ええまちづくりのええ話

事例紹介
地域活動の立ち上げや運営について学びたい方へ “ええまちづくり”実践のための大阪ええまちアカデミー「入門編」サマリー

大阪府では、急速に進む高齢化に対し、地域住民が高齢者を支える仕組みや、高齢者が自ら地域活動に参加することで支える側に回っていく仕組みづくりとして「大阪ええまちプロジェクト」を進めています。

 

5年目となる「大阪ええまちプロジェクト」の新たな取り組みは、現役で働く世代が地域活動の立ち上げや運営などを学ぶ「大阪ええまちアカデミー」。

 

2021年6月から7月にかけ、大阪の各地の地域活動の先輩たちの事例をもとに学ぶ「入門編」全3回を実施、のべ123名が参加しました。

入門編に参加できなかった方、復習したい方、新たな地域活動の立ち上げに取り組みたい方向けにこの記事では「入門編」全3回のサマリーをお伝えします。

 

INDEX

入門編第1回 人生100年時代を展望

・金山佳子さん(特定非営利活動法人ここから100)

・遠座俊明さん(大阪ガス勤務・特定非営利活動法人健康・生きがい就労ラボ)

入門編第2回 地域づくり20年の大先輩を知る

・三和清明さん(特定非営利活動法人寝屋川あいの会)&藤村英樹さん(パナソニック株式会社勤務)

入門編第3回 地域の未来をプランニング

・猪俣健一さん(社会福祉法人 阪南市社会福祉協議会)

・宝楽陸寛さん(特定非営利活動法人SEIN)

 

【各回ナビゲーター:広石拓司さん(株式会社エンパブリック)】

エンパブリック代表取締役、ソーシャル・プロジェクト・プロデューサー/大阪市出身。東京大学大学院薬学系修士課程修了。シンクタンク、NPO法人ETIC.を経て、2008年株式会社エンパブリックを創業。「思いのある誰もが動き出せ、新しい仕事を生み出せる社会」を目指し、ソーシャル・プロジェクト・プロデューサーとして、地域・企業・行政など多様な主体の協働による社会課題解決型事業の企画・立ち上げ・担い手育成・実行支援に多数携わる。

 

入門編第1回 人生100年時代を展望 ~仕事の経験を活かして地域とかかわる方法~

プロボノを機に「居場所」を立ち上げ、NPO法人化した金山さんの事例

ゲストの1人目は、「特定非営利活動法人ここから100」の金山佳子(かなやま かこ)さん。

「地域活動経験なし、ごく普通の社会人&主婦だった」という金山さんの人生の転機は、2017年に「大阪ええまちプロジェクト」でプロボノとして地域活動に関わったことだと言います。

ヒアリングなどを通して、“おひとり様”、“孤独死”、“空き家”といった「高齢者の社会問題」に気づき「人生100年時代、自分は定年後の40年をどう過ごすのか?」と自問したそう。

 

空き家をリノベし居場所づくり、SDGsも意識しながら広がる活動

「介護認定者は行政サービスを受けられるけれど、自分の地域には元気なアクティブシニアの学ぶ場、コミュニティがない。自分に何ができる?」と考えた金山さんは、整理収納アドバイザーの資格を生かしつつ、空き家をリノベし高齢者の居場所をつくることに。2018年4月にはNPO法人を立ち上げ、理事に就任。

この居場所で、認知症カフェ、100歳体操、各種教室など、地域住民がそれぞれの得意を生かし、住民主体で日々多彩な活動が繰り広げられています。

一方で金山さんは高齢者の不安や悩みをなくす仕組みを作りたいと、生前整理診断士の資格を取得。ワンストップで、片付け(生前整理、遺品整理)・見守り・施設入居・介護・葬儀・相続などの悩みを解消する活動も始めます。

