ええまちづくりのええ話

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第3回ブロック会議 自治会主体で移動支援組織を設立・運営するためのマニュアル作成の事例紹介

2018年4月14日

大阪府内の高齢者の介護予防、生活支援、生きがいづくりなどに関わる市町村担当者、生活支援コーディネーターなどが、住民主体の互助の具体的な活動事例を学びながら、情報共有と関係者間のネットワーク強化を図る第3回ブロック会議が開催されました。

 

富田林市不動ヶ丘という山に囲まれた高台の地域で、移動支援をはじめ、日常生活支援に取り組んでいる「不動ヶ丘高齢者等生活支援プロジェクト ほっとらいふ」代表の梅田さんにお越しいただき、プロジェクト型支援による成果物「自治会(町会)主体の移動支援組織の設立・運用マニュアル」を、どんな思いで、どのように作ってきたのか、また今後、そのマニュアルをどう活用されるのか、話を伺いました。聞き手はプロジェクト型支援に伴走していた大阪ええまちプロジェクトの事務局スタッフです。

 

制度の狭間にいる方も含めて移動を支えたい

大阪ええまちプロジェクト事務局スタッフ(以下、事務局):まずは梅田さんの活動について教えていただけないでしょうか。

 

ほっとらいふ梅田さん(以下、梅田):「ほっとらいふ」は自治会から始まった組織です。移動支援だけでなく、様々な支援を行っています。地域包括ケアで大きく取り上げられている医療、介護、住まいのうち、私たちはこの住まいを地域と捉えているのですが、特に地域に関わる困りごとの支援や移動支援など様々な生活支援をしている団体と考えてくださればと思います。

不動ヶ丘は、人口626人、277世帯、高齢化率は45.7%とかなり高齢化が進んでいます。山に囲まれた地域で、40年前に山を切り開いて造成された坂のある住宅地です。市街地までは距離があるため車で移動ができないと不便です。

介護保険、福祉有償運送、色々な制度はありますが、そういった制度の適用にならない方、例えば、ご主人を亡くした奥様、また免許証を返上して運転できなくなった方などの移動を支えるために、自分たちがしっかり移動支援に取り組まないといけないという思いで自治会から団体が立ち上がりました。

 

事務局:実は、プロジェクト型支援というのは、困っている点について、その解決に向けて進めていくのですが、梅田さんに話を伺った時には、すでに自治会主導で取り組まれていましたし、「際立って困っていたことはない」とのことでした。そのため、支援というより、自治会主導で小さな地域で移動支援を立ち上げて運営されている事例をマニュアル化して移動支援を必要としている他の自治会、町会に役立つものにできれば良いのかなと提案をさせてもらいました。

 

梅田:社協の方や自治会の方から相談を受けることがありますけど、運営がうまくいっていない、また、取組が進んでいないと感じることがありました。今回の話を最初に聞いたときには、自分たちが困っているわけではないのですが、私たちの取組が参考になって、もっと皆さんができることが増えれば、という気持ちがありました。

 

「ほっとらいふの取り組みが参考になれば。」マニュアル作成へのチャレンジ

事務局:今回完成したマニュアルは、「自治会が中心になって移動支援を立ち上げるためのマニュアル(※)」になっており、立ち上げにあたって必要なことを全て書き出した内容になっています。

こちらのマニュアル作成を振り返ってみてどうでしたか?

 

梅田:マニュアルの構成は、移動支援の組織を設立するための検討段階から入りまして、検討のための準備と勉強会の実施、次に設立のためのいろんな準備、設立総会の承認までの準備、支援活動について等、かなり細かく分けて、それぞれのタイミングごとにまとめられています。マニュアル本体は23ページで、参考としている資料集も巻末に付け加えています。資料集だけで40ページくらいあります。これが約1ヶ月で出来上がりました。

今、投影しているパワーポイントは、「マニュアルだけでなく発表できるものもあればいいなぁ」と話していたところ、マニュアル作成のあとに支援チームの方に作ってもらったものです。こちらの資料には、マニュアルの内容が凝縮されています。

