• いくつになっても住みやすい「ええまち」づくりを応援するプロジェクト

ええまちづくりのええ話

大阪府内の地域団体の活動事例や、行政職員や生活支援コーディネーターの研修の発表も広く掲載。
団体の活動の参考にしたり、市町村の仕組みづくりに役立つ記事がたくさんです。

みんなでつくる わがまち、ええまち
「地域の実態を知らせることでわがごとに」

2019年8月16日

2019年2月26日、ドーンセンター(大阪市中央区)にて、大阪ええまちプロジェクト「大交流会」を開催しました。

第1部「~みんなでつくる わがまち ええまち~」のパネルディスカッションでの、各地域での”ええまちづくり“の取り組みをお伝えします。

 

パネリスト

 

佐藤貞良さん 磯長台の福祉を考えるつどい代表

磯長台地区の自治会エリアを単位に、住民自治の発展を目指して平成16年から活動。お互いの顔と名前がわかりあえ、信頼関係を深く確かなものにしていく先に住民自治が成り立つと考え、小地域を単位とする自治にこだわって、サロン活動や健康体操、会員同士での移送サービスや買い物ツアー、安否確認などに取り組む。

 

吉村悦子さん 大東市生活支援コーディネーター、NPO法人住まいみまもりたい理事長

平成16年11月にNPO法人「住まいみまもりたい」を設立。大東市の第一層生活支援コーディネーターとして、民間事業者を含む生活支援に対するサービス提供者を集め、協議体を作り、地域包括ケアの推進に取り組む。

 

藤井厚宏さん 豊明市健康福祉部健康長寿課

7万人弱の人口を抱えるベッドタウン愛知県豊明市。高齢化率は25.2%。公的保険外サービスの創出・促進に関する協定」を民間事業者と結び、介護が必要な高齢者の増加を抑え、高齢者が自立して暮らせるまちづくりを進めている。

 

村田幸子さん 福祉ジャーナリスト(元NHK解説委員)

昭和38年3月立教大学文学部英米文学科卒業後、NHKにアナウンサーとして入局。1990年、NHK解説委員となり、主に福祉・厚生問題を中心に取材。2003年NHK退局。以後、福祉ジャーナリストとして講演・取材活動を続けている。10年前から、仲間同士で老後を支え合うため同じマンションで暮らす「友だち近居」も実践中。

 

Q:佐藤さん、吉村さんの活動内容をご紹介ください。

佐藤:「磯長台の福祉を考えるつどい」は、自治会から生まれた法人格を持たない自治型福祉NPOで、会員数118人、全世帯の26.7%にあたる92世帯の方が会員です。

 

人口約13,000人、5,500世帯の大阪府南河内郡太子町。その中の磯長台は40年前に開発された住宅団地で人口は約950人、345世帯です。開発当時、30代40代の方が中心に移り住み、今その方々は70代後半から80代になり、高齢化率は41.7%。

 

「これから10年後はいったいどうなるのか」という危機感を持ち、独居高齢者の365日安否確認、元気ぐんぐんトレーニング、移送サービス、修繕などこまごまとしたサービス支援、いろんなサロン活動などをやっています。

 

 

吉村:人口は121,377人、高齢化率は26.4%になっている大東市で、「NPO法人住まいみまもりたい」は、平成16年に設立。

行政サービス、介護保険サービスでカバーできない「市民の困りごと」への対応を事業として展開してきました。

 

買ったままいらなくなったものを地域資源として有効利用する「もったいないサロン」を野崎参道商店街に平成18年にオープンし、そこを拠点として活動を続けてきました。

平成28年4月、大東市からの受託事業として「生活サポートセンター」を開設することになり、毎月サポーター養成講座を市役所で開催しています。

 

養成講座終了後、サポーター登録への誘導、利用者の電話受付、利用者・サポーターとのマッチング作業、月1回サポーターの茶話会、手芸教室を開催しまして交流会を実施しています。

生活サポート事業では、窓拭き、病院同行、ゴミ出しといった日々の生活支援をしています。

 

利用料金30分以内250円。1時間で500円。

それをお金で受け取ることもできますが、時間貯金という制度も設けています

12月現在で生活サポーター登録数が584人、12月の利用者数は144人。この中には要支援の方がほとんどですが、要介護の方もおられます。

 

Qどのように事業を立ち上げられたのでしょうか?

