ええまちづくりのええ話

大阪府内の地域団体の活動事例や、行政職員や生活支援コーディネーターの研修の発表も広く掲載。
団体の活動の参考にしたり、市町村の仕組みづくりに役立つ記事がたくさんです。

移動・買い物支援の実践例と、第1層・第2層レベルからのニーズの掘り起こし方 ー 住民の声で作るまちの未来/2024年度 生活支援体制整備事業に係る充実強化研修 大阪狭山市事例紹介

2025年5月24日

2025年131日に、「生活支援体制整備事業に係る充実強化研修」を大阪市内で開催しました。
研修プログラムでは、大阪狭山市における生活支援体制整備事業の取り組みについて、大阪狭山市社会福祉協議会から、赤瀬幸平さん(第1層生活支援コーディネーター)と、阪本裕美子さん(地区担当)にお話しいただきました。

赤瀬幸平さん(大阪狭山市社会福祉協議会 第1層生活支援コーディネーター)

大阪狭山市は、大阪府の南部に位置し、豊かな自然と歴史が調和するまちです。現在では、大阪市内への交通アクセスも良く、ベッドタウンとしても発展しています。
現在の人口は57,844人で、その内訳は年少人口が7,898人、生産年齢人口が33,615人、高齢人口が16,331人です。

高齢者化率は約28%となっており、生活圏域によっては40%を超える地域もあります。このような高齢化が進む人口構成を背景に、生活支援体制整備事業に取り組んでいます。

現在の大阪狭山市の生活支援体制整備の状況について

大阪狭山市では第2層の協議体や生活支援コーディネーターの配置はありません。
私が第1層のコーディネーターとしての役割に加え、第2層に相当する一部の業務も兼務しています。
生活支援コーディネーターの役割として、私が特に重視してきた活動は「資源開発」、「地域ネットワークの構築」、「ニーズと取り組みのマッチング」です。

例えば資源開発の取り組みでは、社会資源の調査やボランティア活動のサポート、地域ネットワークの構築では自治会などの会議に参加し、地域包括支援センター、社会福祉施設連絡会、コミュニティ協議会などとの連携、つながりづくりなどを行ってきました。

さらに最も大切にしてきたのが、地域の集いの場(サロン活動)への参加です。いきいき百歳体操などに積極的に足を運び、地域の方々を巻き込むための研修会も開催してきました。

こうした取り組みを経て、生活支援体制を整備していくために、協議体を活用した話し合いを進めてきました。

協議体の立ち上げと運営:顔が見える関係性を築く

現在、大阪狭山市では第1層協議体を設置しています。
協議体の構成メンバーは、支え合い活動を実践している、または関心のある団体や機関です。市や社会福祉協議会で声かけを行い、参画を呼びかけました。
私たちは、「顔の見える、話し合える関係」を何よりも大切にしたいと考え、平成2812月に「地域づくり意見交換会」を設置し、参画団体の相互理解を深めるため、各団体の活動発表の機会を設け、互いの活動を知ることから始めました。

そして、平成294月には、「大阪狭山市介護予防・日常生活支援総合事業に係る地域づくり協議体」を立ち上げました。

協議体の特色:アイスブレイクと住民の生の声が地域を知る鍵

(第1層協議体の活動風景)

協議体の活動初期の頃の会議では、広い会議室に「ロ」の字型に机を並べて行っていたので、どうしても硬い雰囲気になりがちでした。
しかし、現在は写真右上や左下のように、通常の会議でもグループワークを取り入れ、誰もが意見を言いやすい、和やかな雰囲気づくりを心掛けています。

写真右下のように、協議体では毎回、必ず地域の方に活動発表をお願いしています。活動内容や活動に携わる人を具体的に知ることができる、大変貴重な機会となっています。

そして写真左上での「アイスブレイク」、これも欠かせません。場を和ませ、参加者同士の距離を縮める効果は絶大です。

協議体の機能を活用し、有機的につなぎたい

協議体の目的は、生活支援コーディネーターの業務を支援し、多様な主体間の情報共有、連携、協働による体制整備を推進することです。

協議体には、5つの役割があります。
・生活支援コーディネーターの組織的な補完
・地域ニーズ、既存の地域資源に係る情報の把握と可視化の推進(実態調査の実施や地域資源マップの作成等)
・企画、立案、方針策定を行う場(生活支援・介護予防サービスの担い手養成に係る企画等を含む)
・地域づくりにおける意識の統一を図る場
・情報交換の場、働きかけの場等
地域支援事業実施要綱[最終改正:令和6年8月5日(老発0805第3号):改正後全文] 40ページより一部引用。

