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生活支援コーディネーターと協議体の役割とは?(公益財団法人さわやか福祉財団 戦略アドバイザー土屋幸己氏講演:前編)

2018年7月9日

住民主体型サービスの基盤整備や組織・ネットワークづくりにおける生活支援コーディネーターの役割を改めて考える機会をつくることを目的に、生活支援コーディネーター養成研修が開催されました。

本編では2018年1月26日に開催された研修の中から、公益財団法人さわやか福祉財団 戦略アドバイザー 土屋幸己氏の講演の様子をお伝えします。

本日前半は、地域支援事業がどういうものなのか、そして生活支援コーディネーター協議体の役割についてお話しさせていただきます。

実は一番分かりにくいのは、地域支援事業は、市町村の実情に応じて取り組みなさいとなっていますので、「段階を踏んで1年経つとここまでいけますよ」というようなプロセスの提示がなかなかできません。

南アルプス市というところで、そのようなプロセスをまとめることができましたので、後半ではそれをご紹介させていただいて、皆さんの参考になれば良いかなと考えています。

 

生活支援体制整備事業の義務化とその背景

この事業の根本的なところは、地域包括ケアシステムをきちんと構築していこうというのが国の大きな指針であります。

20年程前から地域包括ケアシステムの構築と言われていました。2015年には少子高齢化が加速度的に進み、要介護支援認定数や単独高齢者世帯が増えてくる、少子高齢化に伴い介護の担い手も不足してくるので、いわゆる既存のサービスだけでは対応できなくなるからしっかりと地域での支え合い、連携をしっかり作っていこうと長年言われているわけです。

ところが、2015年はもう過ぎて2025年問題と言われています。8年後には団塊の世代が75歳になり、超高齢化社会がやってきます。

今までは地域包括ケアシステムを作りましょう!という掛け声だったのですけれど、なかなか全国の自治体では進まないので、介護保険制度を改正して総合事業を作っていく。

その中で地域における支え合い、体制作りをしっかり進めていこうということで今回、生活支援体制整備事業が義務化されたわけですよね。そんな背景が一つあるというわけです。

 

超高齢化社会で起こる問題

まず一人暮らしの認知症の増加。

2030年くらいには5人に1人が認知症の診断を受けると言われています。そうなると、家を出たまま家に帰れなくなる、ゴミ捨ての曜日を忘れてしまってゴミを捨てられない人が出てくる。

地域の人たちは、ゴミを出す日じゃないのにゴミを出している高齢者を見るとその人に注意をしますよね。なんでこんな日にゴミを出すの?と。そうすると怖くてゴミが出せなくなる。

それで家にゴミが溜まっていく。だけど地域の人たちは無関心ですから、家の中に溜まっていることなんて気付きません。家から溢れてきて玄関先、庭に溜まってくると、あの家は何なのか、こんな一人暮らしの高齢者は心配だから施設に入れた方がいいのではないか。

そうやって地域からの排除が始まってきますよね。そして財産管理ができなくなって、消費者被害にも合うわけです。挙句の果てには在宅生活が困難になってくるわけですよね。

こういう方たちもちょっとした支え合い、ゴミの日に誰かが声をかけてくれたり、ゴミ出しを手伝ってくれたりすれば、継続的に地域で生活出来ます。

 

もう一つが一人暮らし高齢者の増加。

これも2030年くらいには高齢者の5人に1人が一人暮らしになると言われています。

5人に1人が一人暮らしで、そのまた5人に1人が認知症。ということは一人暮らしの人が25人いるとそのうちのひとりは認知症で尚且つ一人暮らしの人が発生してくる。

これは皆さん実感として感じていることだと思います。そして一人暮らしが増えてくると、要介護状態ではないという人はデイサービスセンターに通えませんよね。

するとお話相手が居なくて孤独になってくるわけです。病気や怪我で倒れても誰にも発見されない。孤独死が発生してきます。ちょっとした困り事も介護ヘルパーは頼めません。粗大ゴミを捨てられない、電球の交換、元気だけど困っている人がたくさん出てきます。一人で買い物に行っても多くの荷物は運べない。そして病院に通えない。

