最初のお声がけは敷居を低く。「喫茶店ごっこしませんか?」から始まる西山田ふらっとサロンの居場所つくり/第2回ブロック会議 住民主体の互助活動の事例紹介
2018年3月14日
大阪府内の高齢者の介護予防、生活支援、生きがいづくりなどに関わる市町村担当者・生活支援コーディネーターなどが、住民主体の互助の具体的な活動事例を学びながら、情報共有と関係者間のネットワーク強化を図る第2回ブロック会議(北)が2017年11月28日に開催されました。
住民主体の互助活動の事例として、西山田ふらっとサロン(吹田市)の代表・尾浦さんにお越しいただき、吹田市のニュータウンの中で高齢者の居場所づくり、三世代交流を目的とした活動ついてお伺いしました。
西山田ふらっとサロンの尾浦さん
西山田ふらっとサロンの多様な活動内容と仲間つくりの方法
西山田ふらっとサロンは地域のおしゃべり広場として、皆さんがいらして居場所になったらいいなと思って運営をしています。火〜金の10時から16時まで、高齢者に限ったわけではなく、赤ちゃん連れで来てもらってもよいし地域が元気になることが目的の施設です。
西山田ふらっとサロンを支える仲間達(ボランティア)は74名おります。
運営委員会で10名が月に1度集まってふらっとサロンのこれからのことを考えています。人数が多いのは喫茶ボランティアです。ボランティアへお誘いする際に、皆さんには大層なことは申し上げていません。「喫茶店ごっこしませんか?」とお声がけしています。身体が弱ったとか家庭にご不幸があった方も、この場所があることで元気になって下さるかなと思っているので、そういうことで喫茶ボランティアを運営しています。足腰がしっかりしている元気な人、担ってくれる人、サロンに来て元気になっている人みんながボランティアだと思っています。
広報部では、2ヶ月に一度、近隣のご家庭に2500部、サロンについて知らせる広報誌をポスティングしています。ホームページ部は、まず活動に関心のある方がふらっとサロンがどんなところだろう?と見て下さるのがホームページだと思うので、ブログで5、6人のメンバーが代わる代わる投稿しています。一番のターゲットのご高齢の方はウェブやブログはまだまだ馴染みはないのかもしれません。
ギャラリー部は地域の方々の作品をサロンに来られた方に見てもらうために、1ヶ月ごとにギャラリーを無料でお貸ししています。半年から1年先まで予約で埋まっていて、夏休みは小学校の子どもたちの絵画などを飾らせて頂いています。
文庫部は、皆さまに「欲しくなったら差し上げます。その代わり、いらなくなった本を持ってきて下さいね。」と呼びかけています。そうすると本が結構入れ替わって、サロンに来られる男性の中には本を読むという口実で来て下さるご高齢の方もいらっしゃいます。
大工ボランティアは予算もないので、どこかで事務所を閉めるという話を聞くと、廃材や事務所の椅子をもらってきて、使いやすく手作りで改良して下さいます。
サロンでは出来るだけ季節行事を取り入れています。七夕の時には京都まで金平糖を買いに行ってサロンに来られた方に食べていただくということをしています。
「手弁当の日」もしています。私たちはまだ昼食や軽食を出す実力がないのですが、家からお弁当を持って来てもいいし、パンなど購入して持って来てもいいし、一緒にお弁当を食べましょうということで始めた活動です。当初は手弁当の日を決めていたのですが、そうするとその日だけが手弁当の日になってしまうので、今は毎日が手弁当の日ということで楽しくわいわいやっています。
ボランティアの登録会は1年に1度です。団体の悩みとしては、新しい人が入って来ないこと。新しい人が入ってこない理由や、入ってこようとするときにためらう理由として「どうせ私が行っても、先にグループができていて居場所がないのではないか。」と言われる方は多いです。ずっと家にいてこれからボランティアを始めようとしても「私なんか」と思われる方が一番多いようです。毎年ではないですが、各戸にポスティングをしますし、ポスターを貼ったりもしています。ボランティア登録会は、我々の研修会も兼ねてやっているのですが、ボランティアとして登録してくださる方が何名かいらっしゃいます。
研修会はとても大事なイベントです。喫茶店を運営しているので、一番大事なのは珈琲の入れ方です。専門家をお招きしたり、あるいは仲間の中で一番上手に入れられる人を招いています。珈琲の入れ方以外にも、地域の作業所などから講師を招いて傾聴のお話を伺うこともあります。運営を行うのに大切だと思っていることをやっています。
地域の行事には積極的に参加しようと思っています。盆踊りでは、ふらっとサロンのテーマカラーを用意して、「見る盆踊り」ではなく「踊る盆踊り」に協力したいと思っています。盆踊りに参加されている方に珈琲とカルピスを安く飲んで頂き、子どもにおもちゃ釣りを楽しんでもらっています。これは赤字になってしまう事業ですが、地域事業に積極的に参加するということを大事にしています。
