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生活支援コーディネーターの役割とは?(阪南市の事例紹介)

住民主体型サービスの基盤整備や、ネットワークづくりにおける生活支援コーディネーターの役割を改めて考える機会として開催された生活支援コーディネーター養成研修。阪南市の事例紹介では、第1層の生活支援コーディネーターである阪南市社会福祉協議会の坂上尚大氏に支え合い活動の実例や、コーディネーターとして意識したポイント、地域との関わり方についてお話いただきました。

阪南市の概要について

難波から特急で約40分。海と山に囲まれた自然豊かな街。人口は約55,000人。市内には12の小学校区があり、小学校区ごとに福祉委員会という組織があります。高齢化率は30.1%と急速な少子高齢化が進んでおり、坂道が多いことから移動や買物が困難になる人も増えています。

 

地域活動のベースとなっている地域福祉推進計画

阪南市と住民、社会福祉協議会が一緒になって地域福祉推進計画というものを作っています。本来ならば行政側は地域福祉計画、 住民側は地域福祉活動計画を作ると思いますが、阪南市の場合は推進計画として一緒に作っているのが特徴です。

各小学校区で住民がつくる「ふくしのまちづくり計画」をベースに、住民懇談会や意見交換会を重ね、地域福祉推進計画を策定してきました。このような取り組みを阪南市では十数年続けてきました。

計画の重点的な項目の一つが、まちなかサロン・カフェです。誰もが集える場所を身近なところに作ろうということで進んでいます。現在は多機能化しており、コミュニティソーシャルワーカーと協働した相談窓口機能なども備えています。

もう一つが、くらしの安心ダイヤル事業です。こちらは専門職と住民が協働して見守りをする仕組みで、市内で約1,700人が登録。これも計画の中から生まれた事業です。

そういった地域づくりがベースにある中で、総合事業と生活支援体制整備事業についてどう取り組んでいくのかがポイントになります。

本来、総合事業というのはこれまで地域づくりと言われてきたものですから、地域づくりをするベクトルというのは一般の行政のベクトルとは逆方向と考えています。

つまり、身近な趣味の集まりとか、街中サロン・カフェとか、そういう活動から地域活動が進んで行き、やがてそれがB型の活動に発展していく。そのようなことが大事だということで、阪南市では「現行相当サービス」と「サービスB(住民主体による支援)」のみ行うこととなりました。

 

阪南市社会福祉協議会の特徴

生活支援体制整備事業の中でいうと、第1層の生活支援コーディネーターが平成28年度に1名配置されまして、地域に居場所を立ち上げたい、活動をしたいといった相談にお答えしてきました。

平成29年度の10月からは第2層のコーディネーターを2名配置いただいたのですが、その2名を社協としては正職員として、社会福祉士の資格を持っている専門職で雇って地域に出て行ってもらいたいという思いがありました。

そこで、第2層の生活支援コーディネーター分の費用と「我が事・丸ごと」共生の地域づくりの費用を合わせて、共生の地域づくり推進員という形で配置しています。従来の社協の地域支援担当のコミュニティソーシャルワーカーが3名いたので、それと合わせた5名が、第2層のコーディネーターの役割を持って地域にどんどん出て行く。それが阪南市社会福祉協議会の特徴です。

 

生活支援コーディネーターとして意識したポイント

その際に意識したポイントというのが、地域福祉を進めるための4つのサイクルです。

「⑴学ぶ・知る・気づく」ところからスタートし、その結果をみんなで「⑵話し合う」。そして「⑶計画を立てる」。その計画を「⑷実行をする」というサイクル。実行したらもう一度、最初に戻って…というサイクルです。

 

(1)学ぶ・知る・気づく

総合事業とは何か。介護保険制度がどう変わったのか。自分たちの生活にどう関係があるのか。それらを地域に出向いて学習会を開催し、伝えました。また、阪南市全域の地域ニーズを見える化するためにニーズ調査を行いました。

市内には要支援の認定を受けた方が約1,000人(平成28年度)。そのうちデイサービスかヘルパーを利用されている方が550人いらっしゃいました。担当ケアマネージャーさんに聞き取り調査をしてもらい、358名から回答を得ることができました。それを元に、第1層協議体で議論するテーマを決めました。

調査では「デイサービスやヘルパーのサービスを利用している主目的」などを調べました。入浴か、それとも介護予防か。それによって今後必要なサービスが変わってくると思ったからです。