私は、生活支援コーディネーターとして一人で活動する中で、協議体の機能を、より有機的に活用できないかと考えました。そして、生活支援整備事業の体制を整えるために、市と社会福祉協議会で検討を重ね、次の図のような体制を構築しました。

地区福祉委員会:第2層協議体モデルのチャレンジと可能性

地区福祉委員会は、福祉のまちづくりを推進するための住民参加による自主的な組織です。概ね小学校区を範囲とし、大阪狭山市には7つの小学校区に9つの地区福祉委員会が設置されています。

地区福祉委員会は、本来、生活支援を行う組織ではありません。そこで、社会福祉協議会の職員の力を借りて地区福祉委員会を第2層として機能させることができないかと考えました。
地区福祉委員会の構成メンバーは、自治会、老人クラブ、関係機関の代表、民生委員・児童委員などです。

地域福祉の推進に向けた活動に取り組んでおり、活動する住民の方々を福祉委員と呼び、福祉委員は、住民の困りごとを見守り、声かけ、相談対応を行いながら、地域の課題を発見するアンテナ役です。この機能を、生活支援コーディネーターの活動と有機的に結びつけることができればと考えました。

地区福祉委員会担当者の役割と第2層モデル

さらに、大阪狭山市では、地区福祉委員会に社会福祉協議会の職員(地区担当)が、7小学校区9地区に7人が配置されています。

地区担当は、会議の開催、事業運営、住民の困りごとの相談など、さまざまな活動をサポートしており、地域との日常的な関わりを通じて、地域の情報を最も把握している存在です。私たちは、地区担当の機能を活用することで、第2層の機能を補完できると考えました。

地区福祉委員会の実践活動:住民の自発性が育む支援

地区福祉委員会は、高齢者に関わる問題だけでなく、地域のさまざまな課題を取り上げています。多様な課題に対応できるからこそ、生活支援につなげていける可能性があると考えています。

地区福祉委員会の活動例をご紹介します。
ある地区では、地域の高齢化に対してできることを考えるために、ケアマネジャーと地区の福祉委員の意見交換会を実施しました(座談会形式で話し合い)。

別の地区では、地域包括ケアシステム推進条例についての勉強会を開催したことで、地域の顔の見える関係づくりの推進をしようと展開することになり、世代間交流事業の実施につながりました。

住民が計画し、地域のために考え行動することで、地域が変わっていく様子を、担当職員がそばで支えています。

1層と第2層の機能を見据えた体制づくりに向けて

改めて体制を整理すると、大阪狭山市では、第1層の圏域に生活支援コーディネーターを配置し、9つの地区福祉委員会を「地域の話し合いの場」として、第2層協議体的な機能を持たせたいと考えています。そして、第2層生活支援コーディネーターの機能を、地区担当者が担うといった体制を構想しています。

現在の第1層協議体には、17団体が参画しています。

当初は18団体でしたが、大阪狭山市でも、地域で活動していた婦人会が解散しました。これは、地域にとって大きな痛手です。地域活動の担い手が減少することは、機能低下に直結します。だからこそ、地区福祉委員会をはじめ、地域で活動している団体を、より一層巻き込んでいく必要があります。

現在、モデル地区として、3つの圏域で「地域の話し合いの場」が活動しています。中学校区という単位で、より密接な活動を展開できると考えています。

さらに、私たちは、全体で話し合うべきことと、小単位で話し合うべきことを整理し、より効率的に企画を進めるためワーキンググループを設置しています。ワーキンググループでは、これまでに地域資源マップの作成などを行いました。

「協議体に来ることが楽しい」そんな活動の場づくりを目指したい

私は、生活支援コーディネーターとして活動する中で、地域に目を向けることの大切さを痛感しました。
そして、最も頼りになったのは、地域の住民の皆さんでした。「一緒にやろう」「何か一緒に考えてもいいよ」と、支えてくれる方がたくさんいました。

協議体に来ることが楽しいと言ってくれる方もいます。そのような雰囲気を作ることができた時、私はこの仕事のやりがいを感じます。
地区福祉委員会に関しても、来て楽しい、一緒に考えようと思えるような、そんな会議体、雰囲気づくりを、これからもやっていきたいと考えています。

