ええまちづくりのええ話

大阪府内の地域団体の活動事例や、行政職員や生活支援コーディネーターの研修の発表も広く掲載。
団体の活動の参考にしたり、市町村の仕組みづくりに役立つ記事がたくさんです。

地域に出る。信頼が相談を呼び込む力になる。/2025年度 生活支援体制整備事業に係る充実強化研修(東大阪市事例紹介)

2026年4月24日

2026年122日に、「令和7年度 生活支援体制整備事業に係る充実強化研修(全体研修) 」を大阪市内で開催しました。
研修プログラムでは、東大阪市における生活支援体制整備事業の取り組みについて、地域包括支援センター上小阪から橋本由美子さん(第2層生活支援コーディネーター)にお話しいただきました。

本日は私の日々の生活支援コーディネーター(以下、コーディネーター)としての活動についてお話をさせていただきます。
東大阪市には中学校区ごとに22カ所の地域包括が、私は西エリアに位置する上小阪中学校区を担当しています。このあたりは公共交通機関の多い生活利便性の高い所で、圏域内には近畿大学や大阪樟蔭女子大学があり、日中は大学生などの若者も多い印象ですが、高齢者数は6,362人、高齢化率は30.47%で、東大阪市の中でも高い水準となっています。公営住宅が複数建つ地域では、高齢化率は42%を超えています。

1.看護の現場から地域づくりへ

私は看護師とケアマネージャーの資格を持っています。看護師としては、訪問看護ステーションでの勤務が最も長く、たくさんの患者さんと出会う中で「自分の生き方を自分で決める」そういう自立した地域住民を増やしたいと思うようになりました。
令和4年4月、現在の小久場に入職した時に「コーディネーターをお願いしたい」と言われましたが、コーディネーターがどんな仕事をするのか、また担当する地域のことも全くわからなかったので、まずは自分が働く地域にどんな資源があるのか、どんな人がいるのかを知るために、通いの場の調査を行いました。

2.地域調査と「150人の法則」

調べようにもどこに何があるか全くわからない状況でしたので、はじめに公民館や集会所に足を運び、「ここではどんな教室がありますか」とひたすら聞いて回りました。一通り確認して次に調べたのは、自治会や老人クラブ、介護、福祉の事業所が、地域の高齢者向けに取り組んでいる活動です。直接代表者に電話をいれ、「高齢者の皆さんが集まる取り組みはされていますか」と尋ね、実際にその場に出向き確認を行いました。そして最後に地域住民から個別の聞き取りを行いました。
総合相談等でお話しする機会の中で、こちらから「この近くで皆さんが集まっているような場所はありませんか」とか「ご近所さんで行かれている方を知りませんか」と尋ねて、教えていただき、その場所に出向いて確認をしました。このように動いて確認をするときに一番大切にしているのは、まず一人に会うこと。一人が持つコミュニティやネットワークには無限の可能性があると思っています。

一人が同時に深く関われるコミュニティは3から5つ、ゆるく所属できるのが10個程度、そして顔と名前がわかって、ある程度の関係を築けるのは150人程度だと言われています。
これはダンバー数と呼ばれるものですが、1人あたりに150人のつながりがあり、その150人にもまた、それぞれ150人ずつの人間関係を持っているとなると、本当にこの1人と会うことが、いかに大事かということを常に感じています。

3.個別訪問と「マッチング大作戦」

こうした方々と「顔の見える関係」を築くため、自ら地域の色々な団体の活動に入りきって、皆さんの生の声を聞くことを大切にしています。可能な限りあらゆる会合に足を運び、情報収集を徹底してきました。地域を広い視点で捉え、人と資源を繋いでいく。そんなコーディネーター活動を、「マッチング大作戦」と名付け、以下の4つのプロセスで展開しています。

キーパーソンへの個別訪問による開拓

まず、地域のネットワークの核となる「第2層協議体」の委員12名(3小学校区×4団体)を個別に訪問しました。会議の案内状を持参し、ご自宅や事務所へ直接足を運んで「今、活動で悩んでいることはありませんか」と丁寧に聞き取りを行うことで、会議の場では出にくい地域の生の困りごとを収集しました。

②会議を解決の場へ転換

年に23回開催される「高齢者生活支援等会議」を、単なる報告の場ではなく、具体的な解決の場として再定義しました。
人や資源を繋いで生まれた新しい仕組みを報告するだけでなく、「この問題を解決するために知恵を貸してほしい」と具体的に検討を依頼する形へと変えました。

③既存資源の活用と多世代交流への発展

自施設(養護老人ホーム)が主催する子ども食堂や祭りなどの地域貢献事業に積極的に参画しました。この活動を通じて、本来の対象である高齢者だけでなく小学校のPTA会長との繋がりが生まれ、現在は小学校を活用した多世代交流という新たな仕組みづくりへと活動の幅を広げています。

④広い視点で地域を眺める

そしてもう一つは、遊びながら地域を知るということです。
これは完全に個人的な趣味ですが、休みの日を使って市内のイベント(「工場へ行こう」等)に出かけています。大人の社会見学を楽しみながら、その関係者の方々とお話をしたりして、地域のことを教えていただいています。
その中で心がけていることは、広い視点で眺めてみることです。市全体がどんなムードなのかとか、市民の皆さんは何を面白がって、どこに集まっているのかというようなことを意識しながら、真剣に遊んでいます。