ポイントは、地域に出向いてそこの地域の方々と一緒にサロンマップ作りやニーズ調査をすること。住民自らがニーズ調査をすることで、地域の困りごとを知ることができます。知ることで解決に向けた話し合いへと発展し、自分たちの地域をより良くしようという行動が生まれます。それが住民の主体性の芽ばえに繋がります。

 

(2)話し合う

第1層協議体での話し合いを平成28年度は毎月1回行っていました。平成29年度にはそれを2ヶ月に1回に減らしました。月1回集まってもなかなか話がまとまらなかったり、特にボランティアさんなどは意見を言いにくい雰囲気になってしまっていたからです。

これではまずいということで、協議体内に担当チームを作りました。1つが市民への啓発を進めるチーム。もう1つは担い手を養成するサービス従事者研修を企画する研修チーム。さらにニーズ調査の中で困りごととして多かった移動・外出支援の声に応えていく移動・外出支援チーム。

この3つを企画して協議体の構成員にそれぞれ入りたいチームに入ってもらいました。市民啓発チームはボランティアさんが中心、研修チームは専門職が多いです。移動外出支援チームは商工会とかシルバー人材センターの方に入っていただいています。

協議体での2ヶ月に1回の会議以外にも担当チームごとの話し合いを定期的に開催しています。その結果、啓発チームの中では、総合事業について知ってもらう講座を開こうということで多様な担い手と地域を知る講座を開催。研修チームでは協議体の構成員が中心となり、支え合い活動を実施していく際の知識や技術を学ぶ2日間の研修を行っています。この研修を受けらえた方には最終日に修了証をお渡しして、その方々を第3層生活支援コーディネーターとして認定をするということになります。移動・外出支援チームでは、阪南市内の移動・外出支援の仕組みを考えていこうということで、より詳しい方にも来ていただいて意見交換を実施しています。

資料でいうと水色の部分が第1層協議体、黄色の部分が第2層協議体になります。第2層と言うと小学校区などと決めてしまいそうになりますが、阪南市の場合は、第2層は活動する方々に決めてもらいます。自治会エリア、校区エリア、隣り合う自治会同士が組むエリアなど様々です。人口規模や課題も違うので、生活支援コーディネーターでは決めずに、住民の皆さんの中で自由に決めてもらっています。ピンク色の部分が活動団体です。協議体の中で実際に活動する団体が生まれたら、そこが第3層の生活支援コーディネーターとして調整役になり活動を進めていく、というのが阪南市の協議体の考え方です。第2層での話し合いは開催頻度などもバラバラですが、話し合っていく中で、「住民が主体となった訪問型の活動が必要だな」という話が出てきたり、自分たちの地域の困りごとをも再度考えるきっかけにもなっています。

地域づくりを進める専門職として住民の声に寄り添って、自分たちの地域を良くしたいという住民の主体性を大切にした話し合いの場作りをコーディネーターとして行う必要があると思います。また話し合いの場には多様な団体を巻き込む必要があります。巻き込むためには多様な団体の皆さんと一緒に学んだり気づいたりするところからスタートしなくてはいけないと思っています。

 

(3)計画を立てる

話し合ったことを計画にすることで、ビジョンの見える化ができます。社協は民の要として行政としっかり議論を行い、行政と社協は互いにビジョンを出し合うことが大切です。

私も行政に対して「ちゃんとビジョンを出してください」と思っていた時期がありましたが、どちらかに丸投げしないことが大事です。また、生活支援体制整備事業の評価の仕方は、地域づくりを妨げないものにしなくてはならないと考えています。

阪南市の場合は、1年間に居場所を◯ヵ所、協議体を何ヵ所立ち上げなければならないというノルマは一切ないんです。タスクゴールではなく、生活支援コーディネーターがどのように地域づくりを進めてきたのか、どれくらいの時間をかけてその地域に入っているのかという評価の仕方をしていただいているので、とても活動がしやすいです。

 

(4)実行する

通所型サービスBとして、平成29年7月にスタートしたまちなかの居場所は、NPO法人が運営されています。火・木・金は体操や学習会のプログラムを取り入れています。ニーズ調査の中で、入浴を希望される方よりも体操や介護予防、お話をしたいという声がとても多かったので、それを反映したプログラムになっています。

校区福祉委員会が中心となった取り組みもあります。訪問型サービスBとして平成30年1月からスタートしたこの活動は、主に一人暮らしの方を対象に、福祉委員会の方がいろんな団体と協働しながら、病院の付き添い、買物などの外出支援、お話相手や掃除のお手伝いをされています。