このままでは保険料が1万円を超えるのではないかと言われています。

 

高齢者が増えること自体は問題ではない

高齢者の方が増えても、元気で生きがいを持って、いつまでも介護状態にならない方がたくさんいれば、別段問題ではありません。

認知症が5人に1人なってくる。記憶障がい・見当識障がい・BPSD などが起きてきます。そして、要介護認定者も5人に1人。今、介護給付費は10兆円を超えてきていますよね。

 

これは認定を受けている人の頭数で割ると、一人あたり170万円ほど1年間でかかっています。こんなことは住民の皆さん、ほとんどの人は知りません。

介護保険料って50%は税金ですよね。

65歳以上の第1号被保険者の負担割合は22%で、約30%は第2号被保険者、40歳以上65歳未満の第2号被保険者。

この中で40歳以上の方、ちょっと考えてみてほしいのですが、自分が1年間、第2号被保険者としていくら払っているかわかっている人手を上げてみてください。これだけいてひとりも手が上がりませんよね。それが3割使われているわけです。

でも高齢者の方は、高い保険料を払っているから使わないと損だと言って、介護保険料を一所懸命使いますよね。本当に必要な人は必要なサービスに使う。

そのために介護保険はありますが、私が富士宮市で2年ほど前に行政の課長をやっていた当時、その時に要支援1、2の人がデイサービスを使う理由の調査を富士宮市でやりましたら、85%の人のデイサービスを利用している理由は「一人暮らしで話し相手が欲しい」というものだったのです。

それであれば介護デイに行かなくても、地域の中に通えるところがあって、そこでみんなでお茶を飲んで話をして体操でもして、済むわけですよね。そこに問題があるということですよね。

こういう方達がたくさん出てきます。そして、一人暮らしで困る人が5人に1人。生活困難、孤立死も出てきますよね。

 

健康寿命と寿命の差こそ問題

要するにどうすればいいかというと問題は健康寿命と寿命の差なのです。

女性は平均寿命が86.9歳で健康寿命は74歳。男性は平均寿命が80.7歳で健康寿命が71歳。その差は女性13年、男性10年ですから、女性は13年間、男性は10年間、元気でいられない状態が生まれます。ここがいわゆる高齢化問題ということになってくる。

では健康寿命をのばすにはどうしたらいいのか?

今までの介護予防は機能訓練重視でした。チェックリストで要介護状態になりそうな人を把握して行政や包括支援センターが呼びかけて介護予防教室に参加してもらう。そして機能訓練をしていきましょうと。その結果、介護予防教室に参加した高齢者は平成25年の調査では100人に1人にも満たなかった。国は100人に5人、5%くらいの参加を見込んでいたのですが、蓋を開けてみると0.8%、100人に1人もこの施策には参加してくれませんでした。

そして予防教室が終わって家に帰る。5人に1人が一人暮らしですよね。一人暮らしの家にかえると、誰とも話をしない。また体操もしない、そして元の木阿弥で、また認知症になったり、要介護状態になったり、これを繰り返していたわけですよね。

じゃあどうすればいいのか?

健康寿命と平均寿命の差を縮めればいいのです。

縮める方法は二つあって、一つは健康寿命を延ばすこと。もう一つは寿命を縮めることです。今更、寿命は縮めたくないので、健康寿命を延ばしましょう。

そのためには人と話をすること、または活動すること、家に引きこもらず通いの場や活動に参加する。週に最低でも1回程度は体操等を行う。これは地域で色々な呼び方をしていますが、一般的には「いきいき100歳体操」と言われるものです。これらを続けていけば、認知症や介護状態になることを防げますよ、ということですよね。

今までの介護予防は機能(個人の身体機能)に重視していたのですが、今回の総合事業等の考え方とすると、地域で活動する場所、通う場所、環境をしっかり整えていかないと、いくら個人の身体機能ばかり着目していてもダメだということです。

 

