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ええまちづくりのええ話

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多様な人とつながり地域を活性化。商店街から生まれた第2層協議体の取組とは/2019年度 生活支援コーディネーター養成研修 枚方市 事例紹介

2020年4月3日

住民が主体となった地域づくりを進める上で、基盤整備や組織・ネットワークづくりにおける生活支援コーディネーターの役割を改めて考える機会をつくることを目的に、生活支援コーディネーター養成研修が開催されました。

本レポートでは、2020年1月27日に開催された研修の中から、枚方市で第2層生活支援コーディネーターを担当する永濱旭さん、枚方市地域包括支援センター松徳会所長の浅田京子さんからの事例紹介をお伝えします。

 

枚方市の「元気づくり・地域づくりの取り組み」

枚方市第2層生活支援コーディネーター 宮之阪中央商店街振興組合 副理事長 永濱 旭氏

 

私は、枚方市の宮之阪中央商店街の副理事長で、枚方市第2層生活支援コーディネーターも務めています。

今回、私と同じ圏域で活動されている、枚方市地域包括支援センター松徳会の浅田所長とともに「商店街から生まれた第2層協議体の取組」について、お伝えします。

枚方市は、約40万人の都市で、私が活動する圏域の人口は約3万5千人。高齢化率は28%です。枚方市の全13圏域の中で、高齢化率は高い方です。

 

枚方市は小学校区が45あり、そのうちの42校区に第2層の生活支援コーディネーターが配置されています。基本的には校区コミュニティにある校区福祉委員が兼任したり、もともとあったコミュニティをスライドした形で第2層が設置されています。

枚方市では、「元気づくり・地域づくり」というプロジェクトに、各小学校区が取り組んでいます。市全体は第1層がサポートし、小学校区では私たちが、さまざまな取り組みを行っています。

 

「サポーター制度」の導入で、商店街とまちが活性化

商店街で働きながら、高齢化による来客の減少、買い物難民の増加、経営者の高齢化、後継者不足などに向き合ってきました。

そして商店街が疲弊していくのは、今の商店街は住民に必要とされていないのかもしれないと考え、必要とされる商店街に変われば、まだまだ商売できる可能性があると思いました。

 

大型店やネット通販と品ぞろえや価格で争っても対抗できません。商店街の「ヒト」と「モノ」でつながりがあるところがポイントだと考えました。

「コト」でつながりが生まれると考えて、今、地域で求められる「コト」を探すと、「高齢者の買い物支援」「子育て世代への支援」「地域交流の場所づくり」などが挙がってきました。

その中で商店街では、「買い物支援」「やさしいまちづくり」「コミュニティの場を作る」といった「コト」ならやれる。

そこでまず、「商店街のサポーター」を作ろうと考え、宮之阪商店街では「サポーター制度」を導入しました。

「宮之阪商店街が好きな人」や「まちづくりの興味のある人」「イベントが好きな人」など、いろいろな人に声がけをしました。

 

「商店街ができること」の発想から生まれた専門分野との連携

平成27年に「商店街としてできることへの挑戦」というテーマを掲げました。

物を売ることを専門とする商店主とは違う「発想」を持っている人を集めようと、社協福祉協議会(以下、社協)や地域包括支援センター(以下、包括)とも連携するようになりました。

商店街の空き店舗を活用したコミュニケーションスペースで、月1回の会議を行うようになり、「宮ノサポ」という体制ができました。商店街のサポーター、包括、社協、商工会議所、枚方市、大学のボランティアサークルなどが関わっています。

 

「宮ノサポ」では、担い手をどう募集するか?共有スペースの設置場所をどうするか?そこで何をするか?といったことを話し合いました。

商店街でできることの中にあがっていた「高齢者への買い物支援」のテーマでは、「ふれあいチケット」という地域通貨のアイデアが出てきました。

「サポ」という単位のこのチケット(1サポ=1円)は、半年間の有効期限があり、商店街で使えます。半年間の期限付なら「お金」とは認定されないので金融庁への届けは不要です。

 

その他にも、サポーターと連携した取組を実施しています。

「こどもいきいき笑顔食堂」は月2回運営し、毎回50人くらいが来られます。

「ちょいサポ」という、ちょっとしたお困りごとを「ふれあいチケット」で支援する事業も展開。

さらに、手作り市や、高齢者の方を対象に週3回コーヒーとお菓子を100円でふるまい、ボランティアさんがお困りごとや各種相談行ってニーズの拾い出しやマッチングなどを行う事業も行っています。

 

商店街からの発信に、集まってきた支援の手

宮ノサポでは就労支援にも取り組んでおり、「一般社団法人ステップフォワード」と「関西外国語大学ボランティアクラブひまわり」に商店街のサポーターへの登録にご協力いただいています。

宮ノサポに関わることで得るものがあるのでは、と考えて協力をお願いしました。地域住民を中心に45名ほどの方がスタッフとして登録いただいています。

 

これまで行ってきた買い物支援の中でも、宮ノサポがあることで連携することができた1つの事例を紹介します。

ある「70歳、男性、一人暮らし、要支援1、糖尿病、脊柱管狭窄症」の方がおられました。血糖コントロールのために入院されて退院した後に、包括が関わっていたところ、買い物をした後、重いものを持ち帰るのに支援が必要なことが分かりました。包括からサポーターさんにつなぎ、月に1回程度、お米などの重いものだけを運ぶことに決まりました。サポーターさんへのお礼は「ふれあいチケット」で100サポ(100円)となりました。

 