箱の浦まちづくり協議会では空き家を利用した居場所づくりや訪問型の活動をされています。こちらは自治会エリアの活動になります。

緑ヶ丘という自治会エリアでは、自治会だけでなくそこの老人クラブや福祉委員会にも入ってもらって協働による居場所づくりを進めています。毎月第4日曜日に集まり、みんなで議論して居場所づくりを進めることで、居場所でキャッチしたニーズをもとに訪問の活動にもつながっていくのではないかということで進めています。総合事業をきっかけに今までつながっていなかった団体同士が話し合うようになりました。

桃の木台小学校区では、「子どもも地域の担い手に」ということで、子ども福祉委員(※)が立ち上がりました。これに関しては第2層の生活支援コーディネーターが中心となって進めています。

ここの地域の福祉のまちづくり計画では、課題の一つに担い手不足が挙げられています。では担い手不足をどう解決するのかと考えた時に、子どもも地域の担い手になるのではないかと考え、第2層の生活支援コーディネーターと地域の民生委員さんが地域の中学校に呼びかけました。

今は12名の子どもたちが電球交換や家具の移動など、地域の高齢者のお手伝い活動を進めています。ゆくゆくは子ども福祉委員を阪南市内で広めていきたいと思っていて、社協の中ではすべての小学校もしくは中学校で立ち上がるようになればいいなというビジョンを持っているところです。

住民主体の地域づくりを進めるためには、4つのサイクルを生活支援コーディネーターだけではなく、行政、社協、包括、事業所などの団体や専門職の一人ひとりが意識をし、地域づくり我が事として考え、丸ごとつながっていくことが大事です。そのためには、専門職も、学び・話し合い・計画をたて・実行していくことが大切だと思います。

 

(※)大阪ええまちプロジェクトでは、子ども福祉委員の取り組みを応援をしています。

 

(質疑応答)

Q)子ども福祉委員について。興味深い取り組みです。教育委員会との連携はあったのでしょうか。また今後の計画についてもお伺いできますか?

A)まちづくり計画の声を吸い上げてできたのが阪南市の推進計画です。推進計画策定には教育委員会にも入ってもらっているので、バックアップをいただきながら中学校と連携してきました。私自身も昨年すべての小学校に福祉教育に関する聞き取り調査を実施しました。すると、一つの小学校から福祉クラブを作りたいので協力してほしいと言われました。桃の木台小学校の事例を伝えながら、市内の他の学校でも活動を推進していきたいと考えています。

 

Q)舞校区福祉委員会と箱の浦まちづくり協議会で実施しているサービスBについて。これらは総合事業が始まる前からある取り組みを総合事業として位置付けたのでしょうか。それとも総合事業が始まって新たに始まった取り組みなのでしょうか。また、利用者とサポートする側のマッチングは誰が行っていますか?市からの補助金はありますか?

A)箱の浦についてはすでにあった取り組みです。舞校区の支え合い活動は総合事業スタート後に始まった活動です。舞校区は坂が多く、買い物に困っている人は多かったので、総合事業が始まる前から買物支援に関するプロジェクトはスタートしていました。総合事業が始まったのをきっかけに、買物支援も生活支援に含まれるのではないかとなって生活支援に関する学習からスタートし、この1月から活動が始まりました。

マッチングをしているのはサービス従事者研修を受けた第3層のコーディネーターが主に調整役となっていますが、舞校区では民生委員さんが困りごとをキャッチして第3層のコーディネーターと話ながらマッチングしています。箱の浦にもサービス従事者研修を受けられている方はいらっしゃいますが、具体的にサービスBの活動としてはされていないので自分たちの活動として自由にマッチングされています。

市の補助については、訪問型の活動、通所型の活動それぞれに補助金があります。補助金をもらうための要項なども阪南市が作成しています。

 

Q)移動・外出支援の話し合いでは、地域ふれあいサロン自動車管理共同組合との意見交換をされています。そこに至るプロセスはどのようなものだったのでしょうか?

A)第1層協議体の中に移動・外出支援チームができたきっかけは、要支援の方のニーズ調査で移動外出を必要とする声がとても多かったからです。そこで協議体内に重点的に考えるチームを作りました。とはいえチーム内に詳しい人がいなかったので、福祉有償運送や道路運送法に詳しい方に来ていただき、住民同士の移動外出支援がタクシー会社などの営業を妨げにならないかなどをまずは学習することになりました。

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