具体的な取り組みのご紹介:住民と共に築く支援のかたち

私は、現在第2層モデルの地区担当の1人として活動に取り組んでいます。私からは、協議体の具体的な取り組み内容について、お話しさせていただきます。

阪本裕美子さん(大阪阪山市社会福祉協議会 地区担当)

地域資源マップの作成過程:住民と専門職に役立つ一冊に

先ほど伝えたワーキンググループを立ち上げて作成を進めた資源マップについて紹介します。

このマップは、協議体の楽しい雰囲気の中で、また小単位のワーキンググループ内で、みんなが意見を言いやすい雰囲気の中で作り上げました。

ワーキンググループのメンバーから、「逆引きの方が使いやすい」など様々な意見をもらい、何度も見直しを重ねて完成させました。

元々は、地域住民や福祉委員の皆さんに、利用できるサービスを紹介するための冊子でした。
しかし、完成してみると、専門職であるケアマネジャーや、地域包括支援センターの職員からも、「サービスを紹介する際に非常に役立つ」という声が寄せられました。専門職の方々にとっても役立つものができたことは、大きな成果だと感じています。

買い物支援サービスの展開:移動販売の選択肢を増やす

次に、協議体の取り組みとして、買い物支援についてご紹介します。

大阪狭山市は、比較的狭い市ですが、スーパーが近くにない地域もあります。そのような買い物困難地域への支援として、大阪いずみ市民生活協同組合(生協)と協力し、商品を積んだトラックを6か所の地域で運行しています。

買い物支援:お買い物ツアーの取り組み「買い物は生きがい」

コープのお買い物便を実施する中、「自分で買物に行きたい人も多い」と言う声が福祉委員からあがりました。移動販売車では、どうしても商品数が限られてしまいます。リンゴ一つとっても、さまざまなメーカーやブランドがあります。

「たくさんの商品の中から、自分の目で見て、選びたい」
「新鮮な野菜を選びたい」
「ドラッグストアに行けば、一つの商品に対してたくさんの種類がある」
「実際にスーパーに行って、自分の足で歩き、自分の目で確かめて買い物をしたい」
「友達と一緒に買い物をしたい」

そのような住民の皆さんの声は多く、「買い物は、人が生活する上で、生きがいにつながる大事なものではないか。」そう考えていたところ、地域住民の皆さんとの対話の中から、「お買い物ツアー」をやってみてはどうかという提案がありました。

そこで、地区福祉委員会では、高齢者の生活支援として、お買い物ツアーを実施することにし、アンケートをとり、移動手段をどうするかについても検討しました。
協議体の参画団体である介護老人保健施設の協力で、送迎車の車両が空いている時間帯を利用し、地域の高齢者を買い物に連れて行ってもらうことが実現しました。

しかし、買物は日常的なものであり、福祉施設の車両だけでは足りないという状況も出てきました。
福祉施設も忙しく、毎週車両を貸し出すことは難しいため、地域のボランティアの方が、自家用車を提供してくださるようになりました。
現在では、月に2~3回、地域のボランティアの協力により、毎週の買物ツアーが実現しています。

高齢者移動支援事業『さやりん おでかけサポート』の開始

お買い物ツアーを行う過程で、地域のボランティアの協力は得られたものの、万が一事故があった場合の責任問題や、個人にかかる負担が大きすぎるという課題がありました。

さらに買い物だけでなく、通院や趣味活動などでも利用できる移動支援を行うことで、高齢者の社会参加や介護予防につなげることはできないか、と考え、市と協議し、202410月に「高齢者移動支援事業さやりんおでかけサポート」を開始しました。

この事業は、道路交通法の登録を要しない事業として実施している、生活支援と一体的に行う移動支援事業です。これまでのお買い物ツアーの様子や、ヒューマン・ケア事業のマッチングなどを参考にしたり、既に様々な形態で移動支援を実施されている貝塚市や太子町などにも訪問し、アドバイスをいただいて、何とか実施までこぎつけることができました。

移動支援の重要性と目的:安心して暮らせる地域づくり

大阪狭山市の介護保険計画策定にかかるアンケートの回答でも、高齢になっても安心して暮らせる条件として、「外出の同行、移動サービス」の必要性について、多くの回答をいただいています。移動をサポートすることで、生き生きと健康にその人らしく暮らせるよう、応援していきたいと考えています。

