「地域資源を抽出し、点と点をつなぐように」― 第2層生活支援コーディネーターを専従化した経緯/2023年度 生活支援体制整備事業に係る充実強化研修 守口市事例紹介
2024年4月5日
2024年1月24日に、「生活支援体制整備事業に係る充実強化研修」を大阪市内で開催しました。
研修プログラムでは、守口市における協議体と生活支援コーディネーターのこれまでの歩みについて、初めに第1層生活支援コーディネーターで守口市高齢介護課の近藤由香理さん、次に第2層生活支援コーディネーターの水野奈津美さん、天野敏明さんが事例発表を行いました。
守口市について
守⼝市は、昭和21(1946)年11⽉に市制が施行されました。かつての⾼度経済成⻑期には産業都市として発展し、インフラ整備、さまざまな市⺠サービス、学校や多数の公共施設の建設などをいち早く行った大阪の「近代都市」でした。
しかし産業構造の転換や⼯場の海外移転、急速に進んだ⼈⼝減少や少⼦⾼齢化、近年の災害リスクの⾼まりなど、市を取り巻く社会経済状況は⼤きく変化しています。
守口市は令和5年12月1日現在で全人口が14万1231人、65歳以上の人口が4万172人で、高齢化率は28.4%です。令和5年4月月報での要支援認定者数は2034人という状況です。
これまでの協議体の設置状況の概要
守口市では平成27年(2015年)度に協議体を立ち上げました。平成27年から平成30年(2018年)度まで体制に変わりはなく、第1層は社会福祉協議会に委託し、生活支援コーディネーターは兼務で1名の配置、協議体委員は14名で、各機関の長が出席しました。第2層は未設置でした。
協議体での主な検討内容は、新しい総合事業への意見や情報交換となっており、アンケート調査や各圏域のケア会議から出てきた課題に対して、市の施策を行ったり、資源の把握や整理、共有を行っていました。
しかし第1層生活支援コーディネーターと高齢介護課の連携に課題があったため、令和元年(2019年)度より、第1層生活支援コーディネーターを直営(会計年度職員)とし、協議体委員を9名へ減員しました。
また第2層生活支援コーディネーターを新たに配置しました。第2層は、守口市内を6つの圏域に分けた第1から第6までの地域包括支援センターに委託し、その職員が第2層生活支援コーディネーターを兼務していました。
令和2年(2020年)度にはコロナ禍で協議体も活動休止となる状況が続きました。第1層生活支援コーディネーターは会計年度職員での活動に限界があり、令和3年(2021年)度より正規職員に変更されました。また現在、第2層生活支援コーディネーターは、6つの圏域にそれぞれ1人ずつ、合計6人配置していたのを、2つの広い圏域に分け直して、それぞれ1人が担当する、専従2人体制となっています。
これまでの経緯を下の表にまとめました。
このように守口市では体制が変わるごとに、関係性が希薄になったり、1から関係作りをやり直すことになったり、事業が止まってしまうというデメリットもありました。体制整備の課題への取り組みは、今も続いているという状況です。
平成27年度〜平成30年度の生活支援コーディネーターへの振り返りインタビュー
ここでは平成27年度〜平成30年度まで、第1層生活支援コーディネーターや協議体運営に関わった、協議体立ち上げ当時の担当者(社協の職員さん)2人に振り返りインタビューとしてお話を伺い、コメントの一部をまとめました。
【第1層生活支援コーディネーター】委託:守口市社会福祉協議会(兼務)
「第1層生活支援コーディネーターとして始めは何をやったらよいかわからなかった」
「ゼロから創り上げることは正直難しかった」
「担当期間の後半から、既存のサービス事業所とのつながりを深め、現在も社協として関係維持し相互のイベントに協力している」
【第1層協議体運営担当】運営のみ:高齢介護課(正職)
「総合事業・生活支援コーディネーター・協議体、全てわからない中、原理原則を進めていった」
「課題と既存の施策や資源の見える化へ整理ができた」
「当時の協議体メンバーが管理者ばかりでガチガチになっていたので、いろんな現場の意見を出し合いたいと考えていた」
「協議体メンバーの世代を若くし、現場職員に入ってもらって、意見交換ができる場へと変えた」
令和5年度からの新体制では兼務だった第2層生活支援コーディネーターを専従化
令和元年度からは第2層が「守口市第1〜6地域包括支援センター」への委託(兼務)として立ち上がりましたが、課題もあり、令和5年度から第2層生活支援コーディネーターは専従2名となりました。ここでは令和元年度〜令和4年度の第1層協議体運営担当者からのコメントを紹介します。
【第1層協議体運営担当】直営:高齢介護課(R1.2:会計年度職 R3.4:正職)
「協議体が気軽な意見交換の場となったが、コロナ禍になり休止してしまった。ただ第2層生活支援コーディネーターは地域包括業務として各圏域でそれぞれの活動を継続しつつ、資源の再把握を実施した」