地域包括ケアシステム(2つのコンセプト)

地域包括ケアシステムには2つのコンセプトがあります。

1つは地域における医療と介護の連携。地域包括ケアシステムは現在、高齢者ベースで語られています。

当然、これからはもっと広い概念、共生型の社会を目指していくということになりますけれど、高齢者ベースで考えた時に地域の医療と介護の連携というのは非常に重要な要素です。

高齢の方は悪くなると入退院を繰り返します。例えば脳梗塞で救急病院へ搬送されると、10日足らずで退院になります。その時に家族がいれば退院してきても、食事、掃除、洗濯等できますけれども、5人に1人が一人暮らしになってきますから、退院させられてしまっては何もできないわけです。

その時の退院までのつなぎ、いわゆる地域連携をしっかり作っていく。そして介護サービスの情報の提供。こういうものをしっかり作っておかないとどうにもなりませんので、一つは統合ケア=インテグレーテッドケアと呼んでいますけれども、地域における医療と介護の連携をしっかり作ることです。

ただし、これは誰がやるかというと医療・介護関係者など専門職です。専門職や行政がうまくいっていない事業をしっかり検証していって不具合を改善していって連携の仕組みを作っていく。これは欠かせないことです。

もう1つは地域の中にいる要介護ではないものの、たくさんの困りごとを抱えている人です。

認知症の人がたくさん出てきますので、そういう人たちでは医療介護連携だけでは到底サポートできません。

もうひとつ重要な要素が地域を基盤とするケア(community – based care) これが地域の支え合い、助け合いの推進ということになってきます。では、こちらは誰がやるのか?地域の支え合い助け合いだから、行政ではありません。

ここが重要で、地域の住民だったり、活動団体だったり、企業だったり、そういう人たちが連携して地域の支え合い・助け合いを推進していく。ここを進めていくのが今日の主眼です。生活支援体制整備事業を作ってしっかりと進めていこうと、国が制度化したということですね。

 

地域包括ケアシステムの目的

地域包括ケアシステムの目的は、一人暮らしや要介護状態、認知症になったとしても住み慣れた地域で、地域との関係性や信頼関係の中で尊厳ある地域生活が続けられるような仕組みを作っていくことです。

まさに尊厳ある地域生活というのが、地域との関係性や信頼関係を維持していくことです。

例えば今、皆さんの地域にも、ご自分でゴミの処理ができなくてゴミが溜まっていって不衛生な状態になっているお家ってありますよね。そういうところで生活している人を地域はどう思うかというと、不衛生だし、火事でも起きたら大変なことになっちゃうから、こういう人は早く施設に入った方がいいなどと考えがちですよね。

ところが、その人はいきなりその状態になったかというとそうではなくて、何十年も地域で生活をしてきている。結婚して子供が生まれ、子供が小さいうちは一所懸命PTA活動に参加してくれた。子供が社会人になって家を出ていった後も、地域の役員をしながら地域に貢献をしてくれた。いよいよ、ご主人が先に亡くなって、3年ほど前から一人暮らしになった。物忘れが始まり、ゴミをうまく処理できなくて今、ゴミが溜まってしまっている。

そういう人を認知症で困っている人と見るのか。

それとも、今までずっと地域で生活してきた隣人であって、ゴミの日に声をかけてあげれば、この人まだ地域で生活できるよね。もし捨てられないゴミがあればお手伝いしてあげられるよね。

このような関係性や信頼関係がしっかりと構築されないと、尊厳ある地域生活は続けられないということになります。

それをしっかりと作っていこうというのが地域包括ケアシステムの目的です。

 

助け合い・支え合いの原則は自助

そのためには、医療介護の連携、地域の支え合い、助け合いがしっかりできていないとまわらないということになります。

医療・介護連携は専門職がやります。

じゃあ地域を基盤とするケアはどうするのか。

助け合い・支え合いの原則は自助です。自分でできることは自分でする。

もともと介護予防事業も介護ヘルパーも、自分でできることはしてもらって、できないところは介護の要支援のヘルパーさんがサポートする。そういうプランを立てましょうということです。