これを見てもらって、マニュアルについて説明を聞きたいと思ってくださるなら、ぜひご相談をもらえればと思っています。

 

(※)マニュアルはこちらからダウンロードできます。

 

ママボノチームに伝えることができる情報をすべて伝えた

事務局:ここからマニュアルを作るプロセスにも触れたいと思うのですが、ほっとらいふのプロジェクトに関わったのは、ママボノという、育休期間中に仕事ではないネットワークを作りたい、また、復職に向けて仕事のカンを取り戻したいのでプロボノに関わってみたい、という育休中のママたちのチームでした。生後三ヶ月の子どもを抱えて、子連れミーティングをしたり、子どもが寝ている間に作業したりという形でプロジェクトを進めてきました。こちらはプロジェクトの最終日の写真です。

梅田:最初に、育休中のママが応援してくれるということを聞いて、私の娘も育休中なんですが、そんなことができる余裕なんかないのでは、本当にできるのかな?という疑問がありました。最初の顔合わせのミーティングの時に、すでにたたき台や質問票があり、単なる自己紹介に終わらず、早速、プロジェクトが始まっていきました。自分のイメージとは全く違ってパワフルな女性たちでした。

 

事務局:プロジェクトが始まった時には、メンバー同士、誰がどこまで何ができるかもわからない状態でしたし、梅田さんが取り組まれている移動支援や生活支援の奥行きもわからないところから始まりました。メンバーは遠方の方もいたので、富田林までは足を運ぶことなく、梅田さんに梅田近辺にお越しいただいて、詳しい活動を聞き取りながら、ミーティングを実施していきました。

ママボノのメンバーが初顔合わせの日にチームリーダーが梅田さんに電話をして、情報提供をお願いし、すぐに梅田さんが情報を出してくださいました。

量的なボリュームも多く、マニュアルのページ数もかなりの量になっていますが、梅田さんがすぐに情報提供をしてくださったことは、このプロジェクトの成功要因の一つだと思います。

 

梅田:参考となる書類を全てお渡ししていましたが、それにしても素人の方が、高齢者の自治会の移動支援というのはハードルが高かったと思いますが、わかりやすく噛み砕いてくれて立派なマニュアルに作ってくれたと思います。

 

事務局:何にどれくらいお金がかかったのか、移動支援をどういうシフトで実施していくのか、どういったプロセスで何をしたのか、全て遍く情報をいただくことができました。とても大量の資料でしたが、マニュアル作りがとても得意という方がチームに加わっていたので、地域で使っていただくため、移動支援について立ち上げと運営がわかるものを作ろうという梅田さんの思いを受け止め、目標を明確にし、ミーティングでしっかり確認し合いながら進めることができました。

 

これまで培った経験をフルに生かした

梅田:実際に会って打ち合わせをしたのはキックオフミーティングに加えて4回くらいでした。時間も13時から15時まで、お子さんをお迎えにいかないといけない方もいるので、時間制約もある中で、またチームの方が全員揃う、ということもありませんでしたが、そういった直接会うミーティング以外にも、インターネット、ライン、メッセンジャー、PDFなど、いろんなITツールの力が大きかったと思います。

 

事務局:チームメンバーはずっとラインでやりとりをしていたのですが、途中から梅田さんも一緒に入ってもらいました。ラインのスタンプをご自身で購入されたり、新たなSNSツールが使えるようになり、PDFのツールも使われるようになり、新たにスキルをどんどん身につけていかれていましたよね。

話が逸れるかもしれませんが、梅田さんのもともとのお仕事を教えてもらえないでしょうか?