「さやりん おでかけサポート」の3つのポイント

この移動支援事業を立ち上げるにあたり、重要なポイントが3つありました。

1.買い物困難な方をサポートするという、本来の目的を達成すること。

2.新たな活動者として、運転ボランティアの方々が地域で活躍できる場を作り、新たな担い手を発見すること。
運転ボランティアの募集をしたところ、これまで社会福祉協議会と関わりが無い方や、地域づくりに関心のない方が、運転というキーワードに興味を持ち、登録をきっかけに他のボランティア活動に繋がった事例もありました。運転という活動を通して、新たな担い手を発見できることも、重要なポイントだと考えています。

3.地域住民の参加を促し、多様な方々に事業への参加を求め、住民主体の地域づくりにつなげること。
例えば、引きこもりがちな方や、障がいのある方、生活困窮状態にある方であっても、日常的に車を運転されている方であれば、ボランティアとして活動していただくことは可能です。これまで支えられる側だった方が、支える側になれる、そのような手段の一つになる事業だと考えています。

利用登録者と運転ボランティアをつなげるのが、社会福祉協議会の役割です。しっかりとマッチングを行い、利用者が当日、行きたい場所に安全に行けるように支援します。

ボランティアは運転による移動支援だけでなく、買い物に同行したり、荷物を持ったり、病院の受付を手伝ったりと、生活支援を一体的に行うという点が重要です。

事前に、利用登録の方に、どこに行って何をしたいか、移動に加え、どのようなサポートがあれば安心かをしっかりと聞き取り、ボランティアとマッチングしています。

「さやりんおでかけサポート」の対象者と利用条件

具体的な利用者は、大阪狭山市在住の、要支援・要介護認定をお持ちの方です。
3,800人の方が対象となります。実際には、要介護3の方までの利用がおられます。
利用料金は、1500円のチケット制で、月に2回まで利用できます。
運転ボランティアの対象は、第1種運転免許証をお持ちで、10年以上の運転経験があり、日常的に運転されている、75歳未満の健康な方です。
実際には、75歳以上でも、元気に運転されている方から、「やってみたい」という声もいただいていますが、現在のところは、75歳未満の方を対象としています。
移動範囲は、大阪狭山市内、および大阪狭山市の外周から2.5km以内です。これは、近隣の大きな総合病院や、少し大きめの百貨店などにも行ける距離です。

「さやりんおでかけサポート」の特徴

大阪狭山市の移動支援の特徴は、活動を21組で行うことです。
運転をする方と、その補助として生活支援を行うボランティアの、21組で活動します。
同じ車両の中で、役割が入れ替わっても構いません。運転と生活支援を一体的に行い、21組であるため、安心して活動できます。免許は持っていても、運転に自信がないという方は、補助のボランティアを主な活動にすることも可能です。
謝礼金は、1700円です。責任を持って活動していただくため、有償ボランティアという形にしています。

運転ボランティア養成講座

運転ボランティア養成講座の第1回目は、本当に人が集まるのか心配しながらの実施でしたが、民生委員さんや、日頃運転されている元気なボランティア活動をされている方に声をかけて、20名集まっていただきました。
1回目の運転ボランティア養成講座を修了した方が活動し、オレンジ色の車が市内を走るのを見る中で、「私もやりたい」という声が上がり、第2回目は公募で、社会福祉協議会と関わりのなかった方からも、たくさん参加ただきました。
現在は、34名のボランティアが活動しています。第3回目の講座も近々予定していますが、20名程度のボランティアを養成できればと考えています。

「さやりんおかけサポート」の運行状況

運行は、1時間半の枠が1日4便あり、2台の車で計8便の枠があります。現在は、午前中はほぼ予約が埋まっている状況ですが、全体的な稼働率は5割程度です。
通院などで、1時間半では短いという声もありますが、貝塚市の移動支援事業を参考に、通院で長時間を要する場合は、片道だけの利用をお願いすることにしました。
「片道だけでも送ってもらえたら助かる」という声が多く、現在のところは、1時間半の枠で活動を終了する形にしています。

「さやりん おでかけサポート」の利用イメージ

移動と生活支援を一体的に行っているという点がポイントです。
自宅から移動し、買い物先(例えばスーパーマーケット)まで行き、スーパーから自宅まで送り届ける。これが、活動の流れです。

移動以外に、本人が自力でできない部分をサポートします。例えば、

  • 鍵の開け閉め
  • 荷物の運搬
  • 車の乗降のサポート

買い物先では、

  • 荷物の運搬
  • 支払いのサポート

などを行います。

ただし、本人ができることは、ご自身でやっていただきます。
例えば、普段は水やお米など、重たいものを持てないという方でも、自宅の玄関や、冷蔵庫に入れるところまでお手伝いします。

