ええまちづくりのええ話

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ママボノプロジェクトで得た力―営業資料、自信、仕事のスキル、そして人との縁…一年たっても色あせない出会いから見つけたものとは―

2022年11月22日

「老若男女、障がいの有無を問わず沢山の方がチアで自分を元気づけ、その元気さで周りを元気に!」という思いを形にすべく、2010年に立ち上がった「オトン・オカンチアリーダーズ」。そのメンバーと、「ママボノ」チームが出会ったのは、2021年10月のことでした。

育休中や離職中の子育て女性たちが、仕事復帰に向けたウォーミングアップと同時に社会貢献活動を行える場、それが「ママボノ」(ママ+プロボノ)。

2021年10月から同年12月までの約2か月間のプロジェクトを通じて、今後も大阪府内に「オトン・オカンチアリーダーズ」プロジェクトを広げていくため、協働パートナーに活動の魅力や価値を伝えるための資料作成に取り組みました。

あれから1年…関わったメンバーはその後どうしているのか、プロジェクトの成果物である資料はどのように活用されているのか、座談会を開催して、お話を伺いました。

(座談会実施日時:2022年10月4日)

座談会参加者:

ママボノメンバー 山野井 真由紀さん 石川 奈穂子さん

オトン・オカンチアリーダーズ 石原 由美子さん(代表) 明野 るみこさん(リーダー) 栗山 尚子さん(リーダー)

「オトン・オカンチアリーダーズ」の活動紹介・プロジェクトの背景と取り組みの様子はこちらから

成果物である「営業資料」はこちらからダウンロードできます

あれから一年…プロジェクトを終えて、それぞれの歩み

―まずはママボノメンバーの皆さんの、プロジェクト後の活動・仕事などの近況をお聞かせください。

山野井さん:プロジェクト中は離職していましたが、今年の4月からフリーランスとして、仕事を再開しています。プロジェクトの際は0歳だった子が1歳になり、保育園に通っています。

石川さん:今年の5月に復職し、育休前と同じ部署で働いています。いろいろと新しい仕事にも取り組んでいます。また、GRANTという社会参加プラットフォーム(https://grant.community/)でも活動をしています。

―オトン・オカンチアリーダーズの皆さんの近況はいかがでしょうか。

明野さん:コロナの影響も収まってきて、少しずつイベントが始まってきていると思います。コロナ前のようにたくさんのイベントが元通り行えるようになるのはまだまだですが、一つ一つを大切にしたいと感じています。

先日、敬老会にオトン・オカンの活動として行かせてもらったのですが、とても喜んでもらえたんですよ!こちらもすごく嬉しい気持ちになりました。こうした人との繋がりは、コロナ禍では忘れていた感情でしたが、再び感じました。これからこうした機会が増えていくことを期待したいです。

栗山さん:ママボノのメンバーに再会できて嬉しいです。一年前は、神戸のレガッタや卓球場にも来ていただいて、パワフルやな~!と思ったのを思い出します。

石原さん:一年前のプロジェクトで、ママボノの皆さんのお陰で素晴らしい資料ができたので、その資料をそのままお渡しする企業さまや団体さまも増えています。網羅性に富んだ資料を作っていただいたため、必要な部分を抜粋して活用することもできて、すごく助かっています。また、プロジェクトがきっかけで、昨年度末に大阪ええまちプロジェクトののイベントにも登壇し、そこでの輪が広がったことも有難いと思っています。

オトン・オカンチアリーダーズは、株式会社JUMPS(ジャンプス)という組織で進めていますが、一般社団法人の生涯チアダンス普及協会を立ち上げ、そちらでシニアのチアダンスや、キッズのチアダンス、障がいがある方向けのチアダンスなど、それぞれの講師の養成講座を行っています。

石川さんにもお知り合いをご紹介いただいたりしていますが、近くにお住いのママボノメンバーもいらっしゃることで、輪が広がっていることが嬉しいです。今でも皆さんそれぞれ活動を見に来てくださったりしています。

 

プロジェクトを通じ、普段の活動では知り合えないママボノ世代の方々と「仲間」になった

―皆さん相変わらず精力的に活動されているんですね!プロジェクトに関わっていた当時を振り返って、支援を受けようと思ったきっかけや、参加のきっかけ、印象深いエピソードなど教えていただけますか。

明野さん:ママボノメンバーの、自分たちのことのようにすごく一生懸命取り組んでくださる姿にびっくりしました。「よその団体」という意識ではなくて、まるで自分のチームのように熱心に取り組んでくださいましたし、お子さんも連れてきてくださったりしました。そうした熱意に圧倒されて、こちらのほうが、頑張らないといけんな!という気持ちになりました。