佐藤:磯長台で孤独死がありました。それがきっかけで平成16年の自治会総会で自治会でも福祉の問題に取り組んでほしいという要望が出てきました。

しかし、自治会の役員はどんどん高齢になり、盆踊りやハイキングもやめるという縮小傾向。そこで、役員がやるのではなく「福祉に関心のある人たちでやってもらおう」と自治会員に直接呼びかけてスタートしました。

 

第1回目に集まったのは12名で、そのうちの8名は役員でしたから、一般の自治会員は4名です。

「4名は来てくれた」ということです。それ以来ひと月も欠かさず、例会はずっとやっています。

 

高齢者が4割を超える地域ですので、「免許証を返上したらこの磯長台に住み続けることができるんだろうか?」と非常に大きな不安がある。

そのため、今からその不安にしっかり取り組んでいくために、健康寿命を延ばしていくいろんな体操や、心身の衰えをカバーできるような移送サービス、あるいは福祉医療の充実を図っていくということで取り組みをやっています。

 

もう一つ、若い世代に移り住んでもらうために、若い人にとって住みやすく魅力のある磯長台にしていく取り組みも大切だと思っております。

 

最初の呼びかけ時に比べると、私たちの活動はどんどん大きくなってきました。福祉に関心を持ち、自ら活動を進めようとする人たちが地域の中に沢山いるということです。

 

 

吉村:大東市は平成28年4月から要支援1,2の方を全て市民サポーターで対応することに決まり、市民サポーターを育てる必要が生まれ、広報紙で告知をし、養成講座を開催するに至りました。

 

1年目は関心のある市民の方が毎月10名位は集まりましたが、2年目からはもっと少なくなっていきました。そこで市民サークル、ボランティア団体、フィットネスジム、企業、そして地元の大学などへも養成講座のお知らせをしたり、お願いに行ったりするのですが、「なぜ地域包括ケアシステムが必要なのか」という話を聞いてもらえると「自分のできることをちょっとやってみようかな」という方が少しずつ出てきてくださいました。

例えば、大学の先生にお伝えすると、ゼミ生に養成講座を受けてもらって活動して、それを就活に生かそうという流れを提案いただくこともできました。

 

また、60・70代の市民サポーターが訪問すると、同じくらいの歳の人が来るということにびっくりされ、「それやったら自分でやるわ」という人が増えました。

 

サポーターさんの中には、家で掃除をしても、「ありがとう」を言ってもらえないという方もいらっしゃいます。でも、利用者さんから、「ありがとう」と言ってもらえて自分の居場所ができたという声も聞きました。

 

現地の支え合いが生まれて、元気な高齢者と虚弱な高齢者が一緒に掃除をするといった活動をすることによって、自立という意識が高まってきています。

 

次の課題も見え始めました。サポーターさんはあくまでも有償ボランティアなので、対応することが難しいお宅も出てきます。人手だけでは対応しきれないほどの状況や、対等に助け合いができないような要望を言われる利用者さんなど、そういったことにどう取り組んでいくのかということです。

 

Q:大阪府以外の事例もお聞きしましょう。愛知県豊明市での取り組みを教えてください。

藤井:豊明市の人口は68000人強、高齢化率25.4%。

名古屋市に隣接しており、2025年問題を抱えるような典型的な町です。

 

健康維持を考えた「まちかど運動教室」を高齢者の方が歩いていけるように23会場で実施しています。市がインストラクターを派遣して区が主体となって動いていただき、参加者は毎週合計2000人くらいです。