子育て、孫育ての活動もしています。保育園の地域担当の保母さんや園長さんなどにお越しいただいて子連れで若いお母さんが来る場を運営しています。お母さんたちは自分のお姑さんの話、子どもの話をしてもらいながら、おばあちゃんの知恵と保育園の地域担当の保母さんや園長さんの話を聞いたりします。赤ちゃんが泣いたらボランティアのおばあちゃんが抱っこしてくれることもあって、お母さんからは好評です。おばあちゃんの年代にも若いお母さんや子どもといった新しい風が吹いてくるのでおばあちゃん、お母さん両方にとっていいのです。
介護予防のための体操を週に一度やっています。認知症サポーター養成講座でいらっしゃった作業療法士さんに始めてもらいました。今は素人ですが運営委員の皆さんが体操をやっています。ここに来ておられるおじいちゃんやおばあちゃんが17、8人、多い時で20人です。素人が普通の体操をしているだけなのですが、ここでお喋りをして今週の目標はこれです、と話すことが大切と言われて毎週通ってくださる方もいます。
どんな地域活動でも連携のあり方を探る
地域団体など諸団体とのお付き合いもしていて、文化祭の時にはお茶をお出しし、敬老会にもお手伝いに行きます。なぜそんな連携をするかというと地域の諸団体が大事だからです。ですがどこの傘下にも入らないようにしています。どこにも入らなければどこからも影響を受けない。でも、地域の活動は大事だから、連携はどんな形ででもご協力しています。敬老会の時にはお茶出しをしていますが、接待をするとか、準備をするとか、その辺りを5人程度でやっています。
サロンが始まって10年経ったので、10周年記念事業をやって居酒屋、おでんをやりました。地域の活動とは全然違うところで、地域の人の顔がみんな見えるといいな、フランクに話せたらいいなと思い、10周年の事業をしました。
サロンではお花見をやります。桜の下でお花見をしたり、10周年の記念事業として資金稼ぎのバザーをやりました。大事な子どもが高齢者を支えるなんておこがましいと思っていますので、子ども、子育て世代のためにこども祭りを企画しそこに高齢者にも参加してもらいます。このようなことをやると持ち出しになるのですが、街が元気になるためなら、と椅子づくりやワンピースを縫ったりしました。子どもたちは喜んでくれましたし、もっと良かったことは、これをすることでボランティアの出番が増えたことです。企画を立てる毎にこんなことが出来るボランティアがいるということが分かってきました。
「草むらはワンダーランド」といってサロンの近所にある西山田集会所で、2〜3ヶ月に1度、野鳥の会の高名な先生が、お弁当を講師料として来て下さっています。西山田地区集会所の庭の草を覗いてみようという会です。
資金を得るために手作りのブローチやエプロンを作って売ったりしています。 吹田には浜屋敷という古民家があるのですが、そこで商品を販売してお金を稼いで参りました。地域にある障がい者の作業所から無農薬の野菜やジャムを持ってきてもらいふらっとサロンで販売しています。少しでも儲けを出したいとは思うけれど、そのままの値段で販売しています。障がい者の作業所が地域にあることは、ありがたいことです。本当にありがたい。障がいを持つ方の人権を守らないとあかんと、自分の中の人権意識が試されます。地域の作業所とも連携して、共存して生きていけたらいいなと思っています。
CSW(コミュニティソーシャルワーカー)が月に2回、サロンで相談会をして下さっています。この方たちがいて下さるということで心を病んだ青年が何度か来たり、ご自身のことを相談にみえる方もいて、貴重な機会だと思っています。出かけないと相談できないというのではなく、地元で相談できて身軽に行ける。行くときは構えていきますが、ちょっと聞いてみようかなという心持ちで行けるので、ラッキーなことだと思っています。
つどう、つながる、つなげる! これを合い言葉に、次の10年を目指していこうと言っています。サロンのコンセプトはもともと3Tでしたが、ここに「食べる」を付け加えて4Tを柱にしています。
歳をとっても赤ちゃんも。認知症予防の活動、大人と子どもの農園など次々に出てくる夢をしっかり次につなげていきたいと思います。
西山田ふらっとサロンの拠点は今の集会所が取壊しとなりショッピングセンターに移転します。それを機に子ども、障がい者、子育ての場などを始めたいと思っています。
Q&A
Q:活動をはじめて10年が経過されているわけですが、元々の始まりの時の様子を教えてください。今の74名のボランティアはどうやって集まってきたのでしょうか。もしくは、集められてきたのでしょうか。最初のなりたちや活動のはじまりを教えて下さい。
A:集会所で運営委員会を持っていました。府のモデル事業で三世代交流と居場所づくりをやりませんか?というお話があった所から集会所の運営委員会がまずそのお話を受けました。忙しい方から抜けていって残ったのが私たちと、そこにはいなかったけど関心のある人をお招きして11名の運営委員が核になりました。
Q:尾浦さんは当時から関わられていましたか。集会所の運営と高齢者の居場所つくり、多世代交流もやる事が全く違いますし、やらなくてはいけない事も増えますよね?