 

梅田:最初はシステム関係の部門、その後、総務部門、人事部門の仕事をしていました。

 

事務局:もともとビジネススキルをお持ちだったということですね。その経験を活かされたような内容がマニュアルの中にもあり、特に紹介をしておきたいと思う部分があります。

移動支援を実施するにあたって住民アンケートを実施されていますが、ちょっとしたことなんですが、アンケートの質問には工夫されている点があると感じました。

「今、何が必要ですか?困っていますか?」と聞くと困っているという声が返ってくることは少ないですが、これを「5年後は何に困っていると思いますか?」と聞き方を変えると、将来のことを想像することで、回答の数が断然変わってくるということです。

こういった工夫が随所に散りばめられています。時間的な制約もあり、ここではその他の事例には触れることはできないですが、ぜひ梅田さんを皆さんの地域に呼ばれて、参考にされると良いのではないかなと思います。

 

マニュアルを活用した移動支援の始め方のコツ

事務局:出来上がった成果物をどう活用していかれますか?

 

梅田:今回のマニュアルは自身のために作ったというよりは、自治会活動ではこういったことが必要、という意味合いで作りました。ぜひ、持ち帰って話をしていただいて、広げていただきたいと思っています。

要支援者が困っている、障がい者が困っている、そういった方達だけでなく、白内障のため運転できない、骨折したので外に出られない、精神的に弱っている方が外出することができない、そういった必ずしも介護保険や福祉の適用にならない方が地域にはいらっしゃいます。福祉有償運送をするというのは一つの取り組みだと思っていますが、地域で困っている人がいれば、どんな方も対象にして支援するのもいいんじゃないか、という思いを持って移動支援を提供しています。

こういった考え方に共感してくださる方はぜひ声をかけてくださればと思います。

取り組みを始めるポイントとしては、自治会には、自治会長さんがいて、福祉委員会の委員長さんがいて、老人会の会長さんがいて、自主防災の中での要支援者の方への支援もやっていて、そういう関係性を考慮して、その中でどう進めると良いか、考えてくだされば良いものができるんじゃないかと思います。

時期的には任期が終わる3月ではなく、4月になったタイミングで自治会長さんの気持ちが「さぁ、やろう!」というときに話を持ちかけたほうがうまくいくのではないか思います。

私たちの団体も4月がスタートでした。自治会長さん、福祉委員会の委員長さん、老人会の会長さんなどに集まってもらって、今の団体の元になるプロジェクトチームが発足したのが始まりです。

 

質疑応答

Q:移送サービスを地域で行っているのですが、鉄道会社系のバス、タクシーがあるので共存して白タク扱いにならないようにやっていこうとしています。2300世帯の地域内でだけ移送サービスをしていますが、基本はバス停までという送り方をしています。病院までとか目的地まで送れたらいいのになぁ、といつも思っています。不動ヶ丘では既存の移送サービスとどんな風に共存されていますか?

 

梅田:移送支援については、利用者の方を目的地まで連れていかないと意味がないと思っています。市の道路交通課と話をさせてもらって、近隣市町村まで移送する許可をいただきました。近大病院、羽曳野病院にも行っています。全国移動サービスが出している資料を見ても、同一市町村内でなければいけないという取り決めはありません。白タクのように捉えられないよう、市や社協、有識者、交通関係の勉強会を始めて、そこで決めたルールに従って実行することで共存できていると思います。

 

Q:総合事業サービスD、サービスBの認定を受けているのでしょうか?

また、活動を展開する中で生活支援コーディネーターがどう関わり、どういう協力があったのか、教えてください。

 

梅田:ほっとらいふは、総合事業が始まる前にすでにスタートしていたので生活支援コーディネーターの方の関わりは特にありません。富田林市はサービスDもサービスBも始まっていません。

ほっとらいふの活動を検討する時点から社協、市は話を持ちかけていましたが、今は自治会単位でやっていることを生活支援コーディネーターの方にも入っていただいて校区まで持って行けないかなという話は進めようとしています。

 

 

不動ヶ丘高齢者等生活支援プロジェクト ほっとらいふの詳しい活動や取り組みはこちらの記事からもご確認いただけます。

 

大阪ええまちプロジェクトでは、不動ヶ丘高齢者等生活支援プロジェクト ほっとらいふの「お互い様のチカラで、外出をサポート。移動サービスを始めたい地域に役立つ「虎の巻」を。を応援しています。

 

 

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