そして生前整理の仕事で出てきた不用品は廃棄せず、地域の外国人や障がいのある人たちに寄贈するなど、SDGsも意識しながら活動がどんどん展開しているそう。

いまは「ここから100」だけでなく、空き家活性化プロジェクトの理事、2021年の4月からは一般社団法人WA-GO監事に就任するなど、まさに大活躍をされています。

金山さんは、「地域活動には、困っている人の悩みを地域の力で解決する喜び、人生の満足感がある。まちづくりをやりたい人が空き家のスペースを有効利用して大阪にいっぱいコミュニティや居場所を作ってくれたらいいなと思います」と語りました。

 

「高齢社会検定試験」の仲間と活動開始した遠座さんの事例

2人目のゲストは定年後も嘱託社員として「大阪ガス」で働きながら「特定非営利活動法人健康・生きがい就労ラボ」の代表を務める遠座俊明(おんざ としあき)さん。「超高齢地域社会を生きる企業人の進化」がテーマです。

遠座さんは50代後半に差し掛かったころ、「定年後どうする?問題」に向き合い、定年後の人生をどう充実させるかと考えたそう。

まずは全体像を把握しようと、高齢社会についての検定に挑戦。医療・介護・年金の社会保障制度の課題を知り、検定を受けた仲間と何をすべきか語り始めます。

 

自治体のまちづくりのメンバーとして提案、厚労省も太鼓判で他地域にも展開

そのころ宝塚市で、“お互いさまのまちづくり”として縁卓会議メンバーの公募が始まっており、遠座さんは学んだことを活かそうと仲間たちとともに応募。未来への願いを込めて「健康・生きがい就労」部会づくりを提案したところ、見事採択されました。

“動かないから動けなくなる、使わないから使えなくなる”ーこれが認知症、要介護になる最大の原因と言われており、活動寿命を延ばすために「社会性の衰え」(ソーシャルフレイル)を予防する必要があるーその考え方を具現化することにチャレンジ。

「プチタイム就労」として、人手不足に困る介護や保育の現場でマッチングする事業を開始します。これは最初の3ヶ月はお試し、よければ互いに継続するという取り組みで、未経験のシニアでもOKというもの。

このトライアルは2020年度「厚生労働省 老健局長 優良賞 自治体部門」を受賞。他地域にも展開していくことになり、「特定非営利活動法人 健康・生きがい就労ラボ」を立ち上げ、2021年からは摂津市などで健康・生きがい就労トライアル事業を開始しています。

遠座さんは、現役で働きつつ地域活動を並行することをいかに会社や上司にアピールするかについて「上司の定年後問題(自分事)として伝える」、「企業の社会貢献、CSR,SDGsの活動に役立つと伝える」、「超高齢化する社会に企業が対応するノウハウ・社外ネットワークづくりに役立つと訴える」とアドバイスしてくださいました。

 

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お二人の話を受けて、ナビゲーターの広石さんからは、「地域活動を難しく考えるのではなく、少し外に出てみて声を掛け合ったりするだけでもネットワークは広がっていきますよ」と背中を押してくださり、受講者の皆さんも、事例紹介のお二人が、数年で実現した地域活動の広がりに刺激を受けた様子でした。

▼入門編第1回 アーカイブ動画

 

入門編第2回 地域づくり20年の大先輩を知る ~つながり・支えあいを生み出す仕組み・仕掛け~

20年前、3人の仲間と立ち上げた団体の活動が、寝屋川を支える存在に

入門編第2回のゲストは地域づくり20年のベテラン団体「寝屋川あいの会」代表の三和清明(みわ きよあき)さん。

阪神大震災当時、復興支援に関わり“まちづくり”に関心を持った三和さんは、定年後、寝屋川市が募集していた住民懇談会の委員に応募・参画し、市民の要望と行政の現状を知ったのだそう。

 

 

