモチベーションの向上につながっていることも語られました。
住まいみまもりたいからは、利用者からの「あれも、これもしてほしい」という要求過多がボランティアに負担を与えることを懸念。利用者の自立をさまたげないためにも、定期的にスタッフが活動状況を現場で確認し、ボランティアの無理のないサービス提供を促していることが報告されました。
「あそこへ行きたい」という多様なニーズに応える住民ドライバーによる「地域の足」の構築(テーマ④)
「移動支援組織の立ち上げと運営」をテーマとしたセッションには、和泉市の「チョイサポしのだ」と太子町の「SASAE愛太子」が登壇しました。
チョイサポしのだは、バスが使いづらく「買い物や通院に困る」という声が多い地域のニーズに応え、2020年6月に移動支援サービスを開始。事業開始の1年前から準備に取り組み、ドライバーの養成に注力。10分以内の移動で1回100円という料金は燃料費に充当されているとのこと。それでも住民には大変喜ばれているので、ボランティアとして参加するドライバーも満足しているということでした。
地縁団体、住民、地域包括支援センター、民生委員、社会福祉協議会などが集い住民主体の地域づくりに取り組む協議体「SASAE愛太子」では、活動の一環で移動支援に取り組みました。2017年にモデル事業として、女性3人のドライバーで草の根的に移動サービスを実施している団体と協働し細部を検証。国土交通省とも連携し、話し合いを重ねながら、よりシンプルで利用しやすい移動支援にブラッシュアップしていった取組が紹介されました。
視聴者の関心の高さを反映し多くの質問が寄せられ、後半では両団体から丁寧な回答がなされました。
※ トークの内容を絵や図で表現したグラフィックレコーディングはこちらから確認いただけます。
ボランティア参加者をどのように集めている?
チョイサポしのだでは地域の人脈を生かし、主に口コミを活用。地域にはボランティア精神の高い方が多く、民生委員、青少年指導員といった各種団体の中から声をかけたと報告されました。
SASAE愛太子からは、チョイサポしのだのように口コミで一本釣りのような形で登録者を集めている団体が2つ、他には運転協力者講習会を受けた方たちが有償ボランティアグループを立ち上げた団体が1つと報告されました。今後はこの講習会を一つの起点としてドライバー増員につなげていきたいと話されました。
どのような行き先があるのか?高齢者以外にも利用されるケースはある?
チョイサポしのだでは、最も多いのは病院への通院と買い物で、全体の5〜7割を占めているようです。その他のニーズとしては銀行、郵便局、駅に行きたい、さらには美容室に行きたいと希望される方もいるとのこと。また、高齢者だけでなく、障がいのある方や小さい子どもがいて外出するのに不自由に感じている方も対象に入れていると回答されました。
外出支援を始めようとしているボランティア団体へのアドバイスを
チョイサポしのだからは、全国的な課題となっている高齢者の足の確保に機動的に対応していけるのはまさにボランティアだからこそ。いろんな難しいことを言われてめげることがあるかも知れないが、「やりたい」と言い続ければ話を聞いてくれる人が必ず現れるという経験からのアドバイスをいただきました。
SASAE愛太子からは、支援する側、される側、どちらにも介護予防となる要素が含まれているので、関わる人にとって生活に張りが出て、まち全体を元気にする取組であることが強調されました。
テーマ別トーク動画視聴のご案内
「参加したかったが、都合で叶わなかった」・「参加した自分から、仲間にも共有したい」など、動画視聴へのご要望をたくさんいただきましたので、大阪ええまちプロジェクトYoutubeチャンネルにて「限定公開」でご覧いただけるようにいたしました。
詳細は下記ページからご確認ください。