豊明市が独自に作った体操もありまして、誰でも無理なくできるようなひまわり体操、嚥下訓練のためのはつらつ体操、脚の筋トレのための信長体操、この3つを合わせて大金星体操と名付け、市の職員も出演をしてDVD化しています。

 

そういった中で豊明市は「居場所づくり」にも力を入れており、様々な講座を老人憩いの家や福祉センターで開いています。

講座の前に必ず大金星体操をやり、講座に参加すると自然と体操をできるような環境を整えてきました。

 

また、大東市さんの住まいみまもりたいの取り組みを参考につくらせていただいたものが「おたがいさまセンターちゃっと」になります。

 

Q:大東市を参考にされたのですか?詳しくお聞かせください。

藤井:豊明市では、JAあいち尾東農協、生活協同組合コープあいち、南医療生活協同組合と豊明市民の協働でこの仕組みをつくりました。

無償だと頼みづらいという意見があり、有償ボランティアとして30分250円。時間貯金ができるようにしています。最近は時間貯金にする方が増えています。

 

豊明市でも2つの校区で、住民主体の生活支援をやっているところがあったんですが、それぞれ非常に強いリーダーシップを持った方がいるため、それを横展開して広げていくのは難しいと考えていました。

そのため、コーディネート機能と時間貯金の考え方を参考にさせていただきました。

 

いきなり「養成講座をします」と市民の方に言ってもなかなか集まりません。

 

そこで生活支援をしていただいている3協同組合の方々にお話を持っていきまして、「“ちゃっと”システムを一緒にやりましょう」というお話をしたところ快諾していただき、組合員さんに養成講座を行い、構成メンバーになっていただきました。ここから今、市民に広めていっている状態です。

 

Q:村田さんから見て、これまでの磯長台・大東市・豊明市の取り組みについてどのように思われましたか?

 

村田:印象に残ったのは、磯長台の佐藤さんたちが呼びかけたら12人集まって、8人が自治会の役員。4人が役員以外の方だった。

「4人しか来なかった」と考えるのと、「4人も来てくれた」と考えるのは全然違う。

「4人も」というのは素晴らしいですね。

 

何かことを起こす時は「1人来てくれてよかった!」という気持ちが大事だと思います。「良かったなあ。こんど2人にしようよ」「つぎは3人に」とやっていけばいいですね。地域の意識改革を図るというのはこういう地道な取り組みなんだと思います。

 

来てくれない人にどう来てもらうかが最大の課題。

「今こういう時代だから、みんなに参加してもらわないと困るんですよ」と言うとそっぽ向いてしまう人も多いように思います。

「あなたの力が地域のために必要なんです」「地域のために一肌脱いてください」と言われると琴線に触れるようです。

 

また、サービス受ける人、提供する人が分かれてしまっているように思います。

サービスを受けている人だってできることがある。要支援1,2の人でも「あなたのできること」を聞いても良いと思います。

体操をして元気になったら、地域に還元してもらえませんかという働きかけも大事。

サービスを受ける人、提供する人と、分かれないようにすることが大切と思います。

 

 

佐藤:磯長台では、住みよいまちにしたいと「磯長台の福祉を考えるつどい」の皆がそう思っています。

41.7%という高齢化率は、役場に要求して初めてわかったんです。びっくりしました。

地域の具体的なデータが出れば、住民は、何をしなければならないかよくわかります。

 

このままでは10年後、20年後どうなるのかと考える。主体的にどう解決していくかという問題提起ができます。自分たちが住んでいる町が、どういう地域かを知ることが第一。これはみんなの問題なんだから。

 

村田:実態を知ることによって気づくことがまず多い。まず知ることから取り組みが始まっていく。住民が行政にきちんと求めていくことも大切です。

 

 

続く後編では、「Q:呼びかけても来てくれない人へ、どうアプローチするか、どこまでサポートを届けるか、どうお考えでしょうか?」という質問からスタートします。

 

 

後編へ続く

 

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