たった3人で始めたNPOの活動から“寝屋川で欠くことのできない存在”へ

そんな経験から、定年退職から3年後の2001年、仲間と3人で、「寝屋川あいの会」を立ち上げ。

当時は“ボランティア”は無償が当たり前の時代でしたが、事業を継続するために地域通貨を活用し、少額の謝礼が発生する「有償ボランティア」の仕組みを導入します。

2009年には、介護保険の利用有無に関わらずあらゆる相談に対応すべく、寝屋川で高齢者支援を行っている約20の活動団体と連携し「寝屋川高齢者サポートセンター」を立ち上げ。2019年には総支援時間は23,360時間と、今や“寝屋川に欠くことのできない存在”として行政の立案する地域福祉計画にも参画し、方向性を一緒に考えているそう。

かつてパナソニックで働いていた三和さんは、住民主体の活動支援の活動を事業経営”と捉えて、そのポイントを「ミッションの共有」「チームワーク」「地域との連携」「情報公開」の4つにまとめ、解説してくださいました。

 

パナソニックの現役社員、藤村さんが三和さんにインタビュー

 

後半では、元パナソニック社員で、いまは寝屋川の地域活動の重鎮となった三和さんに、2016年からサービスグラントのプロボノとして活動している現役パナソニック社員の藤村英樹(ふじむら ひでき)さんが、インタビュー。

 

 

 

Q:企業出身者ならではの“有償ボランティア”のアイデア、当時受け入れられたか?

Q:行政・社協と住民活動が、目指す方向に対してうまく協働するコツは?

Q:やる気があるのに周りがついてこない?ひとりよがりにならないために

Q:継続する組織に必要なものは?

など、三和さんの経験に基づく活動や地域づくりのコツについて、現役世代へのバトンとなるお話を引き出していました。

三和さんは「自分が定年後、地域に貢献したいと思うなら、現役時代から早めに地域に飛び込むことはとても大事。」とアドバイスしてくださいました。

 

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ナビゲーターの広石さんはまとめとして、地域活動に参加するコツとして「自分を生かす」「聴き合う」「役割を見つける」「つながる」の4つをポイントとして紹介し、受講者からも「現役時代から地域デビューする大切さがわかった」「勇気をもらった」といった声をいただきました。

現役社会人、また定年直後で地域活動をしていきたいと考えている方はぜひ入門編第2回の動画をご覧ください。

▼入門編第2回 アーカイブ動画

 

 

入門編第3回 地域の未来をプランニング ~身近な場所ではじめる地域活動~

市民が対話し、市民が課題を解決する関係を見守り、伴走してきた社協マン

 

 

第3回の1人目のゲストは阪南市社会福祉協議会の事務局次長・生活支援コーディネーターの猪俣健一(いのまた けんいち)さん。

 

 

「牛乳一本3000円」住民のひとことから始まった助け合い活動

1つ目の事例として、阪南市の舞校区での有償での支え合い活動の立ち上げプロセスを紹介してくださいました。

きっかけは「牛乳一本買うのにタクシーで3000円かかる」という住民懇談会でのひとりの参加者の発言。それはまずいとみんなが受け止め、地域を知ろうと住民主体のマップ作りが始まったそう。

そしてエリアの実際の声を聞くべく、民生委員と一緒に独居高齢者の調査を開始。100人以上に話をお伺いし、出てきた結果をもとに地域でどんな活動ができるかを話し合い、生まれたのが有償生活支援と移送サービスでした。

 

地域の高齢者や障がい者を支援する「子ども福祉委員」。子どもに変化も

ふたつめは、市内の小中学生たちが地域の高齢者や障がい者の困りごとを助ける「子ども福祉委員」の紹介。小中学生にも町の担い手になってほしいという願いから、2017年に、市内の1校12人からスタート。買い物支援、換気扇掃除、草抜き、家具の移動など、ヘルパーさんにはお願いできない「ちょっとしたお手伝い」をいきいきと自分たちで考え実行し、2020年には4校78人に拡大。全国的にも大きな注目を集めています。