A:高齢者の居場所つくりをやりましょう、という人達が分岐したわけです。元々集会所の運営委員会は集会所をどのように運営し、保全について話し合うものなので、全く違ったものが分岐していったというわけです。お話が来た時に、私個人はこれから必要だ、面白そうだと思ったのです。
Q:市の方からは自由に高齢者のための居場所を考えてと言われたのですか?
A:週3日間10時から16時の間だけ喫茶を開けて下さい。居場所として喫茶を開けて下さいということだけが条件でした。他にメニューや行事などは自由に考えて下さい、と行政からの制限は何もなかったです。
Q:アイディアを出しあったりされたと思いますがはじめはどのように内容を決めていかれたのですか?
A:誰も知らないのでお客さんがまず来られない、始めた当時は来られる方が少なかった。ボランティアの皆さんをまず集めて、ボランティアの皆さんに「同伴出勤して下さい、お友達を誘って一緒に来てね。」と言いました。その時にやっぱりこれから高齢者の居場所は大事ということで一生懸命ボランティアの皆さんが連れてきて下さりました。名刺も作って名刺を配ってサロンの事を知らせてね、と。今は名刺づくりが途絶えてしまっていますが。
Q:同伴出勤を続けている中でお客さんが定着されてきたのでしょうか?ボランティアの74名はすぐに集まられたわけではないと思います。どうやって声をかけていかれたのでしょう?
A:お客さんで来られた方に今度はボランティアされませんか?と声をかけましたし、お連れ合いを亡くされた方にはボランティアという形で中に入って仲間になって頂いて、無理強いではないけど「喫茶店ごっこをしようよ。」とお話をしました。研修に参加されたり、毎日の活動を通じて元気に変わっていかれます。活動の中で2つの目的があります。地域の人への働きかけと、私たち団体の中の仲間を増やして、お互いに助け合う、その両方かなと思っています。しっかりした人にも、若い人にも声をかけますが、今までボランティアした事が無い人に来てほしいと思っています。すでにボランティア活動をたくさんやっている方はうちのボランティアは二の次になるので、うちから違うボランティアに進まれるのも素敵だとは思っていますし、地域でのボランティアの入門編にしてもらったらと思っています。
Q:ボランティア登録会も開かれた運営をされているように思います。介護予防の体操のお話がありましたがどういうきっかけで始まりましたか?
A:認知症サポーター養成講座で作業療法士の鎌田さんがいらして、体育館で行けなくてもいいから地域で簡単な体操を広めていく、そういう事をしたいと仰ってくださいました。近くにも体育館があってプログラムもあるけれど私たちにはきつくてとてもついていけない。それ以前に体操をしたくても、体育館にいけないし、という方がたくさんいらっしゃるので、そういう人を対象に簡単な体操をしています。鎌田先生は体操もさることながら、時間を決めてお話することが大切ですよ、と。共感したので私たちもふらっとサロンでやりたいと、お願いして来て頂きました。
Q:人のご縁から始められたという事で、素晴らしいのは今でも続いていると言うことですね。プログラムがどんどん続いていて、これだけ活動が息長く続けられる秘訣は何でしょうか?
A:西山田地区は他市の方には分かりにくいと思うのですが 小学校区に1つ地区に公民館があって民間の館長が講座を作っています。ずっとまえから西山田地区の地域の人たちを上手に耕してくれていました。プロボノチームの人にも地域性を見てもらった方がよいと見学してもらいましたが、すでに地域の人たちで動く地域性があったという事。加えて、ボランティアが何かをする時に行政の方の姿勢がよかったと思います。「指図しない」大したことだと思っています。「あれやこれをするな。」と言われるとやる気を削ぎます。勝手にやっていたら、「いいことしていますね。」くらいの感じですかね。
Q:行政や生活支援コーディネーターとの連携で、ここは苦労しています、ここはうまくいっているのでご推薦できますよ、など、行政との連携で共有できるお話があれば。
A:西山田ふらっとサロンは多分うまくいっているのですよね。行政の方から市民団体は自主性を認めてもらっています。素人、市民がこんなことしたいよね、ということをやっている活動なので、市民が頑張っているのであればと見守ってもらっている感じかと思っています。
Q:スタッフを集める際、参加してくれる男性を集めるのは大変で、広報活動・人集めをどのようにされたのでしょうか?男性が参加しやすい工夫はありますか?
