ええまちづくりのええ話

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制作過程でも効果が生まれた、地域交流スペース「夢日記」を紹介するパンフレット制作事例/ 豊中市でのプロボノ事例を聞く【いきてゆくウィーク2021】

2022年2月1日

2021年11月7日から13日まで開催された「いきてゆくウィーク2021」。大阪府豊中市での高齢者の社会参加・介護/福祉をベースに、さまざまな方が参加・学びを深めるイベントでした。

そのコンテンツの一つとして、11月10日には豊中での2団体のプロボノ事例についてのトークライブを開催。ゲストは、それぞれの団体からの代表者・プロボノワーカーのみなさんです。このレポートでは、「淳風とよなか地域貢献委員会」とのパンフレット制作事例のトークのサマリーをお伝えします。

ゲスト:
山本 智志 さん(社会福祉法人淳風会 淳風とよなか施設長)
プロボノワーカー:岡林 典雄さん
聞き手:槙野 吉晃(認定NPO法人サービスグラント)

 

写真左:山本 智志 さん

豊中市二葉町にある「淳風とよなか」は、2000年に開設された特別養護老人ホームです。2018年には地域密着型特別養護老人ホームを開設。訪問介護サービスや地域包括支援センターなど、高齢者福祉の総合的な施設として地域を支えています。その1階にあるのが、当時、多世代交流の場となりつつあった「夢日記」。

プロボノプロジェクトでは、この「夢日記」をもっと地域の方々に知っていただくためのパンフレット制作を行いました。

 

プロボノ支援申し込みの背景とは

淳風とよなかは以前から、夏祭りや餅つき大会など季節に応じたイベントによって、地域コミュニティと交流していました。

しかし、頻度の低い大規模イベントという形ではなく、もっと日常的に交流できないかという課題感から「淳風とよなか地域貢献委員会」発足。料理教室や「ふれあい市」など、さまざまな取り組みを始めるようになります。

そんな中、2018年の地域密着型特別養護老人ホーム開設にあたり、設置義務のある「地域交流スペース」をどんなものにするかが委員会で話し合われました。通常は小さなカフェ・キッチンでも良いとされているものです。しかし、委員会から出たのは「この際、多世代が交流する大きなスペースを作ってみてはどうか」という意見。その結果、淳風とよなかが作ったのは40〜60人ほどが入る大変大きなスペースでした。これが「夢日記」です。

地域の方々に広く使ってもらおうということで、決まった時間に開放。小学生が放課後に宿題をしに来たり、地域の方が終末期についての話ができる会を開いたりと、幅広い世代が集うようになりました。

しかし、委員会が色々な企画を続けていると、どうしても職員のみなさんの負担が大きいことが、だんだんと課題に。

委員会が企画を提供するのではなく、地域の方・地域の団体が自らこのスペースを活用してもらえるようにしたいと悩むようになりました。「夢日記」を知ってもらうべく手作りのチラシで周知をしていた中、プロボノ支援について知り、2019年、パンフレット制作をプロジェクト化することとなりました。

 

プロジェクトの進め方

プロボノチームは、それぞれの動機で参加したプロボノワーカーで構成。普段は会社員などとして、それぞれ異なる分野で仕事をしているメンバーが集まります。まずはチームメンバーでの顔合わせから開始されました。

参加したプロボノワーカーの岡林さんは、トークライブで次のように参加の経緯を話しました。

「以前から継続してプロボノプロジェクトに参加しています。現在も別のプロジェクトに携わっており、それが通算10件目です。

夢日記については、『プロジェクトマネージャー』という立場で参加しました。もともと、日本の大きな課題としての『高齢化』や『地域包括ケアシステム』に関心があった中、淳風とよなかが行われている活動は、まさに地域・介護をどうするかという分野。興味深く取り組むことができました」(岡林さん)

顔合わせののち、淳風とよなか地域貢献委員会とチームとのキックオフミーティングを開催。キックオフにあたり、チームは豊中市南部地域の動向・団体の活動を取り巻く状況を確認するなど、事前の調査にも取り組みました。

写真左から2人目:岡林 典雄さん

 

次に、チームは「夢日記」を見学し、施設長である山本さんへのヒアリングを実施しました。そのときのことを山本さんは次のように振り返ります。

「プロボノの『プロ』はプロフェッショナルという意味ではない、と言うものの、お会いした時には『プロフェッショナルのオールスターが来たなぁ』という印象でした。私たちの地域の活動について、目的をどうやって達成していくか一緒になって考えてくれる。ものすごく真剣に聞いて、共感してくれました。話していても物腰が柔らかく、こんな方々となら一緒にやっていけるなと思いました」(山本さん)

 

山本さんとプロボノチームが「夢日記」で初対面

 

その後はさらに、委員会や有志の職員の方々を含めてミーティングを開催。このミーティングでは、「ビジネスモデルキャンバス」というフレームワークを活用して議論が行われました。岡林さんによると、「『パンフレット制作』だけに着目するのではなく、淳風とよなかの全体像を捉えたうえでパンフレットの位置付けを決めたい」といった意図があったとのこと。

