ええまちづくりのええ話

インタビュー
感染防止しながら地域のつながりを維持し続ける『新しい「ツナガリ」プロジェクト』/阪南市社会福祉協議会

大阪府による「外出自粛高齢者・障がい者等見守り支援事業交付金」(以下、交付金)を活用し、『新しい「ツナガリ」プロジェクト』の立ち上げを推進してきた阪南市社会福祉協議会(以下、社協)の猪俣健一さん。

社会的距離を保ちつつ取り組める新しい地域支援として、短期間でどのようにプロジェクトを立ち上げてきたのか、どのような効果を生み出そうとされているのか、Zoomを活用したオンライン取材で在宅勤務中の猪俣さんに話を伺いました。(2020年4月29日)

 

Q:『新しい「ツナガリ」プロジェクト』の目的と概要について教えてください

3月以降、地域の福祉活動の自粛をお願いしている状況でした。緊急事態宣言より前からストップしていたことになります。これまで「人とつながっていきましょう」と言いながらそれを全て中止せざるを得ないモヤモヤを感じていました。

緊急事態宣言後、特に高齢者においては、「外に出ること」自体がリスクと言われる中で、地域包括支援センター(以下、包括)やケアマネージャー(以下、ケアマネ)さんなど地域の関係者からも、高齢者が閉じこもりがちになっていて気持ちが落ち込んでいる、と報告を受けていました。

接触をしてはいけないのは大前提ですけど、この状況を放っておくと、認知機能や身体機能も下がってしまう。何より、つながりそのものがなくなってしまうのでは、それを見過ごしてはいけないのではという危機感がありました。

「感染予防しながらも、つながり続ける方法はないか?」とずっと考えていて、それがこの事業の目的になっています。そして、お手紙などで「接触せずにつながっていきたい」というのが概要になります。

 

Q:プロジェクトの連携・協働体制を教えてください

まず前提として、社協自体が特例貸付の相談が殺到していまして、全部署挙げて取組んでいる状況です。その中で、新しい事業に向けてなかなか踏み出しにくいのが現状でした。このプロジェクト自体も社協職員だけが頑張るのではやりきれないというのは最初から考えていました。

こういう状況の中でこそ、同じように課題を感じている関係機関や行政、今までつながっていなかった方とも一緒に進めたいと考え、まずはじめに行政と話をして約1,700名の災害時の要援護登録者に向けて情報発信をすることに決めました。

直接高齢者と関わっている地域包括支援センターや、医療・介護の多職種連携会議といったネットワーク、医師会の会長も同じことを課題として感じていると聞いたので、『新しい「ツナガリ」プロジェクト』の展開イメージ図をもって、関係機関に働きかけていきました。

 

 

本来なら、仲間たちと話して考えながら作るのですが、即動き出さないといけない状況だったので、まずは自分で仮のイメージ図を作りました。

実は、この図もどんどんバーションアップをしているんです。最初に送るレターの中に「ユニーク川柳の募集」というアイデアも入っているのですが、こういったことは職員や、連携先と話して出てきたアイデアを付け足しています。

 

Q:プロジェクトの発案から立ち上げまでどういったプロセスで、どんな期間で進めてこられたのでしょうか?

問題意識を共有し始めたのは4月に入ってから。緊急事態宣言が出る前くらいですね。社協内の職員や包括、ケアマネさんなどと話をし始めていました。

その後、具体的に動き出したのは、4月15日の大阪府知事の会見で「交付金」が出ることが分かってからです。

その翌日に市長と市役所の福祉部長、健康部長と打ち合わせをして、要援護者の登録情報を使うこと、介護の専門職など関係機関とも協働していくことに合意を得て、動き始めました。約10日でここまで形を作ってきました。

 

Q:今回のプロジェクトで情報が届いた人たち(約1,700名の要援護者)が具体的にどのような状態になることを期待していますか?

誰もが初めての状況に身を置かれていて、いろんな不安やしんどさを抱えながら暮らしています。特に1人暮らしの高齢者・障がい者といった方々は、普段以上に生きづらさを感じていると思います。

一番懸念していること、この状況で鬱になったり、孤独死をされたり、そういうことは絶対に起こしたくありません。

この状況が劇的に改善することは難しいと思うのですが、せめて「今どんな状況におられるかを知りたい」ということ、そして、今回のプロジェクトで届くニュースレターで「誰かと繋がっている」という状況を作って、安心感を持ってもらえるようになることを期待しています。

 

Q:「誰か」というのは、子ども福祉委員、少年院ボランティア、登録者同士という手紙のやりとり、マッチングをこれからやろうとされているということでしょうか?

子ども福祉委員(※)や少年院ボランティアのみんなにもこんな状況だけど「何かできることないかな?」と担当職員とともに問いかけたら子どもたちの方から「お手紙を渡そう」とか「キーホルダーを作って届けよう」などのアイデアが続々と出てきています。今も、LINEで子どもたちからアイデアが寄せられている状況です。

生活支援コーディネーターとしても、社協職員としても、普段から困っている人に寄り添ったり、「何かしたい」という気持ちの人をつなげていくこと、育てていくことが、仕事だと思っています。

非常に辛いことは、これまでボランティアを続けてきた方たちが、この状況の中で動くことが悪いことだ、と感じることです。一番大事な「何かしたい」と湧いてきた思いが離れてしまうことを心配しています。

そこで「こういう時にこそできる活動を何か一緒に考えませんか?」と呼び掛けているところです。

(※)子ども福祉委員の取組紹介記事はこちら

 

Q:ニュース便の封入作業を障がい者事業所へ委託されているのですが、どのような考えでここにお願いすることになったのでしょうか?