2つの事例を通して伝えたかったこととして「ニーズの丁寧な調査」「見える化」「子どもは地域の宝」の3点であり、「学ぶ・知る・気づく」「話し合う」「計画を立てる」「実行する」のプロセスを、時間がかかっても住民たちでやるプロセスが大切ですと締めくくりました。

 

徹底的な分析でコミュニティビジネスを成功させる中間支援NPO

 

最後のゲストは特定非営利活動法人SEINの宝楽陸寛(ほうらく みちひろ)さん。

SEINは「役割と稼ぎが巡りめぐる地域社会の実現」を目指した中間支援団体で、現在は泉北ニュータウンのエリアマネジメントや地域づくりに力を入れています。宝楽さんたちがどのようにまちづくりを支援しているか、そのノウハウのエッセンスについて事例を元に共有してくださいました。

 

地域活動の進め方は「分析、共有、設計、実行」の段階があり、いつも宝楽さんた
ちは困りごとの原因分析にかなりの時間をかけ、問題を特定し、そこで論点化して地域や仲間に共有します。
その後、やっと事業の構築につなげるそうです。

「買い物が困難な人が多い」と相談されたときも、65歳以上の人口、うち要介護認定者数、1人暮らしの人数、免許返納者数などを洗い出してみると、買い物が困難な人たちもさることながら元気なお年寄りがどう地域デビューするかということも大切な課題であることがわかることがあります。

また、ひと口に「ニュータウンには高齢者が多い」と言っても、その度合いや課題は校区ごとに見ると様々です。縦軸に「高齢者率」、横軸に「5年後の子ども人口の伸び率」とし、各校区をプロットすると、高齢者が増え子どもが減っているエリアもあれば、高齢者が減り子どもが増えているエリアもあり、校区ごとに細分化して問題設定する必要があるとわかります。

そのように地域ごとの課題を細かく探りながら支援した例として、茶山台の使われなくなった集会所を図書館に生まれ変わらせ、新旧の様々年代の地域住民が交流するコミュニティに育っていった事例や、企業と市民が連携した泉が丘広場の事例について事例の紹介を進めました。

 

「維持しよう」「成功させよう」と思わなくてよい

質疑応答では様々な質問が寄せられました。たとえば「どうやって活動を継続させていったらよいのか」と問いには、宝楽さんは「“ほっとけない”から始まって、ニーズがあれば広がっていくもの」、猪俣さんも「最初から維持したいと思わないほうがいいと思います。必要なかったらなくせばいい。必要があれば考えてやったらいい」と回答するなど、受講者の心を軽くするアドバイスをたくさんくださいました。

 

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お二人の話を受けて、ナビゲーターの広石さんからは、先回りして心配せず、気楽に地域の会合に参加してみればよいと「気兼ねせず断り・断られる関係性づくり」を提案。

実践編ではみんなで声を上げて深めていきましょうと締めくくりました。

 

▼入門編第3回動画 アーカイブ動画

 

入門編第3回ではグラフィックレコーディングによってゲストやナビゲーターのお話をまとめています。(画像をクリックすると全部で15ページのグラフィックを確認できます)

 

未来の地域活動を具体化する仲間を募集します!

大阪ええまちアカデミーでは「実践編」に向けて、これから地域活動を立ち上げる実践者とともに取り組む仲間を募集します。

・地域活動を新たに取り組む実践リーダー(※)と一緒に活動の具体化に向けて考えたい

・いずれ自分も活動を起こしたいと思っているが、まずは実践リーダーと一緒に取り組んで学びたい

・実践リーダー(※)が提案する地域活動のプランを聞いてみたい

(※)実践リーダーとは、大阪ええまちアカデミー「実践編」に向けて、実践プラン提案書を提出した方です。実践編での取組として採択された方が実践テーマ共有会【2021年9月5日(日)開催】当日に発表します。

という方は以下のリンクから参加方法をご確認ください。

 

「実践編」参加について詳しくはこちらから

 

 

 

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