ええまちづくりのええ話

大阪府内の地域団体の活動事例や、行政職員や生活支援コーディネーターの研修の発表も広く掲載。
団体の活動の参考にしたり、市町村の仕組みづくりに役立つ記事がたくさんです。

平野区流の第1層・第2層の役割と連携について/2021年度 生活支援コーディネーター養成研修 大阪市平野区事例紹介

2022年5月10日

2022年1月24日に、「生活支援コーディネーター養成研修」(全体研修)をオンライン開催しました。

大阪市平野区の事例として、社会福祉法人大阪市平野区社会福祉協議会 第1層生活支援コーディネーター 井上佳奈さんと、第2層生活支援コーディネーター 村上千富美さんに、第1層と第2層の役割と連携について、活動内容とともにお話しいただきました。

事例共有後に、公益財団法人さわやか福祉財団 ふれあい推進事業 新地域支援事業の担当リーダー 目﨑智恵子さんより、事例のポイント解説が行われました。

現在の生活支援体制整備の状況と、平野区の特長について

井上さん:
平野区は大阪市の南に位置し、人口192,152人で大阪市内一位。特徴として公営住宅が多く、高齢化率29.3%の地域です。

平成28年9月から第1層生活支援コーディネーター(平野区では生活支援コーディネーターのことを「ささえ愛支援員」と呼んでいます)が配置されました。第2層生活支援コーディネーターが配置されたのは令和3年4月です。平野区には5つある日常生活圏域ごとに1名配置され、5名の第2層生活支援コーディネーターと一緒に活動しています。第1層と第2層は区社協の同じフロアで勤務しています。

 

令和2年4月に第1層生活支援コーディネーターに着任した際の前任者からの引継ぎにはポイントがありました。「常に引継ぎを意識しながら仕事をすること」です。
前任者はこれまでの経過記録・文書を残しており、「いつ、どこで、だれが、どのようなタイミングで始めたのか、誰がキーパーソンなのか」が記録されているファイルがありました。
一方で思いや熱意については文章で記載しても伝わりにくく引き継ぎされない可能性があるからこそ「自分の思いでやったらええよ」と前任者からエールをもらいました。
引き継いですぐの頃は前任者に地域の方から問い合わせが入ってきて頼られている様子をみて、信頼関係を築くことが大事だと感じました。

 

活動例にみる第1層と第2層の連携

(1)瓜破北地域たすけあい活動の会

瓜破北地域は、人口 3,217 人、高齢化率 55.9%、高齢独居率 37.1%、公営住宅(府営・市営)のみで成り立っている地域です。

高齢化率の高さに加えて、2017年より住宅建て替えがはじまり、4階から14階へと高層になったことからつながりが希薄に。地域の会長や住民さんが「どないかせなあかん!」と立ち上がりました。その思いを受けて、身近な困りごとの把握、有償ボランティア活動で助け合いの仕組みづくりを進めました。目的としては、住民同士で顔なじみの関係を作ることです。活動は3年間で87件でした。

 

生活支援コーディネーターの役割・連携について、令和2年までは第1層が担当。令和3年からは、第2層をさらに主担当・副担当に分担し、連携しています。さらに、「瓜破北地域福祉活動コーディネーター」との連携を必須としています。

 

村上さん:
地域福祉活動コーディネーターは、平野区独自の仕組みで、区社協職員として各地域に合計22 名が配置されています。
地域の最前線で住民と接していただきながら、アンテナ役、パイプ役(つなぎ役)となる第3層のような、なくてはならない存在です。困りごとの相談や支援の必要な人への見守り体制を築くために、各種団体や専門職、ボランティアと連携して地域福祉活動の推進をはかっています。

 

これまで第1層の井上さんが担当していた瓜破北たすけあい活動の会支援をはじめとした瓜破北地域支援の取組を、第2層が引き継ぎはじめたのは令和3年9月から。経過記録の資料をもとにさまざまなエピソードを聞きました。
たすけあい活動のことだけでなく、地域のあらまし、平成28年から平野区社協の先輩方がどのように地域に関わってきたかを学びました。
副担当が決まってからは、第2層だけで地域に向かうことも増えていきました。