一方利用できないケースもあります。移動のみを目的とする利用はできません。例えば、「駅まで行きたい。そこから電車に乗って、あとは自分で好きなところに行く」といった利用は、お断りしています。

あくまで、生活支援と一体となった活動であることが、この事業の前提であり、移動を支援することによって安心して外出でき、利用者の介護予防や生きがいづくりに繋がる事が重要と考えます。

「さやりんおでかけサポート」の活動風景

写真上部は、病院への送迎の様子です。

2人1組で、男性と女性のボランティアがいます。白いジャンパーの背中には、オレンジ色の大きなマークと、さやりんが描かれていて、目立つようになっています。

最近では、病院の警備の方や、クリニックの医師、看護師にも、周知されてきており、「オレンジの車が来たら、おでかけサポートだな」と認識され、駐車しやすい場所に誘導してくださることもあります。

店舗の中でも、店長さんがにこやかに見守ってくださるなど、地域の方々にも、活動への理解が広がってきています。

ヒューマン・ケア事業:長年の支え合い活動

おでかけサポートが始まる前から、有償ボランティア活動としてヒューマン・ケア事業がありました。介護保険が始まる前から、大阪狭山市では、この事業を大切にしてきました。

日常生活で、家事や介護などで困っている方々(利用会員)の負担や困りごとを、少しでも和らげるために、地域の人々(協力会員)の参加によって行う、有償での会員制の支え合い活動です。

このヒューマン・ケア事業のノウハウを、移動支援事業のマッチング機能に活かすことができました。

社会福祉協議会が最初に取り組んだ、個別在宅福祉を応援する活動でしたが、介護保険制度が始まり、一度は下火になった事業でした。しかし、地域包括ケアシステム推進のための取り組みとして、よりきめ細やかな支援が可能な、住民同士の支え合いの仕組みとして、重要な事業の一つと考えています。

ヒューマン・ケア事業の活動事例

1つ目は、階段の上り下りが大変な80代の女性の、ごみ出しの支援を、70代の男性ボランティアが行っている事例です。
男性のボランティア登録は、比較的多いのですが、女性の利用者が多いため、活動の場がないという課題がありました。
しかし、集合住宅の階段がある場所でのごみ出しに課題を抱える方が多くなってきたため、男性でも、ごみ出しであれば、家の中に入る必要がないため、活動しやすいと考えています。

ボランティア活動を始められた男性の方も当初は、ごみを出して帰るだけでしたが、次第に、顔を合わせて挨拶し、お話し相手となり、今では利用者の方が喜んでくださる姿を見るのが、週に2回の活動の楽しみになったそうです。
何よりも、自分自身の介護予防にもつながっており、これからも、できることを、できる範囲で続けていきたいとおっしゃっています。

もう一つの事例は、障がいにより歩行が困難な50代女性の方への家事支援です。
協力会員とはお互いに年齢も近く、訪問時いろいろなお話しで盛り上がるそうです。
洗濯物を畳んだり、食器の片付け等を支援されていますが、家事援助よりも、何でも気軽に話せる人と思ってもらえていたら嬉しい、利用者宅への訪問が、自分にとっても気晴らしになり、リフレッシュの機会となっている、と笑顔で話されます。

これらの事例に共通して言えるのは、最初は人のために何かしたいと思って活動を始めたけれど、結果的に、自分のため、自分の生きがいになっているということです。皆さん、生き生きと活動されています。

まとめ:誰もが輝く地域社会を目指すために

まとめとして、3点、重要だと考えていることをお伝えします。

  • 認知症の高齢者、障がいのある人、生活困窮の状態にある人などを、地域から排除するのではなく、ともに生きる住民として、地域で支え合い(地域共生社会)、受け止める地域をつくりたい。
  • 支援を必要とする人と、地域社会とのつながりをつくり出し、「誰かのため」ではなく、「自分のためでもある」「私たちの問題である」という意識を育みたい。
  • 「助け上手」「助けられ上手」を地域に増やし、さまざまな生き方や暮らしのあり方を認め合うこと。また、助けられる側も、できることで助ける側になれるような仕組みをつくりたい(社会参加の促進)。

地域共生社会の実現、誰もが主役になれる地域を目指して、私たちは、地道な活動、小さな事業ではありますが、取り組んでいます。

これらの活動が、住民の皆さんが大阪狭山市で長く暮らせる、安心して暮らせるまちづくり、地域づくりにつながっていくと信じています。

 

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