「雑談」からつながるニーズ、広がる活動/2025年度 生活支援体制整備事業に係る充実強化研修(大阪市東住吉区事例紹介)
2026年4月24日
2026年1月22日に、「令和7年度 生活支援体制整備事業に係る充実強化研修(全体研修) 」を大阪市内で開催しました。
研修プログラムでは、大阪市東住吉区における生活支援体制整備事業の取り組みについて、大阪市東住吉区社会福祉協議会(以下、区社協)から、中尾由起さん(第2層生活支援コーディネーター)
森田美香さん(第1層生活支援コーディネーター)にお話しいただきました。

東住吉区は大阪市の南東に位置しておりまして、天王寺や阿倍野にアクセスしやすいエリアです。
人口は130,928人で高齢化率は28.2%となっています。有名どころとしては、駒川商店街や長居公園があります。ただ、駒川商店街も区役所も区内の中心にあって、北側の生野区の近くや、南側の大和川周辺に住む方々からは、移動手段に関するニーズがあがっています。

1.おしゃべりから始まる、コーディネートのカタチ
東住吉区の生活支援コーディネーターが、ここ2~3年で重点的に取り組んだことを3つ紹介します。
①ボッチャの活動
体験会やボッチャボランティア養成講座の実施を通して、区内で少しずつ広がっていきました。
講座後、ボランティアとして各地域や学校での福祉教育などで活躍されています。また、地域や老人会でボッチャセットを購入し、独自の大会を実施されるところも出てきました。ボランティアと区社協内の担当者と、さわやかボッチャ交流大会も運営しています。1人でもチームでも参加OK。
様々な世代が参加できる場となっています。
②園芸ボランティアの活動
ボッチャ同様、区社協内の担当者と一緒に取り組みました。
令和5年に園芸ボランティア養成講座を実施。その講座を経て、区社協の玄関前のスペースを使って園芸活動も始めました。2名からスタートしましたが、現在は7名になって、さわやかガーデン「和」として月2回「種から花を育てる」をモットーに活動中です。その中の3名が介護予防ポイント事業を利用して特養で活動されるなど活動の幅を広げておられます。
③さわやかひと休みベンチプロジェクトの取り組み
こちらは、誰もが安心して暮らせる地域づくりを目的にベンチを手作りし、地域に設置するプロジェクトです。ベンチを設置することで高齢者に限らず、子どもも大人もちょっと休憩、さらにはちょっと井戸端会議ができて、地域の中でつながりができるきっかけになったらいいなと考えて進めました。1回目を令和5年に実施して、今年で3回目になります。
生活支援コーディネーターとしては、新たな場づくりにつなげたいという思いや、男性が参加しやすい場所を作りたい、新たな担い手を発掘したいという思いを持って取り組みました。
本日はこの取り組みについて報告させていただきます。