「ビジネスモデルキャンバス」は、普段、事業企画に携わる方でなければ聞き慣れないものかもしれません。抵抗はなかったかという問いに対し、山本さんは、「逆に『おっ!来た来た!』という感じでした」といいます。

「ミーティングに参加した淳風のメンバーは、みんな興味深々でした。こういったマーケティングツール、課題の抽出の仕方があるんだということに興味を持って話を聞いていたと思います。

このフレームワークを、現在も時々使うことがあります。2021年の年末におせちを配る企画をしているのですが、当初の企画は『バラマキ』のような内容になってしまいました。そこでビジネスモデルキャンバスを使い、『誰のために、どんな価値のあるおせちを提供するのか』といった目的を明確にしたんです。それから周りにある課題を確認していったところ、納得のいく企画にすることができました」(山本さん)

 

その後もミーティングを重ねる中で、淳風からプロジェクトに参加する方はなんと20名にのぼりました。

山本さんから淳風の方々にプロジェクトについて情報共有をしたところ、様々な動機で興味を持つ方が手を挙げられたのだそうです。これには岡林さんも「ここまで本気なのか!」と驚いたとのこと。

有志でプロジェクトに関わりたい「淳風とよなか」スタッフの方々とのミーティングの様子

 

参加した淳風のメンバーもヒアリングを行う側となり、子ども会やその他活動団体など、関係各所へのヒアリングを実施。

そのような経過を経て、プロボノチームはパンフレットの制作プランを提案。さらにデザイン面の要素などを含む「クリエイティブ提案」を2020年3月に行われたのですが、新型コロナウイルスの影響で、メールでのやりとりに。その後、最終成果物の提出までをメールで行われました。

 

プロボノによる成果とは

最終的に完成したパンフレットについて、「イメージ通りにでき、思いもこもったものなので、出来上がってすぐに配りたいと思った」という山本さん。

しかし新型コロナウイルスの流行があり、高齢者の施設ということでシビアな対応をする必要が生じ、スペースを貸し出す取り組みができなくなってしまいました。

その後、パンフレットを使用できるようになったのは、トークライブがあった2021年11月の「つい最近」だそうです。ただ、その「つい最近」使い始めた効果が凄まじいとのこと。

パンフレットは、スペースをどのように活用できるかなど説明したい要素が凝縮され、とてもわかりやすい内容。

11月に豊中市で活動されている団体の会合で配布すると問い合わせや見学が一気に増えました。何度も見学に来られた「とよなか国際交流協会」さんとは「多世代を超えた、多文化交流」の企画を進めているところです。
豊中市には多くの外国人が住んでおられます。その方々にも参加いただいて、外国の食事を提供する子ども食堂や音楽会を開催することで、交流を深め、災害時等困った時でも不安がないように繋がりを作っていきたいと考えています。パンフレットの多言語化も考えているところです。

山本さんは「新型コロナウイルスが終息しつつある今まさに、『あのとき、このプロジェクトをやっていて良かった』と感じています」と語られました。

また、地域貢献委員会では、プロジェクトでのヒアリングがきっかけとなって繋がりができた団体と「庄内西ドリームキッズ」という新団体を立ち上げ、子ども食堂など、子どもに関わる取り組みを行われているそうです。

 

現在のパンフレット使用状況について聞き、プロボノワーカーの岡林さんは次のように思いを話しました。

「プロジェクトの最終段階でコロナ禍になってしまいました。その頃はZoomのようなWebミーティングツールをみんなが当たり前に使える状況ではなく、なんとかメールでやりとりした終盤、心残りな気持ちもありました。

『いつか使ってもらえたらいいな』という気持ちでパンフレットを完成させたので、まさに現在使われているのは嬉しいです。完成してから1年半経っても陳腐化していないということでもあり、とても嬉しく思います。

夢日記は本当に良いスペースなので、たくさん撒いてもらって、いろんな方に知っていただきたいです」(岡林さん)

 

パンフレットの制作プロセスにおいて、その後につながるフレームワークの知識を獲得したり新団体立ち上げのきっかけが生まれたりと、波及した効果が印象深い事例でした。まさにこれからパンフレットが活躍し、夢日記の活用が進んでいくことが楽しみです。

 

いきてゆくウィーク2021とは

「いきてゆくウィーク」は、豊中市で約20年にわたって開催されてきた「いきいき長寿フェア」をリニューアルし、2021年度から実施しています。

高齢者の社会参加、介護/福祉をベースにしながら、さまざまな方が参加し、学ぶことができるイベントです。

令和3年度(2021年度)は、新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑みて、オンライン(一部、展示会については現地開催)で実施。

▼市ホームページ

https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kenko/kaigo_hukushi/tyoujyu-fair/ikiteyuku.html

 

令和4年度(2022年度)は、10月30日(日)に「いきてゆくフェス2022」として開催します。

イベントの詳細は、市ホームページで配信されていますので、ご覧ください。

▼市ホームページ

https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kenko/kaigo_hukushi/tyoujyu-fair/ikiteyuku_2022.html

 

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