ええまちづくりのネタ

インタビュー
市民登録ボランティアを0人から8,000人に増やした豊中市の「地域の耕し方」とは?(豊中市社会福祉協議会 勝部麗子さんのインタビュー:後編)

大阪ええまちプロジェクトの「ええまちづくりのネタ」では、住民主体のまちづくりのヒントもお伝えしていきます。
前回に引き続き、全国的に注目度の高い豊中市の社会福祉協議会 福祉推進室長 勝部麗子さんにお話をお伺いしました。

勝部 麗子(かつべ れいこ)さん
大阪府豊中市生まれ。昭和62年に豊中市社会福祉協議会に入職。平成16年に地域福祉計画を市と共同で作成、全国で第一号のコミュニティソーシャルワーカーになる。地域住民の力を集めながら数々の先進的な取り組みに挑戦。その活動は府や国の地域福祉のモデルとして拡大展開されてきた。NHKドラマ「サイレント・プア」のモデルであり「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも出演。著作に「ひとりぽっちをつくらない―コミュニティソーシャルワーカーの仕事」。

Q:ボランティアをしてくれそうな人をどうやって見つけたのですか?

ボランティアをしたい心は、6割くらいの人が持っている

ボランティアをしてくれる人は「ボランティア」という顔をしているわけではないので、見つけるのが大変、と思われるかもしれません。でも、私の経験上「なにかボランティア的なことをやりたい、してもいい」という心を持っている人は、全体の6割くらいはいると思います。ただ、実際に活動をしているのは1割くらいです。残り人の、「やりたい」とか、「やってもいい」と思う心を引き出すことが大切だと思います。

「ボランティアを探す」のではなく、「地域の課題を集め、伝えていく」

ボランティアを集めたいなら、「ボランティアをしてくれる人」を探すのではうまくいきません。
「地域の課題を具体的に伝えていく」こと、「具体的に協力をしてほしいと働き掛けていく」ということが大切で、そうすることで多くの人たちは「協力できることがあるならいいですよ」と言ってくれます。

たとえば「この地域に、困ってる母子家庭がおってな。子ども食堂やってるねん。そこでわかってんけど、学校の授業についていけてへんらしくて、大変みたいやねん。掛け算とかでいいねんけど、今度の子ども食堂のとき、ちょっっっっとでいいから、教えてあげてくれへん?」というふうに。そうすれば、「因数分解は無理やけど…掛け算でいいなら…ちょっとでいいなら、かまへんよ」と言ってくれる人も見つかりそうでしょう?

「自分から<何ができるのか>をアピールして」なんて言われたら「人に言えるほどのものはなくて…」と引っ込み思案になってしまう。そうじゃなくて、できそうな範囲のことでアプローチしていく。

私「料理してもらわれへん?」
相手「いやいや、料理が得意というわけでは…」
私「カレー作りなんだけど?」
相手「え?カレーでええの?」
私「いや、カレーがええのよ!」みたいにね。(笑)

人により心に届く言葉は異なる。だからいろんな地域の課題を集めて伝える

だからこそ、相手の心に届く言葉、行動したいと思ってもらえる言葉が重要になるんです。
とはいえ、人によって関心も違うから、いろんな切り口の地域の課題を伝えていくんです。

いろんな切り口の地域の課題を伝えていくためにも、地域の問題をさらに発見する。そしてさらに巻き込んで解決していく。地域の人が、地域を「我がこと」とも思えるように、一生懸命に地域を耕すんです。子ども食堂やマンションサミットをしたり、地域の声を集めるための仕掛けを次から次へつくっていく。それをさらにほかの人に伝えて、耕していかないといけない。

「自治会加入率98%!」のようなまちと、豊中市のような自治会加入率50%を切っているようなまちの取り組みは違います。我々のようなまちは、元気な時は干渉しあわなくて自由でいいけれど、実際に困ったことがあった時に助けてくれる人が地域で見つけにくい街なんです。
自治会加入率はほっておいて上がるものでもないから、「地域を耕す努力」が必要なんです。