でも、介護サービスというのは、利用者とサービス提供者なのです。支え合い・助け合いというのは、自分たちの気持ちでやるものですから、自分でできることは自分でやってもらうのが大原則になります。

 

有償のボランティアをやっている人たちが、庭の草取りなど自分たちでできないことがあっても年金暮らしで業者に頼めない、そういう人のところへいって1時間300円くらいで草取りしてあげます。

隣にいた高齢者の人がそれを見て、「いいなあ、1500円でこんなに庭が綺麗になるのか。うちはシルバーに頼んだら5万円取られた。うちもやってくれないか」という話になる。

その時に支え合い・助け合いをやっている人は、この人は年金暮しでお金もないし、一人暮しでどうにもならないから我々が手伝っているのです。あなたは年金もたくさんあるし、事業者に頼めるでしょう。息子さんもいらっしゃるしご自分の所でやって下さい、と。

これが自助です。助け合い・支え合いの原則はそこです。

 

地域と基盤としたケアを進めるには、自分でできることは自分でやる。

そうでないとやっている人たちが疲弊してしまいます。

それでは、自分でできないことはどうするか。

身近な人による互助。本人や近親者の間で成立している助け合い。まずはこれをやりましょう。

家族がいるのであれば当たり前です。だけれども5人に1人はその家族すらいない一人暮らしになってくるわけですから、家族も頼れない。

そこで本人や近親者の関係以外に本人と地域の関係性でも成立する互助を作っていこう、いわゆる私たち(地域)の間で成立する互助。これが生活支援体制整備支援事業の中で、協議体やコーディネーターの人たちが作り出していく、支え合いの基本ということになってきます。

 

1層、2層の圏域は住民と話し合って決める

地域包括ケアシステムをもう一度整理すると、目的は、独り暮らしや要介護状態・認知症になったとしても、住み慣れた地域で、地域との関係性や信頼関係の中で尊厳ある生活が続けられるような仕組みを作っていくこと。

重要なのは地域です。住み慣れた地域。行政区割りではなく生活実態に合わせる。

生活支援体制整備支援事業では、第1層、第2層の設置をしなさいと言われていますけれども、ここで第2層、特に地域限定をするときに地域が広くなればなるほど地域課題が見えにくい。

多くのところは市全体で第1層、第2層は概ね中学校区というところが多いです。

これは介護保険の事業計画を作るときに地域密着型の事業所を指定するときに、生活圏域を規定して行政が設置数を決めなさいとありました。その時は事業所を設置するので小さい圏域じゃなくてもいいので、概ね中学校区とか言われていました。

 

国の資料を見ると、生活圏域は概ね中学校区って示してあったのです。

そうなるとどこの市町村も第2層は中学校区でいいかなということで、中学校区を第2層としているところが多いのです。

ところが実際に地域づくりを進めていく中で、中学校区の住民を集めて地域課題整理などをやっていくと、中学校が合併してだだっ広くて北の端と南の端では課題が全然ちがう。

南の街中では買物に困ってないけど、北側へ行ったら買物もできないし、一人暮らしの人も山のようにいる

。そうなってくると、これから皆さんが地域の困りごとを発見して、支え合いを作っていくとすると、どのくらいの広さだと地域課題を皆さんで共有出来るかというと、広くても小学校区くらいなのです。

でも小学校区くらいで第2層をスタートさせると、小学校区でも広すぎる。

では自治会ごとに勉強会を開いていって、もっと小さな地域で課題を見つけていこうとなるのです。

だから圏域を決める、1層、2層を決める時も行政が一方的に「我が市は中学校区です」なんていうとうまくいきません。

住民の皆さんと話していって、皆さんが支え合い活動を進めるとしたらどのくらいの地域でやりますか?というと色々出てきます。最初は広い中学校区でやろうなんて思っていたけど、住民と話していたら中学校区ではとても広すぎるから2層は小学校区にしよう。