課題やニーズをもとに、ヒト・コト・モノをつなぐ

もう一つ、平成26年から宮之阪中央商店街で取り組んできた柱の事業が「健康寿命を延ばす」という取り組みです。

商店街のお客様がだんだん高齢化し、杖をつくようになり、車いすになると、毎日来ていた方が週1回になり、月に1回に減る。

一人分の売り上げが、20分の1とか30分の1になるわけです。その人数が増えていくと商売ができなくなる。

そこで、空き店舗を使って健康づくりのイベントを行うことにしました。代表的な例が、ほぼ毎月1回行う健康測定会。3種類の健康測定をして、健康寿命を延ばしていく意識を高めようという取組です。

 

つまり、「ヒト」「コト」「モノ(ハコ)」を大切にしていかなければならないということです。

「ヒト」はサポーター、管理人、宮ノサポ構成団体。

「コト」は何をやるか。こども食堂や各種イベント、支援活動などです。

「モノ(ハコ)」は、宮ノサポの拠点や健康測定会などの会場になるイズミヤの空きスペース。

 

私が主に行うのは、それらをつなぐこと。包括などの話を聞いて課題やニーズがあれば、それを解決できる人につなぐということを生活支援コーディネーターとしてやっています。

 

あるものと人をつないで支援につなげる、協議体の役割

枚方市地域包括支援センター松徳会 所長 浅田 京子氏

 

宮ノサポという拠点を活用して地域の困りごとを解決したり、イベントを実施してきたことを、協議体に活かしてはどうかという話が出たことがきっかけで、永濱さんに生活支援コーディネーターを依頼しました。

 

平成30年に「明倫校区元気づくり・地域づくり会議」を始めました。私が意識したのは、新しいものを作るのではなく、あるものと人をつないで、それを最大限に活用しようということ。全く新しいものを作っても、職員が疲弊すると困るので、あるものを活用したいと考えました。

 

第1回目の会議では、校区コミュニティの方、校区福祉委員、民生委員、社会福祉協議会、そして永濱さんに集まっていただきました。

最初に行ったのは、地域と商店街の今ある資源の書き出し。

区民体育祭、夏祭り、しめ縄づくり、もちつき大会、商店街が行うイベント、そして子どもと一緒に高齢者宅に蒸しパンを配る催しなどについて話し合いました。書き出した内容を共有し、このニーズにマッチングできるものはなんだろう、などと話し合いながら会議を進めました。

 

あるものをつなぐことで、新しい試みが次々と生まれる

明倫校区は坂道が多く、坂の上と下で活動が分断されてしまう課題がありました。

坂の下には宮ノサポがあるのですが、上の方の拠点も必要ということで永濱さんに紹介いただいたスーパーの2階で「コミュニケーション麻雀」を開催。地域への告知は回覧板と、一軒一軒チラシを配布しました。開催当日、多くの高齢者に来場いただき、楽しんでいただいていました。

また、URの高齢者相談員さんと一緒にURの団地全戸を訪問してチラシを配り、「ノルディックウォーキング講座」を行いました。

「名曲ギター合唱」は、昨年2月からスタート。これまで文化系の催しがなかったので、ギターを弾ける方と知り合ったのをきっかけに、ギター合唱も楽しいのではと考えて企画しました。

大変盛り上がり、「次はいつ?」という声もありました。

毎月恒例になっていますが、課題もありました。

ギターを弾きに来られる方に謝礼をお渡ししたいことと、宮ノサポの場所を使う会場費も必要なことです。

包括で主催するイベントで参加者からお金をとって良いのか悩み、永濱さんに相談して、主催を商店街にして、包括は共催という形にしました。

そして宮ノサポカフェの日に行うことにし、サポーターたちに当日のコーヒー出しなどを手伝ってもらいながら実施。一人コーヒー付き200円で参加でき、約30名がいつも参加されています。

 

サポーターの意見を取り入れて実行する

先日、明倫校区元気づくり・地域づくり会議について、昨年住民アンケートを実施しました。初めての試みでしたが、若い人から高齢者まで、幅広い声を集めたいと考え、2000枚ほど配布して、194枚を回収できました。

この中から、商店街ができることは何か、地域でできることは何か、包括でできることは何か、あるものを見直して活用できるように考えることを繰り返し検討しました。会議では、参加者が言ったことや、つぶやきなどを全部書き出しました。

宮ノサポと、元気づくり・地域づくり会議は、両方とも「場」です。

宮ノサポは、アイデア出しの場。「こんなことをしたい」という声を、コーディネーターの永濱さんが聞き取って、「こんなニーズがあるけど、どうかな」と、元気づくり・地域づくり会議の「場」に持ち込んでくる。

それを構成員のみなさんと話しながら、「その困り事は、ここで解決できるんじゃない?」とマッチングしたり、それをやるために実行していきます。

サポーターにとっても、自分が出したアイデアが実現されることは、うれしいことで、モチベーションアップにもつながると考えています。

 

大切なことは「入口で揉めない、出口を統一する」「ゆる〜く、長〜く、面白く」

心がけているのは、スピード感など商売人の良いところを活かし、「入口でもめない、出口を統一させる」ということです。

“入口でもめない”という部分では、永濱さんは何を相談しても「面白い」と否定しません。

一方の包括が心がけているのは、「公的な機関(行政、包括)ができないことは商業の力を借りる」「違いを認め合う」「地域が長年続けてきた活動を尊重する」ということ。そして「何色にも染まる覚悟」です。

 

 

この活動は、「ゆる~く、長~く、面白く」ということが大切だと感じています。自分が楽しまないと続かないし、相手にも伝わりません。「面白く続けること」を大切に、これからもみなさんと一緒に取り組んでいきたいと思います。

 

 

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