4.事例紹介:福祉農園×障害事業所×つどいサービス
〜「制度の隙間」を12ヶ月の調整で埋めた、支え合いの仕組みづくり〜

福祉農園(野菜の提供者)障害事業所(回収・運搬の担い手)つどいサービス(野菜の活用先)の三者がつながり、新たな仕組みができた事例を紹介します。

①2つの潜在的ニーズの発見:食材不足と余り野菜

きっかけは、高齢者が調理を楽しむ「つどいサービス」団体からの相談でした。物価高騰と利用者増により食材費が賄えず主催者が自腹を切っているという事実を知りました。当初は具体策がありませんでしたが、もう一つのきっかけとなった福祉農園の利用者から「たくさんできてしまった野菜を引き取ってほしい。できれば必要とする団体に提供したい。一人だと数が足らないと思うので、他の農園利用者にも呼びかけたいんです」という相談を受けました。

②最初の第一歩:前例のない「仕組み」への挑戦

まず、福祉農園を管理する福祉事務所に「こういうケースの前例はありますか?」と問い合わせました。返答は「全く前例はないけれども、農園の利用者個人が収穫したものを提供していただく分には構いませんよ」という返答でした。
次に農園へ直接出向き、役員の方たちとお話し合いの場を持ちました。普段どのような頻度で農園に来て、どんな作業をされて、どのような組織体制なのかを教えていただき、その上で「どういうふうに周知をすれば皆さんの協力が得られるか」ということを相談しました。

③あえて「待った」をかける:ケアマネジャーを支えるための判断

次につどいサービスの主催者さんと話し合ったのですが、この方は普段ケアマネジャーとして働いている方なんです。
その時に「利用者さんから野菜が取れたと連絡があれば、自分が取りに行きますよ」と言われたのですが、私はそこで「ストップ」と待ったをかけました。とてもじゃないですが、ケアマネとして多忙なお仕事をされているなかで、利用者さんからの連絡を受けてタイムリーに野菜を取りに行くというのは難しいと思ったからです。そこで「なんとかこの間を取り持つ人を包括の方でも探してみます」とお伝えし、持続可能な形を目指して協力者探しを始めました。

④協力者探しと丁寧な合意形成

34ヶ月間、いろんな団体や個人に声をかけ続けた結果、ある障害事業所の代表の方が「僕たちでよければ、無償で構わないので手伝わせてください」と協力を申し出てくださいました。その方は、障害者にとってなかなか社会とつながるチャンスがないので、自分たちにとってもすごくいい有益な活動になると思いますというような思いをお話しくださいました。そこから具体的にどれぐらいの頻度で回収に行けますかとか、どうやって農園の利用者さんから連絡をしてもらいましょうか、というようなことを話し合いました。
私の一連の動きは随時、市の担当者の方に報告しておりました。福祉農園は、市の事業だったため、ポスター掲示のことや福祉事務所への報告体制を確認したりと、行政との調整も随時行いました。最終的に三者で打ち合わせを行いました。
令和67月に課題を把握してから、およそ一年にわたって、話し合いを行い、昨年6月からスタートすることができました。

⑤支援の対象から「畑先生(担い手)」への変容

毎週、障害事業所のスタッフと利用者の方が、福祉農園までお野菜の回収に行っていただいています。もう一つ嬉しいご報告は、最初にお野菜を引き取ってくれないかといってくださった高齢女性の変化です。彼女は障害事業所との縁ができたことで、今では事業所へ出向き「畑先生」としてボランティア活動を担うまでになりました。要支援認定を受けデイサービスを利用していましたが、今では畑先生としてボランティアの担い手として生き生きと活動されています。

5.地域包括支援センターがコーディネーターを担う意義

地域包括支援センターがコーディネーター活動を担う意義について自分なりに振り返ってみました。厚生労働省は、地域住民が主体的に生活支援活動に参加できるようにするための仕組みづくりを支援することが、地域包括がコーディネーターをする意義だと言っています。

①自転車移動がしんどくない範囲という一番の強み

 具体的に私自身としては、中学校区という高齢者人口が3,000人から6,000人程度の「日常生活圏域」であることが一番の強みではないかなと思っています。医療や福祉の資源がどこにあるのか、通いの場がどこにあって、どんな団体が活動しているのかということがタイムリーにわかります。
そこで今起きていることがきちんと把握できる、これこそが一番の強みであり、情報が集まることで資源やネットワークを有効に活用できるのではないかと思っています。
いつも思うんですけれども、「自転車移動がしんどくない範囲」というのが、一番動きやすい範囲ではないかなと思っています

②未知なるものを「新しい価値」に変える

私たちが対象とする人や物は、強みになるか課題になるか、どちらに転じるか全くわからない未知数のものと思っています。
だからこそ、制度の枠を超えた人と人、資源と資源の掛け合わせ次第で、新しい価値を生み出せるのではないかなと信じて、いつも仕事に取り組んでいます。私たちの仕事は、目の前の課題に解決に向いているように思いますけれども、地域の未来を作っているのではないかなと思います。

6.まとめ:生活支援コーディネーターとしてのハブ機能

私たちの役割は「ハブ機能」を果たすということではないかと思います。
自分が中心に立つのではなくて、相手が動きやすくなる場を作ったりとか、あるいはどちらにも,
やりすぎず、冷たくもならず、柔らかい中立な立場で、交通整理を行いながら、情報を独占せずに、必要な人に必要な形で渡していくということが、私たちの仕事ではないかなと思っています。
長くなりましたが、こんな思いで毎日活動に取り組んでおります。
ご参加の皆さんがご自身のいらっしゃる場所で、面白がりながら地域を走っていただけますように、心から願って私のお話を終わらせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。

 

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