「知ることはやさしさを生む」

たとえばゴミ屋敷の問題も、「知らない人がゴミをためている」という認識のときには迷惑でしかないんだけど、「なんでああなったん?」「いつから?」という問いかけを近隣の人にしてみるところから、「そういえば、パートナーの方が亡くなってからじゃない?」とか、少しずつわかってくる。ゴミを溜め込むという行動も、認知症が原因だとかわかってくると、「ああ、そうなんや、大変やねんな」となって他人ごとではないということから周囲の心が動くんです。

「困ってる人がいるってことを教えてくれさえすれば、動くよ」という人は必ずいるんです。「その人」や「地域」の課題に向き合ったら、人は協力してくれると思います。

Q:地域の課題はどうやって見つけるのですか?

まずは基礎データで地域を知る

最初は、「高齢化率」「自治会加入率」などを見ていきます。豊中市は41の校区があり、それを38の校区福祉委員会でグループが担当しています。その区分ごとに細分化して見ていきます。

高齢者の場合は、要介護状態の人がどのくらいの人数、割合でいるか、なども見ていきます。そして、地域にネットワークがあるかどうかで、ケアプランが変わってきます。ネットワークがなければ、施設に入るしかない場合も、ネットワークがあれば施設に入らなくてもよい、地域の人とのつながりが人を支えると思います。

よく、高齢者比率が非常に高い地域が「担い手がいない」と嘆くことがあるんですが、担い手がいないことを、「ないこと」として嘆くことはないんです。地域で若い人はしっかり働いていただき、自分たちが元気で支えあえたらええんや、と腹を決めて、その目標に合わせたプロジェクトを立ち上げたらいいだけなんです。

高齢男性がいつまでも元気でいられるプロジェクトとして、豊中では退職した男性を中心とした「豊中あぐり」という都市農園プロジェクトを去年始めました。

(写真:「豊中あぐり」のパンフレットより)

去年始めたばかりのプロジェクトですが、一年間で、糖尿気味だった人の血糖値が激減したりと、想像以上の効果が出ています。
また、そこで採れた農作物を子ども食堂に贈ったり、ひきこもり経験のある若者の就労支援活動のための、加工品の原材料として送るなどの新たなつながりも生まれています。

参考リンク:NHK地域づくりアーカイブス「まちなかに現れた農園「豊中あぐり塾」の挑戦!」

お金がなくてもできる「ニーズ・シーズ調査」

地域の課題や資源を知る方法のひとつに、「ニーズ・シーズ調査」があります。
これは、「できないこと(=お困りごとは何ですか?)」ということと、「やりたいこと(=あなたはどんなことならできますか?)」を同時に聞くというものです。

配布や回収の調査費用がなくても、工夫しだいでコストは減らせます。
豊中市の場合では、調査紙を「広報とよなか」に挟んでもらったり、ひきこもりの支援団体の人たちに働きかけて、ひきこもり当事者さんたちがポスティングして回ることで就労支援につなげてもらったりしました。
回収については、「お金と手間かかるよね…」とみんなで相談したところ「スーパーとかコンビニにアンケートの回収箱をおかせてもらおうよ」というアイデアが出てきて、それを主婦の皆さんたちが「お願いに行くのはできるよ。でも書類は書かれへんけど…」というと、「じゃあ私が依頼の書面は作るから…」というふうにして、コンビニやスーパーで回収させてもらいました。

もちろん回収できるのはほんの一部かもしれませんが、たとえ50件、100件程度の回答数であっても、書いてくれた人の「想い」が込められた回答には違いありません。
ここから、即援助が必要な状態の人を見つけることもできましたし、支援される側だけでなく支援をしてくれそうな人を見つけることもできています。

「支援される」となると、「申し訳ないな」という気持ちが湧いてしまいがちですが、このやり方だと「やりたいこと(できること)」もお伺いするので、ただニーズを聞くよりも記入しやすいようです。

ここで得た意見をもとに、また地域課題を探り、課題解決方法をみんなで探り…ということをして、地域を耕してきました。

地域活動をする皆さんへのメッセージ

とにかく臆することなくチャレンジしてみることだと思います。
「うちのまちの人たち、素敵でしょ?」って言えるように、地域を信じてつながっていきましょう!

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