石原さん:自治体との枠組みの中でオトン・オカンチアリーダーズがプログラムを提供する機会や、青少年の財団法人との取引などが増えつつある中で、オトン・オカンの活動内容についてしっかり企画書に表現し、それを営業資料として提出して、検討していただく判断材料になるものが欲しいなと思っていました。しかし仕事をやりながらではなかなか手が回らず、またメンバーもシニアが多いことから、企業で働いているママボノの見識やノウハウを駆使していただいて、そういったものが作れないかなと思ったのがきっかけでした。

プロジェクトの結果、期待を超えるものが出てきて、感謝しています。オトン・オカンの面白さや魅力というものを、客観的な視点で文章にまとめていただけたのが、すごく有難かったなと思います。ママボノという仕組みに参画しようと思われる方の意識の高さを感じましたし、皆さん本当に優秀な方々ばかりでした。

私たちは独自の活動をしているので、企業で働く方々とは知り合う機会がなかなかありませんでした。そういった意味でも、知り合うきっかけをいただき、その人となり、人柄にすごく刺激をいただきました。明野さんと栗山さんとは、「素晴らしいね」といつも話していました。今まで私たちが活動している世界ではないところで知り合わせていただいて、プロジェクトを通じて仲間として交流できたのは、すごく刺激的であり、有難かったです。

明野さん:オトン・オカンのチアダンスを見たことがある友人が、総会に出てほしい、敬老会に出てほしいと言ってくれることがあるのですが、そうした会を主催している方々からすれば、私たちが何者かわからないわけです。今までは口頭での説明や、踊っている動画を見ていただくことで、これなら来てほしいです、となっていました。それが、プロジェクトで素晴らしい資料を作っていただき、口頭でしか伝えられなかった部分が文字になることで、自信をもってアピールすることができるようになりました。

団体のエネルギッシュな魅力を伝えられる成果物を目指した

石川さん:営業資料を作成するためのプロジェクトの一環で、オトン・オカンチアリーダーズのことを知るために、石原さんからのご紹介で、大阪の小学校の放課後の預かりを行っている財団の方にお話をお聞きしました。実際にオカン・オトンチアリーダーズに放課後預かり中のレクリエーションの1つとして、チアダンスの体験教室を依頼された方でしたが、依頼した理由をお伺いした際に、「チアダンスもやっている高齢者もいるというのを、子どもたちに知って欲しかったからです」とおっしゃっていたのが、プロジェクトの中で一番印象的でした。元々、別の高齢者チア団体さんの事をTVで知り、関西にも同様の団体がおられないか検索したところ、オトン・オカンさんを見つけられ、お声がけされたのだそうです。お話し下さった方も、お年が上の方でしたが、”世の中一般に抱かれる高齢者のイメージを壊したかった、こんな事してる高齢者だっているんだよ!という、多様性を子供に学んでもらいたくてお声がけした”との事でした。多様性の事例として選ばれたという事が意外で印象に残っています。これは、オトン・オカンさんが、単に珍しいとか楽しそうなどというだけではない、奥深い価値をもつ団体であるという事なのではないでしょうか。私自身、子どもを育てながら仕事をしていて、女性の生き方や在り方が変わっていくのを経験していますので、そういったことをおっしゃる方々がいろいろな分野にいらっしゃるというのは、心強く素晴らしいなと感じました。

山野井さん:プロジェクトに参加して、これまでのシニアの方に対する印象を、いい意味で一新させられました。こんなにエネルギッシュなんだ!と私たちのほうが元気をもらい続けていた気がします。イベントに子どもも連れていかせてもらったことがありますが、一緒に行った長男も次男も、今でもチアリーディングを見かけると、また行きたいなと言っています。幼児の記憶にも残っているんだな、子どもにとってもいいきっかけになったな、と感じました。また、私自身が家族以外の方々と関わる姿を子どもに見せられたのも、良かったと思います。ぜひまたイベントに参加したいです。

栗山さん:私たちの世代は孫も大きくなっていて、なかなかチアダンスを見に来てくれないのですが、ママボノの皆さんがお子さんを連れて見に来てくださったことで、踊りがいを感じました。見てくださる方がいるということで、踊りも洗練されたのでは?という気がします!