小学校区でやっているところが、小学校区でも広いから自治会ごとに第3層の協議体やコーディネーターを作ろうなんて話も出てきます。地域設定を失敗してしまうと支え合い活動というのは進まないという話になってきます。

 

住み慣れた地域で包括というのは、医療介護や保健福祉の連携、フォーマルなサービスではなくて自治会や地区社協、地域の縁で結ばれている組織なので、地縁組織などとよく言います。

または老人クラブやボランティア、NPO、そして企業が連携して生活支援や見守り等のネットワークを作っていくということです。

移動支援や買物支援は、なかなか地域住民だけではできません。だから協議体に地縁組織だけではなく、活動団体や企業を入れていくというのは、そういうところに意味があるのです。

こういう方達が包括的なネットワークを作って、地域生活を支える連携の仕組みを作る。これが地域包括ケアシステムということになってくるわけです。

 

医療・介護連携と、地域における支え合いを進めるために、地域支援事業が改正されて総合事業というものができました。この目的は、利用できるサービスの多様化と高齢者の社会参加です。

今までは通所型サービスと訪問型サービスは市や県から指定を受けた介護の事業所しかサービス提供できませんでした。B型などに関しては介護事業所だけではなく住民や活動団体など色んな人たちが実施できるようにして、サービスを広げていこうということです。

 

もう一つは高齢者の社会参加。

その担い手として要介護状態になっていない高齢者が8割以上いるわけですから、その元気な高齢者の方達に担い手となって高齢者の社会参加をしてもらおうということです。

この2つを目的として介護予防・日常生活支援総合事業というのを作ったわけです。

今までは機能訓練が中心の介護予防事業だけでしたが、そうではなくて日常の生活支援などを総合的、一体的に行うので介護予防・日常生活支援総合事業という名前にしたわけです。

もう一つ包括的支援事業の中で医療・介護連携と地域の支え合いを推進していくということで、在宅医療・介護推進事業、認知症施策推進事業の2つは、医療・介護連携を進めるために行政の事業として義務化されました。

 

もう一つ重要な包括ケアシステムのコンセプトとして地域における支え合いの仕組みを推進しなければならないので、生活支援体制整備事業つまり生活支援コーディネーターや協議体の設置を義務付けたわけです。

いま、国は平成30年度末までに約1700あるすべての市町村に(北海道の人口1000人の村でも横浜市など人口が300万人近い政令市でも)生活支援コーディネーターと協議体を設置しなさいと言っています。残り14ヶ月ということになります。

 

では、ここを少し整理します。医療・介護連携と支え合いの推進のために包括的支援事業を大幅に改正したのだということになります。だから皆さんがやる気になって、この地域に一人暮らしで孤立している人が多いから、コーディネーターさんがまず住民にニーズキャッチをして調べてみたら10人も一人暮らしで孤立していている人がいる。

コーディネーターが協議体と一緒になって住民に働きかけて、「このままいったら認知症とか孤立死が起きてしまうから居場所の一つでも作らない?」「そうだね。協力はするけどお金は出せない。」「お金は補助で出るみたいだよ。」それで居場所ができました。そしてその人たちに声をかけて、そこに来てお話をして体操をして、健康寿命が延びますよね。

そんなことを総合事業は求めているのですよ、ということです。

 

生活支援体制整備事業をやるのは住民

これからの介護予防は 機能訓練だけではなく、通いの場や生活支援をはじめとした様々な活動の場づくりを、住民の皆さん(特に元気な高齢者等)の力を借りて作りだしていこうということです。

ここで重要なのは、高齢者だけというと語弊があるので、一番多いのは元気な高齢者ですけれど、地域で子育て中のお母さん、定年したばかりの男性など色んな人に声をかけてこういうものを作っていきましょう、という話になるわけです。