 

(2)男性の居場所グループ「The男組」を平野全域に広めたい…第2層との連携

井上さん:
居場所づくりプロジェクトチーム会議から発足した男性の居場所グループ「The男組」は、2021年のいきがい・助け合いサミットでも紹介され、全国から問い合わせいただいています。

 

この活動の課題を第1層レベルと第2層レベルに分けて取り組んでいます。

第1層レベルでは、「自主運営化」と「平野区全域への拡大」が課題です。

自主運営については「The男組」との対話を通じて、区社協としての位置づけをとことん話し合いました。

また、20名程度の参加者からなかなか地域に広がらない状況の中、平野区全域に広げていくため、生活支援コーディネーターだけでなく協議体メンバーとの連携、居場所づくりプロジェクトチームとの議論をしながら進めてきました。

 

村上さん:
第2層レベルでは「関係づくり・信頼づくり」が課題でした。

「The男組」に関わりはじめた時、「The男組」の活動はすでに3年目。20名ほどの皆さんたちとの関係づくりや信頼づくりをどこからはじめたらいいのか戸惑いましたが、会話を重ね丁寧に一人ひとりの考えを知っていくこと、小さいことでも会話から気づいたことは生活支援コーディネーター全体で共有することを心がけました。

知り合っていくと距離感が難しくなるのですが、自主運営という最終目的を見失わないように、生活支援コーディネーター以外の方から客観的アドバイスもいただきながら進めています。

井上さん:
これまで「The男組」は第1層レベルで支援をしていましたが、なかなか活動が広がらないことが課題でした。第2層が入ることによって、さまざまな地域で活動が芽生えつつあります。

 

 

(3)広報紙「ささえあい通信」から見る活動と工夫

井上さん:

令和2年11月創刊、発行部数1500部の広報紙は、生活支援コーディネーターの見える化・活動の資料化、地域住民への関係づくりを目的としています。令和3年5月からは第2層に引き継ぎ、担当制で記事作成しています。

 

村上さん:

広報誌は地域住民に対して、私たちのことを知ってもらうための名刺以上の存在にもなりえると考えています。掲載させていただいた地域住民さんが喜んでくださるなど反響もあり、地域活動のすばらしさを広げていくことを願って「ヒラノタカラビト」というコーナーを新設しました。

記事内容の伝わりやすさ・わかりやすさを追求することで、伝え方が鍛えられています。

 

(4)活動をより活性化する協議体の工夫と連携

井上さん:
平成29年3月に第1層協議体が発足しました。「年2回開催では情報共有で終わってしまう」ということで、テーマごとに特化した実働部隊となるプロジェクトチーム会議を月1回開催することにしました。そこからThe男組、瓜破北たすけあい活動の会が発足しました。
第2層協議体については令和4年1月に発足、話し合いの場として、生活支援コーディネーターや協議体の理解、圏域ごとのインフォーマルの情報誌作成を検討しています。
第1層協議体の来年度目標として、改めてアンケート調査を予定しています。その結果を第2層協議体にも共有することで、それぞれの圏域で活動が展開されていくよう連携していきます。

村上さん:
第2層協議体は、現在、第一回目の協議体がすべての圏域で実施された段階です。
日々地域の課題に直面されている会長からは、「まず地域の実情を知ってほしい」との意見がありました。憩の家の狭さ、建て替え基準の厳しさの悩み、男の料理教室を再開したいなどのお声が出ました。生活支援コーディネーターには、こうした声を実りあるものにするためにどうつなげていくかの役割があるように感じました。

 

◆連携の方法・範囲は異なっても第1層・第2層の目的は同じ!~思いと今後~

井上さん:
第1層生活支援コーディネーターとして今まで一人だったところから、仲間が増えたことで、より細やかなサービス提供、拡充ができるのでは、と感じています。
区社協に生活支援コーディネーターが配置されているメリットも感じています。地域支援担当はもちろん、見守り相談室や、地域包括支援センター、生活困窮との自立支援事業との個別支援とも連携できています。
第2層生活支援コーディネーターについては主担当、副担当を設けていることで、他圏域とより理解し合い、連携できると考えています。
第2層が5名配置、第1層も含めて6人のチームなので、共有がおろそかにならないよう、こまめにミーティングを実施しています。第2層への引継ぎを行いながら活動を進めていますが、今後は、第1層、第2層の役割について見直していく必要があると感じているところです。

