プロボノ→先輩団体への視察 外からの視点と刺激で活動に好循環を 吹田市認知症カフェ交流会の場合
2023年4月25日
吹田市認知症カフェ交流会(以下、交流会)は、吹田市内で「認知症カフェ」を行う団体がお互いに情報交換・交流する「横のつながり」を作るため2016年から活動を開始しました。
当初6つのカフェから始まり、現在は24のカフェ運営団体が交流会の会員として参加しています。
2022年には、プロボノによるプロジェクト型支援で「事業評価」に取組みました。
※プロジェクトの様子はこちら
さらに、プロジェクト完了後すぐに、プロボノチームからの提案もあり、
大阪ええまちプロジェクトの過去支援先で、大阪府内で多様な人や団体とのネットワークをつくり、認知症の方々も主役として活躍できる場やプロジェクトを展開する「ゆめ伴プロジェクトin門真実行委員会」(門真市)へ、交流会の有志メンバーで現地視察に訪れました。
プロボノチームとの取組や「認知症になっても活躍できる地域づくり」を目指して取り組む団体同士の交流を通じて、いったいどんな変化があったのでしょうか?
プロジェクトで団体側の窓口役を務めてくださった 吹田市認知症カフェ交流会(前会長)の石山満夫さんから お話を伺いました。<写真左側:2021年プロジェクト開始時の写真>
(2023年3月 プロボノによるプロジェクト支援「地域団体向け説明会」での経験者トークより)
プロボノによる「プロジェクト型支援」に期待したことは?
交流会の活動を始めたきっかけは、自身が事務所にしている訪問看護ステーションの1Fで認知症カフェを始めたのですが、当事者の方や認知症に関心のある方などに、なかなかカフェを訪れてもらえないという状況もあり、同じように困っている団体があるのなら、と6つの団体で始めました。
その後吹田市内の認知症カフェが増え、交流会の会員は2021年で24カ所。
どう取りまとめていけばいいのか…というのが課題でした。
また、広く市民の皆さんに認知症のことに関心を持ってもらうことも、交流会として複数のカフェが集まって活動している目的の1つですが、私は専門職なので、同じ介護・福祉の分野ではない企業や住民さんたちとどうつながっていけばいいのか分からず、その点でも課題感がありました。
そこで、プロボノさんには2つのことを頼りました。
1つは交流会が今までやってきたことの見直しと、「他地域」で同じような活動をやっている団体はどういうやり方なのか、知りたいということ。
もう1つはコロナ禍で新たに始めた「移動カフェ」をコロナ禍が過ぎた後もどう発展させるか、についてです。
これらのことを知る材料として、5年間を振り返っての「事業評価」というプロジェクトに取り組みました。
「事業評価」で明らかになったのは、どういったことでした?
「事業評価」に取組んでよかった点は、プロボノチームの皆さんに自分たちの団体のことを外部の視点で見てもらえ、系統立てて論理的に分析してもらえたことです。
市の関係者などからは、「認知症になっても活躍できる地域づくり」というテーマで複数の団体が横でつながっている・団体同士が 「まとまっている」と思われていました。
しかし、実際には1つ1つのカフェは、地域の方がやっているところ・介護事業所の一部でやっているところと主体も違えば何をしたいかなどそれぞれ別物で、「認知症カフェ」をやっているからといっても個々の団体を取りまとめるのは難しく感じていました。
実はこれまでも、私が会をまとめる意識から、こうして欲しいと思って伝えても「石山さんが言っていること・やっていることは、ようわからん」と言われていたこともありました。
それが、プロボノの皆さんに交流会の会員へヒアリングをしてもらって、本音を聞くことができ、会議などでなんとなく変な感じだな、と思っていた事の背景が明らかになったんです。
普段から会議に参加してくれている 方からも、会議の中では聞けない声を聞けたこともよかったです。
「カフェに来てくださるなら、ヒアリングに協力できるよ」という団体さんがいたり、プロボノチームの皆さんから役所の関係部署へも声かけしてヒアリングしてくれたおかげで、連携したい・関係を作りたいところにも円滑に話を聞くことができ、今後のつながりのきっかけになりました。
また、プロジェクト中は、プロボノチームの皆さんから質問や問いかけがあるのですが、最初のうちはどう伝えればいいのか、自分がどんな表現で話せばいいか分からなかったです。
普段の会話の中でも、専門的な表現が多い言葉づかいになっていたことや、丁寧に噛み砕いて伝えることができていなかったのでしょう。それにも気付かされる場面もありました。
プロボノチームの皆さんは、色んな人から聞いた話を「ロジックモデル」という考え方の枠組みを使い、個別の活動を紐解きながら、カフェの運営・会の活動を「何のために」やっていたの?と構造的に整理をしてくれました。
そのおかげで、会の目的・「何のため?」という問いを確認し合えました。会員さんからも、それが分かって一番よかったとの声がありました。
プロボノで俯瞰的に見てもらったのが大きなポイントでした。会の中で全体的に何が起きているのかが見えた感じです。
先輩団体へ視察に行って、何か変化はありましたか?