2.「雑談」を地域の声に変える
そもそも何故このプロジェクトをすることになったかといいますと、すべては雑談から始まりました。先ほど紹介した園芸の講座で、施設の園芸スペースに花の苗を植えました。その講座に参加した方と喋ってた時に「せっかく花植えてんから椅子に座ってゆっくり見れたらええな」「ほんまですね」という会話を交わしました。
また地域の集いの場で、参加者とお話ししてたら、「○○スーパーへ買い物行ってんねんけど、いつもしんどいから途中で止まって休憩すんねん。どっか座るとこあったらええねんけど、そんなんないやろう?」という、ゆっくり休憩できる場所が欲しいというニーズを聞き取りました。
そして、講座を共催で実施した社会福祉法人ふれあい共生会の方とも雑談の中で「ベンチでも置いて、花見ておしゃべりできたらいいね。ほんでそのベンチも自分らで作ったりしたら面白いやん」「それいいですね。あちこち置いたりして」という雑談もしていました。
そういう地域住民との雑談したり、他機関との何気ない会話の中で、キーワードとして挙がってきた「休憩できる場所」と「ベンチ」を合体させて、ベンチを手作りして東住吉区内に「ちょっと休憩」「ちょっと井戸端会議」ができる集いの場をつくろうということになりました。
3.ベンチプロジェクト3年間の歩み
まず、場を作るための資金や場所、人材、材料を検討しました。
一緒に雑談していたふれあい共生会の方に話を持ちかけたところ、共催を申し出てくれて、会場をお借りすることができました。このふれあい共生会さんは高齢者、障がい者、障がい児対象の事業を運営されており、地域包括支援センターを持つ法人でもあります。
お借りした会場は花未来プラザ地域交流ホールといって、グループホームの1階にあります。
百歳体操のほかに、映画会やイベントの会場にもなっていて、地域住民が気軽に立ち寄れる場所になっています。ふれあい共生会さんと一緒にやることになって、場所の確保もできました。
あとは人と物を考える必要がありました。
1年目:手探りで始めた協力者探し
ここからプロジェクトの3年間の流れをお話しします。
まず講師から探しましたが、「初心者に工具持たせて、2日でベンチ作るなんか無理やで、怪我させるで」と断られたり、費用の問題もあって、なかなか見つかりませんでした。
そんな中、ネットで住之江区にあるNPO法人木育フォーラムというところを見つけました。
電話をかけてベンチプロジェクトのことを伝えると、「すごくいいじゃないですか」と言ってくれました。代表の方は木の温かさに触れ、木工を通してものづくりを楽しむ活動、木育を大事にされて活動されていました。材料や工具などの相談をしたところ、柔軟に対応下さり、人と物の問題が一気に解決しました。経費は講師料と会場をふれあい共生会さんが、木材やその他の材料費を区社協でそれぞれ負担することになりました。当日は講師として3名お越しいただき、講師主導で1工程ずつ丁寧に指導してもらいました。
周知方法は、チラシを作成し、地域や関係機関へ周知をお願いしたり、ホームページやフェイスブック、区社協だよりで周知をしました。
そしてプロジェクト終了後、第1層協議体会議でベンチプロジェクトを取り上げ、高齢者が外出するために効果的なベンチの設置場所についてご意見をいただきました。
2年目:無理なく続けるための工夫と改善
2年目は、今後も継続してできるやり方を考えながら実施しました。
1年目は背もたれのある椅子でしたが、2年目からは、背もたれをなくし、難易度を下げる代わりに、設計図を作成・配付してもらい、自分たちで測る・切る・穴をあけるなど作業工程を増やしてもらうよう依頼しました。
また、先程お話した第1層協議体会議でベンチに相談機関の連絡先が分かる一覧のプレートを付ける提案をいただき、ベンチの座るところに貼っています。
そして、もっと多くの方に知ってもらえるよう、生活支援コーディネーターだより「ええやん、さわやか」で、ベンチプロジェクトの紹介と設置場所を掲載しました。
3年目:住民が主役になる瞬間と男性たちの出番
3年目もふれあい共生会さんと共催で実施しました。
そして、1回目も2回目も参加された方にサポートメンバーとしての参加をお願いしました。
全員70歳以上で、男性が5名、女性が2名です。サポートメンバーの皆さんには、講師が進めるベンチづくりのサポートのほかに、司会や受付、写真撮影をしてもらいました。
司会者の男性は、ご自身で作ったシナリオで、会場内にインタビューしてくださり、上手に時間ばっちりで進行してくれました。DIYという手法は男性の担い手発掘には効果的だなと感じています。
今まで支援をされる側だった男性が、電動ドライバーを持つと教える側に変わりました。
3年目の講師は、区役所が発行している冊子に紹介されていた株式会社あくがれさんにお願いしました。家具の修理や製作をされていて、地域の力になれるならと引き受けていただけました。


設置場所は地域の方や専門機関から「ここに置いてほしい」といったニーズの情報を収集しました。
しかし、たまり場になったら困る、交通安全上危険だから無理だ、などスーパーや銀行、企業など設置してほしいとの声が上がっているところにピンポイントに設置することはすごく難しかったです。そのため、その付近の場所に相談し、設置していきました。
3年目になると、サポートメンバーが自主的に病院へ交渉に動いてくださいました。そこでは断られたものの、また次の場所を探してきてくださり、その交渉先では「中尾さん、ここは置いてもらえそう」と許可をとってきてくれてたり、その行動力のおかげでお試しの設置が決まりました。
設置場所が決まったら贈呈式をしています。ベンチをつくった方と設置先の方が顔を合わせて、その場でネームプレートを取り付け、集合写真を撮影します。ネームプレートはフルネーム書く方もいれば、「大事に使ってください」といったメッセージを書く方などいろいろです。「みんなのベンチ」と書いた紙をラミネートして作り貼り付け、そこにプロジェクトの趣旨と相談機関の連絡先一覧も書いてます。3回実施して,18台のベンチを作り、現在17カ所に設置してもらっています。あと1台は先方の返事待ちという状態です。

4.今後の展望と課題
今年度で3回目となるさわやかひと休みベンチプロジェクトの取り組みですが、設置場所の発掘は今後どうするのか、設置したベンチの安全性の確認はどうしていくのかという課題がでてきています。
そのため次回のプロジェクトでは、メンテナンスも一緒に実施するなどの案を考えています。また会場を変更したら、これまで遠くて参加できなかった方が来てくれる可能性もあります。これからのことについてはサポートメンバーと一緒に考えていけたらいいなと思います。
以上で、東住吉区の報告を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