総合事業の目的は、サービスの多様化と高齢者の社会参加。

プロでないとできない介護はプロに。プロ(専門職)でなくてもできる生活支援や助け合いは住民が主体となり地域で支えあう仕組みにしていきましょうということなのです。

住民主体の部分に元気な高齢者の方の力を借りられればなと。活動すること自体が高齢者の役割、生きがい、介護予防につながります。

通いの場などを運営している高齢者のスタッフの方はいきいきしていますよね。

私は静岡県の富士宮市というところにいるのですが、そこでもポツポツそういう動きが出てきています。

行って様子を見てみると、60歳代の女性スタッフの方もいて「どうしてこちらでお手伝いしていらっしゃるのですか?」と声をかけてみたら「3年前に夫が亡くなり、一人暮らしで家にいると鬱々となる。でもここに来ると楽しいのよね。みんなとお話ししたりして。一つだけ希望があるのだけれど、週3日しかここはやっていないから毎日やってほしい」こういうことをスタッフが言っているのです。そうやって元気になっていくので、このような地域づくりを行っていくことが総合事業の目的の一つなのです。

だから、支え合い活動が発展していって総合事業になるとベストなのですが、どうしても総合事業というのは国でABCDと類型が決まっていて、行政としてはやる以上はBを作ってほしいとなって、「Bをやって」というと住民の方は押し付けられたようで抵抗感が出てしまうものです。

本当はABCDの類型で地域の困りごとが全部解決できますか?できませんよね。

みんなで自治会の集まりで話していたら「田中さんのおばあちゃんが、最近ゴミ出しの日を間違っていて困るのよね」「じゃあ俺、隣だから声かけてあげるよ」そういうのはABCDの類型に入りませんよね。

そういう助け合い・支え合いも、コーディネーターや協議体が作り出していく上で非常に重要な要素です。だから、総合事業はABCDまでの類型を作りましょうという話であって、生活支援体制整備事業はEからZまでの限りない地域での支え合い活動を作っていくというのが重要な要素ということになるのです。

生活支援体制整備事業は誰がやるのか?

それは住民主体です。

行政の事業でありながら住民主体。こんなの初めてです。

まちづくり事業では、総務省が住民に投げていたことはあります。でも、福祉の世界で初めてです。

今までは給付か措置でした。行政責任で全てやっていたものを、ここの部分は住民の皆さんにお願いしようと。だから大変なのです。

行政が上から目線でやれ!と言えば「なんで行政にやらされないといけないのか。行政がやれよ!」となっちゃうわけです。

だから協議体やコーディネーターがしっかりと地域の支え合いを作り出す。生活支援コーディネーター(地域支えあい推進員)と書いてありますよね。そして、その推進員を支えるのが協議体という組織なので、この支え合えるような関係性をしっかりと組織がしていかないといけないということです。

 

生活支援コーディネーターや協議体とはどういうものか

生活支援コーディネーターは、日本語でいうと地域支え合い推進員。

支え合いを作り出す人です。総合事業のB型を作り出す人ではないのです。

ここを間違えないようにしないといけないですね。社協さんも地区社協とか福祉推進委員会とか、色々と住民組織を作っていますよね。

これまでは、その中で気付いた人たちが自分たちの志でやっていたので無理は言えなかった。やれる範囲でやってくださいと。ところがそれでは間に合わないので、地域ニーズをキャッチして、住民に戦略的に働きかけて足りない社会資源を作っていこうというのが協議体やコーディネーターの重要な役割です。鍵は、住民主体の多様な助け合い活動の創出とネットワークづくりです。

 

生活支援コーディネーターと協議体に期待される機能と役割

その役割は足りない社会資源を作り出す機能が非常に重要だということです。

地域にあるものは、ニーズ調査をして活用すればいい。だけど、ないものは作り出すほかありません。

全国まわっているとコーディネーターの皆さんが資源調査をして社会資源マップが作ってあります。その中にはサロンがいっぱい作ってあります。

でもだいたい月1回ですよね。じゃあこの中で、あったら非常にいいけど、なくても生死に関わらないものをちょっと消してみましょうか。

そう言うとほとんどが消えてしまいます。だけど、例えばこの地域に一人暮らしの人が10人いるよ。孤立しているよ。コーディネーターさんがニーズキャッチをして、住民に働きかけて、その人が来る居場所が1個できたとしますよね。それで、週に3回やっていますよ、と。それがなくなったらその人はどうなりますか?