A:ボランティア・男性ボランティアを集めるのは西山田ふらっとサロンの場合、もの凄く敷居が低いのです。ボランティアしてみない?と。はじめはそれでいいと思っています。
Q:ボランティアさんの平均年齢はいかがですか。男性を増やすのが課題だと思いますが、継続させる上で若い人の力も必要かと思いますがどのように来てもらったらよいでしょうか?
A:平均年齢は67,8歳くらい。70歳手前の方が多いです。ボランティア募集については年に一回、ボランティア登録会を開催する時にポスティングをしていますが、これぞという若い人には「もう、来ないとあかんよ。」と迫っています。核になる人は、そうやって仲間に入ってもらいます。
男性は喫茶事業にはなかなかお誘いしづらいので、私の男性友達グループに声をかけます。男性コーラスのグループでクリスマス会に歌を歌いに来た時に声をかけたり、「男性だけでヨガするのはどう?活動のポスターはってあげるよ。」とか声をかけています。「うちの友達グループになっていって」と声をかけます。男性が地域に関わってもらうにはそういったところから始めます。すると、その内におばちゃんが何かやっている時に「力仕事をしようか?」と、言ってくださるのです。
有償ボランティアといえども報酬を払ってはいけない事になっています。若い人、優秀な事務が欲しいのですが働き盛りの人は報酬を払えないので参加していただくことができません。そのかわり、子どもたちのために子ども食堂を一緒に考えようとしています。私達の地域の若い人の中にきっと関心のある人もいるけど、なかなかボランティアには来てくれないと思っていましたが、声をかけてみると10人くらいのお父さん、お母さんが来てくれるようになりました。今後も声をかけていきます。
地域が仲良くなれるためには何でもやります。土曜日にサロンdeさろんという文化サロンをやりました。夕方にチーズとワインを食べながら開催したイベントなのですが、支援してもらっているプロボノチームにボランティア講座の講師としてお迎えしました。若い方10人くらいに集まってもらって、なぜプロボノという活動をしているのかをお話ししてもらいました。そうやって若い人たちも取り込む。皆で子ども食堂を考えようと言っています。
Q:ボランティア募集する時にポスティングや色々な工夫をされているのですが、よく我々も聞く話なのですけどボランティアさんが足りないといっても受け入れ側として体制が整っていないと長く続かずに辞めてしまうことがあります。受け入れの段階で工夫している事はありますか?また、社会福祉協議会に登録されているボランティア団体と関わりがあれば教えて頂けたらと思います。
A:ボランティアの受け入れは主に喫茶店、コミュニティ喫茶なので、その日からやる事があります。「1人で来てね」と言って誘っているので、お友達同士で一緒に入って来る方は少ないです。「仲良しのグループがあると入りづらい」と新しく入ってくださるボランティアの方に思われたくないので、そういったことが絶対ないようにしています。ボランティアの皆さんにも仲良しごっこはしないと言っています。私自身もそれを貫くために誰か特定の方とお食事にいくのも止めているのです。
長く続けていただく、受入れの工夫としては研修が大事だと思っています。ボランティアとして入ってくださる時の敷居は低いですけど、入ってからの要求は高いです。来てくれるお客さんの中には、心の病を抱えた方や認知症かなという方もおられます。そういう方々にどうぞ来て下さい、と宣言しているので、どういう風に傾聴し、寄り添えるかは大事なことです。
また、多様な方を受入れたい思いはありつつ、人のお話を聞くだけでくたくたになることもあります。そんな時は、「私達、誰がきてもよいと言ったよね。コミュニティ喫茶で誰が来てもらってもよいと決めたよね。」ということを自分にも言い聞かせて、みんなにも口にして確認をしています。
Q:運営費は現時点で赤字ですか?赤字の場合、個人的に出資されているのですか?
A:赤字ではありません。市の施設を利用しているため、水道代や光熱費の負担がないことも助かっています。
大阪府からのコメント:西山田ふらっとサロンさんは喫茶ボランティアから始まって色々な事をやってらっしゃる。CSWの相談会も面白いと思いましたが、ボランティアの声のかけ方が面白く、連れ合いを亡くされた方を見つけて声をかける。外に出る方であれば半年、あまり外に出ない方には2年くらいは待って「ちょっとお茶のみに来ない?」と声をかけるそうで、地域をちゃんと見ていらっしゃる。行政や社協もそういう人のことが気になっていると思うのですが、そういう方々に目を行き届かせている地域の団体だと感じました。地域のために役に立つことは何なのか、サロンを運営しながら考えておられる。一歩踏み出しておられる所が素晴らしいところだと思います。
大阪ええまちプロジェクトでは、西山田ふらっとサロンの「まちをつなぐ、明るくあたたかい交流の場。ITを有効活用して、運営をスマートに。」を応援しました。