「第1層生活支援コーディネーターが正職員となり、担当課であることから業務が広くできた反面、フットワークが重くなってしまった」
「第2層生活支援コーディネーターの地域包括業務は兼務であることから、生活支援コーディネーターをメインの業務に据えられないという課題があった」
私は第1層生活支援コーディネーターとして、令和5年度から第2層生活支援コーディネーター2人に地域資源システムアドバイザー1人を加えて、月1回の定例会議を行っています。そこでいただいたアドバイスにより、目標を設定して、まずは地域へ足を運ぶようになりました。
地域にはまるで宝石のような、素敵な活動がたくさんあると感じました。地域ケア会議では「資源が知られていない」という意見を伺うこともあります。今の思いは「来年度はもっとみんなに知らせなきゃ」というのが、次の目標です。
また総合事業の入口の整備とともに出口への働きかけの必要性を市の担当課からアピールして、第2層生活支援コーディネーターの体制を専従2名から、3名体制へとするための予算を組んでもらい、体制を徐々に整えつつある状況です。
今後はまた点と点を線で結び縁を描くところから始めていきたいと思います。
地域包括支援センターの業務とは
まず地域包括支援センターではどんな活動をしているのかを簡単にご説明します。
地域包括支援センターでは保健師、主任ケアマネジャー、社会福祉士の3職種が、地域の高齢者の医療・介護・福祉に関する相談窓口になっています。介護保険、健康、消費生活、虐待などの相談支援、介護予防教室や、通いの場など、さまざまな機関と連携をとり高齢者を支えています。
地域包括支援センターが生活支援コーディネーターの業務を委託される理由は、こうした地域支援のかたちが生活支援コーディネーターの業務と重なっているからだと思います。
令和元年当時、私は守口市第6地域包括支援センターに所属しており兼務の第2層生活支援コーディネーターを担当していました。当時の第1層生活支援コーディネーターから「AYAMU地域資源管理システム」を使って情報を整理していきたいという提案があり、私たちも地域資源集を作ることを始めていきました。
地域資源探しのために、地図でピックアップした商業施設や店舗、病院、バス停などを回り、「よりローカルな情報を入れたい」という思いから、町会行事を把握するため、地域関係者へ協力依頼の相談もしました。
しかし、令和2年に入りコロナ禍となったため、介護予防教室や体操教室などすべて中止となってしまいました。店舗なども地域資源探しどころではないという雰囲気になっていて、私はひたすらネットで「何ができるか」と考え、事例探しをする日々が続きました。
その後、屋外でできる運動としてスロージョギングが始まりました。スロージョギングは現在も続いています。そのほか、アンケートでいただいた中からニーズを把握して、手芸教室、スマホ操作支援、オンライン教室などを開催していきました。
令和4年ごろになると感染対策をしながら活動を徐々に再開していきました。担当地域のニーズと使える場所をマッチングして、例えばコロナで閉鎖していたカラオケ喫茶で麻雀教室を開いたり、ボランティアグループによる歌体操を、閉鎖していたグループホーム内のスペースを使って開催したり、リズム体操を屋外で工夫しながら行ったりしました。
圏域内のケア会議はオンラインと対面のハイブリッドで、そこで地域課題を把握しつつ、第2層生活支援コーディネーターとして協議体と兼ねて開催していました。
地域包括支援センター業務と生活支援コーディネーターの兼務に感じた課題
各地域包括支援センターでの温度差
このような状況で活動を続けていたのですが、振り返ってみると他の5つの地域包括支援センターそれぞれに温度差があったと思います。
「コロナで何も活動できませんでした」という報告や「忙しくて手が回らない」という現場の声など、新しく通いの場を作れるような余裕がなかった地域包括支援センターもありました。
どうしても地域包括支援センターでの相談業務が中心となり、また介護予防教室や通いの場など地域包括支援センターとしての活動が重視され優先されるために、生活支援コーディネーターの活動は「あくまでも兼務」感が拭えなかったと思います。
第1層の動きがわからないため、第2層は圏域内の活動に限られてしまう
各地域の第2層は比較的自由に動いてはいたのですが、一方で第1層も独自の活動をしていて第2層からは状況がわからない、第1層と各地域の第2層で全体会議をして共有できればと考えたのですが、開催が難しい状態もありました。
令和5年度より第2層生活支援コーディネーターが専従に
今年度から第2層生活支援コーディネーターが専従になり、専従2名で全圏域をカバーすることになりました。市内北部と南部でそれぞれ1人が受け持ち、私は守口市南部を担当しています。これまでとの違いは、動ける範囲が広がったことです。1つの地域包括支援センターだけではできなかった、社協・シルバー人材センター・老人クラブなどとのつながりを通じて多くの地域資源の情報を集めています。