孤立して認知症が進んで機能低下していっちゃいますよね。なくてはならない社会資源になりますよね。だからあったらいいものはどんどん活用する。だけれどないものは作り出すアクションを起こしていかないとしょうがない。それが生活支援コーディネーターや協議体の重要な役割になるのです。

 

協議体構成員というのは、生活支援コーディネーターがだいたい2層圏域でも1人くらいですから、1人ではとても対応できません。

だから各分野の得意な人たち、その地域で例えば買物に困っているよ、という人がいたら商工会の会長さんか何かに協議体に入ってもらっていれば仕組みづくりに協力してくれます。

居場所を作ったけど、そこまでの足がない。ある地域では、その地域にあるデイサービスセンターの所長さんに協議体のメンバーになってもらった。

そうすると「うちの送迎バス、朝と夜しか使わないから。昼間は空いているので、皆さんがボランティアで運行されるのでしたらお貸ししますよ。保険も入っているし。」という話になったりします。

だからその地域で支え合い活動・助け合い活動を作るのに必要な人を地域で話し合って、協議体を組織化していけばコーディネーターの強力な応援団になってきますよね。その時に地縁組織だけでは足りないから、活動団体や組織もしっかり入れ込みましょう。これが協議体の考え方ということになってきます。

 

コーディネーターと協議体の役割をもう一度整理しますと、一つは資源の開発。

あるものはしっかりと使いましょう。だけれどもないものはしっかりと作り出していくということが重要になります。ニーズ、困りごとを把握して、それに対応できる助け合いを作る。そしてサービスの担い手になりそうな人に働きかける。そして元気な高齢者などが担い手として活動する場所、いわゆる居場所を作ったり、生活支援の有償無償のボランティアを作ったりしていくと、それ自体が元気な高齢者の方の活動になります。それが介護予防になっていくということです。そのような連携を作っていきましょう。

もう一つは、ネットワーク。情報共有ができる支援をしていきましょう。

それからもう一つはニーズと取り組みのマッチング。困っていることと、支えてくれる人をしっかり繋ぎあわせる。こういったことが生活支援コーディネーターや協議体の役割として期待されているということになります。

 

コーディネーターがしっかりと選任されると、まず一番わかりやすい地域の町内会や自治会に働きかけて地域でできる助け合い活動が(見守りやゴミ捨てなど)充実してきます。

だけど、配食や移動は住民ではできません。

そこで、こういう事をやってくれませんか?とNPOに働きかける。まさにNPOと地縁組織がしっかりとネットワークしている。

担い手の掘り起こしとマッチングをやっていくと、地域の困りごとが1つずつ解決していくわけです。何年か活動していると目指す地域像、いわゆる尊厳のある地域生活が続けられる。そして自分がそうなった時、元気な人でも何年かすると支えられる側になるわけですよね。地域で起きていることを他人事ではなく我が事として捉え直して元気なうちは担い手としてやっていき、そのうち自分が支えられる側に回っていく。こんな地域を作っていくのが協議体やコーディネータの役割ということになります。

 

先ほど言いましたように、第2層は地域ごとに作ります。

地縁組織による助け合いで対応できるもの。見守りやゴミ捨て、ちょっとした有償ボランティアなど。こういったものは地域でやりましょう。だけど移動支援とか配食サービスみたいに地域でやれないものは第1層の協議体にその問題をあげていって、1層で協議をして頂いて、行政にサービスを作っていただけるように政策提言をしていくとか。このようなイメージです。

だから2層の情報が1層につながるような協議体の仕組み作りをしておかないとうまくいかないですよね。

1層の協議体メンバーは、地域の2層の人たちが情報をあげられるような仕組みをしっかり作り上げておかないと、1層、2層の意味がないということになりますね。

 

生活支援コーディネーターと協議体の役割とは?(公益財団法人さわやか福祉財団 戦略アドバイザー土屋幸己氏講演:後編)

 

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