 

成果物の営業資料を大活用中!自信をもって「これが私たちの団体です!」と言えるように

―プロジェクトの成果物である、営業資料の活用状況について教えてください。

石原さん:先日ある勉強会に参加しました。男性の社長が多い勉強会だったのですが、その参加者のお一人にオトン・オカンの活動についてお話したところ、とても興味を持ってくださいました。その方はリタイアして詩吟の会を主催されているということですが、メンバーは男性ばかりですが、全員チアダンスの活動に入れたいです!とおっしゃっていました。そこで資料がほしいと言われたのですが、プロジェクトで、詳しい資料とは別に、両面一枚物の資料も作っていただいたので、それをぱっと渡すことができました。

内容の濃い分厚い資料と、参加希望の方にサッと渡せるメンバー募集用の一枚物の資料に分けて作成いただいたので、企業向けには活動内容が網羅的にわかる前者の資料を、メンバー希望の方にはぱっと渡せる後者の資料をと、使い分けつつ、活用させていただいています。企業さまには6件新規渡しました。またメディアからお問い合わせをいただいた際に、提出する資料として活用させていただきました。メディアからの問い合わせは4件ほどありました。今までは、活動内容を喋り倒して説明する!という方法しかありませんでしたが、洗練された、かつ網羅性のある資料を作っていただいたので、外向けにも自信をもって提出することができています。これを見ていただければオトン・オカンの活動がわかります!と言えるので有難いです。

栗山さん:メンバー募集の一枚物の資料は、私も数え切れないくらい渡しています。

石原さん:ぱっと渡せるのがいいですよね。後で送ります、というと熱量が下がってしまうこともありますが、その場で「これを見ておいてください」とも一枚物で言えるのがいいなと思います。

自らリーダーに立候補したり、プロジェクトで使ったデザインツールを復職後に生かしたり…ママボノの経験で得た自信やスキル

―プロジェクトで作った資料を、実際に使っていただいているのを聞くと、やってよかったなあという気持ちになりますね…!ママボノに参加してみて、山野井さん、石川さんは、ご自身や周りの方々に、何か変化はありましたでしょうか。

山野井さん:私はもともとリーダータイプではないのですが、今回プロジェクトでリーダーを務めました。暖かく協力的なメンバーと一緒で、チームのみんなで協力しながら進めていくことができ、こういった「みんなの意見を聞きながら進めていく」というリーダーのやり方もあることを学び、リーダーになることへのハードルが下がりました。そういった経験があったので、今年長男が小学校に入ったのですが、その保護者会の会長に自ら手を挙げて務めることになりました。自分は社会貢献的なことが好きなのかなと改めて感じる機会にもなった気がします。

周りの変化としては、子どもたちが今でもオトン・オカンの話をしてくるので、家族みんなで活動に関心をもってくれたのが良かったなと感じています。

石川さん:プロジェクトでCanvaというデザインツールを使ったのですが、そのスキルがそのまま復職後に生きています。現在、会社の社内教育をオンラインで実施することになり、その動画のサムネイルをCanvaで作っています。ママボノのプロジェクトがきっかけで、久々に別のプロボノの募集についてみてみると、動画編集を依頼されている団体が少なくなく動画編集のスキルを磨きたいという気持ちが出てきました。それに背中を押される形で、会社のデジタル社内広報のメンバー募集にも手を挙げることができました。業務扱いで動画編集を学べるということで楽しみにしていたのですが、動画編集だけでなく、企画やヒアリング、記事の執筆なども手掛けることになりました。ママボノでの経験、スキルがフルに生かせているなと感じています。

 

興味を持ってもらえる喜びをパワーに…プロジェクトで客観的な目線が入ることで磨かれた団体の活動

―オトン・オカンチアリーダーズの皆さんには、何か変化はありましたでしょうか。

栗山さん:やはり自分たちは踊るために集まっているので、今回のプロジェクトで第三者の目が入ったことで、違う踊りになってきたな、という変化を感じています。

明野さん:オトン・オカンのメンバー全員が、プロジェクトでできた資料を目にしているわけではないのですが、プロジェクトの中で、メンバーにアンケートを取っていただいたことがありました。そうした機会を通じて、「自分たちに興味を持ってくれている人がいる、追っかけてくれている人がいる」という実感はメンバーも持っており、こんなに一生懸命見てくれる人がいるのは嬉しいなと思っています。出来上がった資料を目にしている私としては、やはり私たちのポリシーが、言葉としてしっかりしたものになったということが嬉しいです。今後何を聞かれても、安心してオトン・オカンの活動をやっています!と、今まで以上にはっきりと言うことができます。

石原さん:栗山さんやあけのさんが、すごく喜んでいるのを見られて、私自身もとても喜ばしかったです。ママボノのメンバーの方も、そのお子さんもとても可愛らしく、その出会いがまず嬉しかったです。客観的な目線で資料を作っていただいたことで、活動を継続していく中での自信につながってると、力強く感じています。今までは独自のやり方でいろいろな企画を進めていましたが、ママボノのプロジェクトを通じて、プロジェクトの進め方についても勉強になりました。もともと使っていたCanvaも、プロジェクトをきっかけに本格的に使うようになり、効率が上がりました。