「ゆめ伴プロジェクトin門真実行委員会」さんへの視察には、大阪ええまちプロジェクトの「先輩団体への随時個別相談」の支援を活用しました。
詳細・お申込みについてはこちらをご確認ください https://eemachi.pref.osaka.lg.jp/advice/
交流会の会員に呼び掛けて、15~16人くらいが集まり視察に行きました。
活動されている畑に行ったり、折り鶴を一緒に作ったりした後に、ゆめ伴プロジェクトの運営者の皆さんとお話ができました。お話を聞いて、ゆめ伴プロジェクトの皆さんの志の高さ・エネルギーに圧倒されました。
1人が100歩進むのではなく、高齢者・子ども、いろんな方と一緒にひとりが一歩ずつでじわっと進めて行こうとされていたのが分かりました。これは今まで自分たちのやり方にはなかったので勉強になりました。
先輩団体の活動を見てみて「わぁ、大きな志でやっているなぁ!」と、自分たちの活動だけではなく周りに目を向けることで、できることの可能性を知ることができました。
そして、プロボノプロジェクトの後、新しく2つの認知症カフェを運営する団体が立ち上がったのですが、うち1つは、ゆめ伴さんの現地訪問をした時の経験から立ち上がった、診療所の待合室での「クリニックde café 」という団体です。
そこでは折り鶴を作ってゆめ伴さんへお渡しするなど、引き続き交流しています。つながりができたことが刺激になり活動が生まれたことと、折り鶴を介した継続した交流のおかげもあり1つのカフェで孤立せず活動を進めていくポイントにもなっています。
プロボノプロジェクトを経て、会の状況や今後に向けた変化はありますか?
交流会に参加しているカフェは、それぞれがやっていることは違っているけど、その違いを認めつつ、「〇〇のため」という上位概念に向けての対話ができるようになりました。目的や目標に向けて計画的に考えることもできるようになり、「認知症になっても活躍できる地域になるために…」と意識が持てました。
「今、何が起こっているのか?」というのを俯瞰的に見てもらえ、当初の課題だった、カフェとして何をやっていったらいいのか分からない・続けられないといった孤立感も、目標や目指すところが見えたことで、細々とでも無理なく継続してやっていけそうと思えるようになったかなと。プロボノさんから「カフェそれぞれが違っていて、それでいい」「交流会の皆さんは、一見バラバラのようでも、一緒のことを考えてますよ」と目指す姿を「見える化」してもらえました。
移動カフェも、新たな協力者が増えてきている状況です。
地域包括支援センターの人が来てくれたり、移動カフェ開催に駐車場を貸してくださる介護施設の施設長も文章でお知らせをしてくれたり、新しいボランティアさんが手順を見て「これくらいなら私たちもやるよ」と言って手伝ってくれたりと、運営の方も自信が出てカフェを続けられる気持ちになってもらえました。
今後は子育て中の世代の方なども参加してもらいたいと思っています。まだ接点は少ないですが、移動カフェの場をきっかけに接点が持てそうです。地域の中で少しずつですが、認知症カフェ交流会の存在が伝わってきたかなと感じています。
プロボノの支援をしてもらったことが原動力です。
目標を定めて、段階的にやっていくということを意識できはじめました。
編集後記
プロボノチームの皆さんが、外部の協力者として会議や普段の交流だけでは現れない事象をとらえ、分かりやすく示して団体内へ共有することで、交流会の意義が明確になり活動に迷いがなくなったようです。
さらに会の目的を共有した上で府内の先輩団体を訪れたことが、さらなる気づきやつながりへの好循環が生まれ、無理をしすぎず継続できる活動へのヒントにも。
プロボノによる「プロジェクト型支援」と、先輩団体への「相談支援」の2つを、団体の過渡期に上手に活用された吹田市認知症カフェ交流会さんでした。