村上さん:
第2層は「まずは足元から」という気持ちでいます。自分・チーム・区社協・地域への連携を大切に進めたいところです。担当制は、複数の視点が気づきになり、それぞれの経験、知識、感性を活かして助け合うことができるメリットを感じています。
個人的課題として、この仕事はいろんな能力が必要になるため、苦手と思われることにもチャレンジしていかなければと感じています。地域の声を大切につないでいくこと、圏域全体をイメージして取り組むことを心がけたいです。

井上さん:
さいごに、市や区ごとに連携の方法は異なっても第1層、第2層の目的は同じ。第1層は区全体、第2層はそれぞれの圏域という支援レベルをチーム内で統一していくことが大事です。
第2層が入ったことで、協議体やワーキングのあり方も考えていく必要がありますが、みんなで見直しできるのがメリットです。いつ担当変更があっても次に引継ぎできるよう、思いだけでなく、資料をバージョンアップしながら形に残していきます。平野区全体で支え合い活動を広げていけるよう6人のチームで取り組んでいきたいと思います。

 

参加者からの質疑応答

Q:コロナ禍で生活支援コーディネーターになり、地域に行く機会が減ってしまっていることや話し合いをしたくても難色を示されることがあります。地域の温度の上げ方のコツがあれば教えていただきたいです。

 

A:(井上さん)地域でも温度差はあります。活動をストップした地域もありますが、一方で、例えば瓜破北にオンライン会議を提案したら「よくわからないけどやってもいいよ」と言ってくれて、オンラインの活用もできました。

他にも地域での活動でなくても、2〜3人くらいの少人数で場だけでも設けませんか?と呼びかけるなど少しずつほぐしていきました。それも、信頼関係のあるところから始めていったのが実態です。

 

Q:第1層協議体にローソンが入っているのが特徴的だと感じました。経緯があれば教えてください。

A:(井上さん)協議体発足当初から入っていただいていると聞いています。ローソン側から、地域貢献できますよと区役所に申し出ていただいたようです。

平野区には「ケアローソン」という、店内に地域コミュニティスペースを設けている店舗があることから、そのスペースを活用されることも目的に参加していただいています。

 

公益財団法人さわやか福祉財団 ふれあい推進事業
新地域支援事業担当リーダー 目﨑智恵子さんより ポイント解説

いろんな情報を持っている人同士が気づき、話し合い、学び合うことが大事というお話がありましたが、まさにその機能が協議体の役割でもあります。

そして生活支援コーディネーターが連携する大切なポイントとして、住民の声を大切にチームで取り組んでいくというところです。

そして、前任者からの引継ぎについても皆さんの地域でも活かせるポイントがありました。これまでの経過記録「いつ、どこで、だれが、どのようなタイミングで始めたのか、誰がキーパーソンなのか」を文章で残し、思いや熱意は伝わりづらいから「自分の思いでやったらええよ」と前任者からエールをもらい、信頼関係を気づくことが大切だと感じ活動してきたところです。

 

第1層協議体の体制づくりのポイントとしては、もともと年2回情報共有のみ会議だったものを、実践部隊となるプロジェクトチーム会議を作り、月1回開催する体制を作っているところです。会議の開催頻度や、連携体制を見直しながら活動を創出しているところは素晴らしいです。

市町村の実情に合わせて、協議体をより効果的に機能させ、継続する体制をつくるために各市町村独自の体制をつくることも大切です。

 

もうひとつ大切なポイントは、第1層のとして、活動のプロセスやノウハウの見える化、住民の関係づくりを目的に広報誌を作成し共有しているところも第1層第2層SCが協力しながら行っているところです。

今後、第2層の地域情報を第1層で共有していくことでまた良い循環ができると思います。ぜひみなさんの市や町でも取り入れていただけたらと思います。

 

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