現在、社協は日々めまぐるしく貸付の窓口対応をしています。そんな中、障がい者事業所の方からも相談があり、仕事が止まっていて、障がい者へ支払いする工賃も少なくなっていて困っているという話を聞いたので、ニュース便の作業などにぜひ力を貸して欲しいと思いました。

今は、社協職員は火急の貸付の窓口対応に日々すごい勢いで追われている。かたや貸付相談に来られる方は仕事がゼロになり、生活に困っている。それなら、仕事がなくて困っているところに仕事をお願いできれば、お互いWin-Winでやっていける、ということを改めて感じました。

 

Q:高齢者や障がい者の皆さん、この状況でつながりが作りづらくなっている方々へ向けての手紙というアイデアは、どこからのヒントだったのでしょうか?

東日本大震災の時に遠く離れた避難者や、遠く離れた子どもたちが現地の被災者のおばあちゃんとやりとりしているドキュメントを見聞きしたことから「離れていても手紙なら気持ちが伝わるんだな」というのが頭の中にあったんです。子どもたちに聞いてみると「お手紙出したい」という言葉も聞けましたし。

あとは、子どもたちからは「LINE通話でできないのかな?」というアイデアも出てきました。高齢者の中でもスマホを持っている方も多くなっていますし、いまどきの新しいつながりとして考えられるかなとは思っていますが、それは次の課題かなと思っています。

 

今回は、対象が高齢者と障がい者になっているのですが、子どもたちの状況も気になっています。子育て支援に関わるNPOさんからもなんとかしたいという声が上がっていますし、子どもたちの環境も大きく変わっているので、『新しい「ツナガリ」プロジェクト』の対象として拡大していきたいです。

今後、生活をしていく上でもオンラインで買い物をするための知識が必要になりますし、そういった社会への変化が加速していく中で、プロボノさんや技術がある人と繋がって新たな市民活動の在り方を考えいかないといけないな、と思っています。

 

Q:ここまでたどり着くまでに、一番大変だったことを教えてください

仲間たちも、自分自身も、普段とは違う状況の中なので、話が噛み合わない状況や溝を感じたり、自分自身も大事なことを忘れたり。普段とは違う状況の中で、スピードを優先して取り組んでいくと、これまでにない感情が生まれたり、見落としがあったり、というのは日々反省をしながらやってきているんです。

こんな時だからこそ、普段やってきたことを大事にしないといけない。

特に今は考え方が様々です。「外に出てはいけない」「つながりは必要だ」「こんなことをやってはいけない」など、正解が何も見えない中で、だからこそじっくり話しあって、気持ちを同じ方向に合わせて進めることが大事だと感じています。

 

Q:最後に猪俣さんと同じように「この状況下で何かしなければ…」と感じている人にメッセージをお願いします

やりながらモヤモヤはあります。先のことを考えても、この状況はすぐには変わらない。緊急事態宣言が解除されたとしても、これまで通りのやり方はできなくなると思います。だから、ボランティア活動もやり方を変えていかなければならない。

状況が落ち着いてから、と思っていたら、見えない課題はどんどん広がっていきますし、担い手になってくれる方の心が離れてしまっていては、「さぁ、やろう」と思っても、今まで積み重ねてきたことが全部崩れてからスタートだと、本当に大変なことになります。

不安はあります。自粛中だから何もしない、と言うのは簡単ですが、モヤモヤしながらも「せめて何かできないかな」と考え続けて取り組んでいます。

 

内部だけでやろうと考えると負担感が増してしまいますが、外部の協力者のチカラを借りて、今までと違う形でやれる方法を考えていくと道が開けることを感じています。

災害でも平常時でも、課題があれば、自分だけで考えるのでなく、周りの人と共有・話し合って、課題に向き合って、何かできないか考えていくことが大事なのかなと思っています。

まだ絵に描いたようにできているわけではありませんが、一歩踏み出すと「同じこと考えていた!」「それなら、書き損じはがきが100枚あるから使って」などの協力をしてくれる人が現れますし、それが励みになります。

一歩でも半歩でも、今できることをやり始めていくことが大事だと思います。

 

猪俣さんへ『新しい「ツナガリ」プロジェクト』について確認やご自身の取組を相談したい方へ

大阪ええまちプロジェクトでは、大阪府下の協議体、生活支援コーディネーター、地域団体の皆様からのご相談も受け付けています。

本記事を読まれて、猪俣さんの考え・プロジェクトについてより深く知りたい場合やご自身の取組についてヒントを得るために相談をしたい場合は、大阪ええまちプロジェクトまでお問い合わせください。

問い合わせ先:osaka@servicegrant.or.jp

担当:大阪ええまちプロジェクト事務局(河井・槇野)

 

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