家庭に仕事に社会活動に…女性が活動するために必要なこととは

石川さん:石原さんに質問があるのですが、家庭と子育てと仕事の切り回しはどのようにされているのですか?私は復職して時短勤務をしていますが、新しい仕事もやりたいし、プロボノもやりたいし、ただ全てをやろうとすると時間がなくて、そこに応えられないのが悔しいと感じています。

石原さん:難しい問題ですよね。私は企業でお勤めの石川さんと違って自営業なので、自分の裁量で時間の使い方を自由にできるため、なんとかやれているところがありますが、企業においてフルタイムで働いている女性の方は本当に大変だと思います。やりたいことがたくさんあって、それができない悔しさもわかります。

助けてくれる、協力してくれる仲間を作るのが一番ではないでしょうか。そうした方々を動かしていくための責任感や、リーダーシップをどのように作るかですが、私自身も日々いろいろなやり方を勉強しています。「これだと乗ってこなかったな、協力してくれなかったな」というトライ・アンド・エラーをくりかえしながら、迷いながら、うまくいかないことばかりですが、なんとかやっています。周りの方々にどれだけ協力いただけるか、大義名分や魅力的な活動であり続ける努力が大事だと思います。

ママボノは続くよどこまでも?!プロジェクトでできた縁を今後も繋いでいく

石原さん:一つ提案ですが、ママボノプロジェクトがとても素敵だったので、今回知り合ったママの方々やお子さんと一緒に、何かイベントで踊れないかなと考えているのですが、いかがでしょうか。

明野さん:石原さんの思い付きはいつも素晴らしすぎてびっくりします。そういう思いつきを、傍で手伝う方がいつもいらっしゃるんですよね。現在は栗山さんが手助けしていますが、何十年とオトン・オカンの活動が続いてきている中で、その都度傍で一生懸命手伝ってくれる人がいる印象です。生まれながらに人を惹きつける魅力があるんでしょうね。お手伝いする側も、わくわくしながらお手伝いしているという感じです。

石原さん:ママボノのプロジェクトは本当に喜ばしかったので、せっかくお知り合いになれたところ、もう少し何かでご一緒できたらと思ったので。親子チア、オトン・オカン三世代チアなど企画出来たら楽しいかなと思います。

山野井さん:私の上二人の息子はオトン・オカンの活動を見学していますが、練習にも参加したいと言っているので、喜びます。三人目も歩けるようになったので、参加させたいです。

石川さん:もともと家が近いので、このまま関係が途切れるのは寂しいなと思っていました。下の子は踊るのが好きですし、近隣のお母さんやお子さんにもお声がけできると思います。会社の若い世代にも声を掛けられますし、また会社のイベントとしても、オトン・オカンの皆さんにチアを披露していただければと考えています。

先月ママボノの10周年の基調講演の話の中でも、「子どもを産むと、世の中のサービスを受ける側に回ってしまい、社会との繋がり方が消費をすることになってしまう」とおっしゃっていました。仕事でキャリアを積んできた女性が、出産後は「〇〇ちゃんのママ」になってしまい、また育休に入り、仕事を離れることで、何かを生み出したいという欲求はあるものの、それを実現するための機会に触れることが少なくなってしまうのだと思います。この感覚は、仕事をリタイアされた高齢者の方にも言えるのかなと感じました。オトン・オカンの皆さんと、私たちが繋がったのは、置かれている環境が近かったことで、相性も良かったのかなと思いました。

 

編集後記

プロジェクトから一年経っての座談会でしたが、ご参加いただいた皆さまが生き生きと語ってくださったのがとても印象的でした。プロジェクトの成果物である営業資料が、その後しっかり活用されており、団体の皆さまの自信にも繋がっていることを知ることができて、とても嬉しく思っています。

参加したママボノメンバーの皆さまも、プロジェクトを通じてリーダーを務めることへの自信を得ていたり、仕事に生かせるスキルを得ていたりしていることを知り、プロジェクトへの参加が、良い変化の起こるきっかけになっていたことがわかりました。

また、この座談会中に、団体メンバーとママボノメンバーで何かイベントをやりましょう!というお話があり、このプロジェクトにおける出会いが、お互いにとって得難く、大切なものだったことを改めて感じさせられました。

今後も二つのチームのメンバーが、同じ「仲間」として、縁を紡いでいただくことを応援しています!

 

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