通いの場、グラウンドゴルフ、コミュニティーセンターなどからも情報を得て、地域に出て顔を出すことで雰囲気がわかりますし、住民の皆さんが温かく迎えてくださり、地域の声が聞けるという嬉しい実感があります。
またイベントや教室の情報を得たら必ず顔を出しています。情報を教えてもらった方にまた会うと、「また来てくれた」となりますし、別の場所で会った方に「ここにも来られているんですね」と言われて顔を知ってもらうことで、信頼関係も築いていけると思います。
こうした地域の声に時間をかけて耳を傾けることで課題が見つかってくることもあります。現在、それらの課題や情報の把握に努めています。今ある資源と資源をつなげること、また住民の声を伺った上で、必要とあれば新しい取り組みも行っていきたいと考えています。
もう一度地域を回り、地域資源を洗い直す
令和5年度から生活支援コーディネーターが専従2名体制となり、先ほど話した水野さんが守口市の南部を担当し、私は北部を担当しています。
コロナ禍と、昨年度まで兼務だったこともあり、十分に地域を回ってお話を聞けていなかったのではないかという思いから、水野さんとそれぞれひとつひとつ地域資源の洗い直しをしています。
特に屋外の運動系以外の趣味活動や、地域ボランティア団体、シルバー人材センター、老人クラブといった団体とはつながれていなかったため、こちらからアプローチしていきました。
こうした団体や個人へは、行政や地域包括支援センターを通じて、あるいは地域の活動でよく名前を知られている方々を通じて紹介していただき、訪問して話を聞くということになります。
「教えていただけますか?」と聞くとほとんど嫌な顔はされません。生活支援コーディネーターの話を聞いてもらうのではなく、訪問先での直近のイベントや活動の情報を聞き出して、「ぜひ見に行かせていただいていいですか?」と聞くと快く受けてくださいます。
行った時に必ず次のアポイントメントを取ると、短期間で接触頻度も増え、非常にやりやすくなると思います。専従になると、代表者だけでなくひとりひとりの参加者の方ともお話しできる機会が持てるようになりました。これは生活支援コーディネーター兼務時代にはできなかったことです。参加者の方から、まだこちらが把握していなかった別の活動、通いの場の情報をいただいて、芋づる式に新しい資源が見つかることもあります。
シルバー人材センターと老人クラブについて
ここでは、地域での取り組みにおいて重要な存在となっている、シルバー人材センターと老人クラブについてご紹介したいと思います。
まず、守口市シルバー人材センターについてです。
守口市は高齢者人口が約4万人です。シルバー人材センターは会員数約1200名で、男女比は6:4となっています。よく「男性は閉じこもりがち」と言われますので意外かもしれませんが男性会員のほうが多いです。
シルバー人材センターでは就業を通じて、「健康を保持し、自らの生きがいの充実や、地域社会に貢献する」ことを目的としており、「自主・自立、共働・共助」の理念が基本にあるということです。
次に守口市老人クラブ連合会です。かなり大きな組織で、クラブ数が89、会員数は4600人ということです。80歳以上が8割となっており、「70歳代の人材が欲しい」ということをどこでもよく聞きました。
グラウンドゴルフ大会、ペタンク大会などでは、記録や審判など役員として男性が活躍する場が多いなと感じます。
老人クラブの活動目標の中心は、介護予防活動、在宅高齢者やその家族の支援、住みよいまちづくりを目指すボランティア活動となっており、まさに生活支援体制整備事業のど真ん中を行っている感じがします。
老人クラブの活動内容例を見てみますと、運動や趣味活動のほか、「体力測定会」を開催しているということでした。この体力測定会は、特に専門職が入っているわけではない測定会ということで、こういう場に他の機関とつながってあげられるのでは?と感じました。
また「集いの場づくり」や「日常生活の困りごと支援(電球交換、ゴミ出し、買い物等)」という項目、その他「高齢者や地域から期待される活動への支援」など、これらも生活支援サービスと同じものです。
そして活動例にある「専門職・関係機関との連携」という項目では、民生委員、行政、社協、地域包括支援センターと連携しましょう、ということが書かれてあり、こうした機関との連携のサポートについては、生活支援コーディネーターが得意としている分野であると感じます。
先日、老人クラブの89のクラブの会長さんが一堂に会するという新年会があり、生活支援コーディネーターも招待していただきました。歩行器をお使いの方も会長として活躍されている姿を見て、私も元気をもらいました。
介護予防や地域活動、それらの活動頻度、運動強度はさまざまなレベルで行われています。たくさんの活動の中から、高齢者の方がどれか好きなもの、自分に合う活動が見つかるのでは、と感じます。
今後生活支援コーディネーターとしては、それぞれの地域の活動の一覧を作成して、地域の皆さんに提示して、参加に結びつけていけるような活動をしていけたらなと考えております。