ええまちづくりのええ話

事例紹介
第3回ブロック会議 地域・自治会と連携するコミュニティレストランを紹介するパンフレット制作の事例紹介

大阪府内の高齢者の介護予防、生活支援、生きがいづくりなどに関わる市町村担当者、生活支援コーディネーターなどが、住民主体の互助の具体的な活動事例を学びながら、情報共有と関係者間のネットワーク強化を図る第3回ブロック会議が開催されました。

 

堺市南部地域の泉北ニュータウンで、地域の自治会などと連携しながら、空き住戸・空き店舗を活用したサポート付き共同住宅やコミュニティレストランを継続的に運営している「NPO法人すまいるセンター」代表の西上さんにお越しいただき、プロジェクト型支援による成果物のパンフレットを、どんな思いで、どのように作ってきたのか、また今後パンフレットを活用してどのように互助活動に繋げていくのか話を伺いました。

 

地域包括ケアを進めるための「住環境」「食生活」支援

大阪ええまちプロジェクト事務局スタッフ(以下、事務局):

まずは西上さんの活動について教えていただけないでしょうか。

 

すまいるセンター西上さん(以下、西上):

すまいるセンターが活動している泉北ニュータウンは大阪府堺市南部に位置しており、昨年50周年を迎えました。少子高齢化が進んでいる地域であり、駅から遠く離れたところが特に激しく、空き家も多くなっています。

以前は「近隣センター」というニュータウンの中にある商店街には本屋さんや日用雑貨のお店など10数種類ぐらいの小売店が並んでいましたが、商売が成り立たなくなってしまい、残っているのが理容室くらいで、他はすべて空き店舗になってしまいました。

そんな状況で地域の自治会と連携して、平成22年度に国交省のモデル事業の採択を受けて、 高齢者が住み続けられる支援をやっていくための取り組みがスタートしました。

平成15年にNPO法人の認証を受けたのですが、任意団体としては、介護保険法ができる時(平成12年)に、現在の地域包括支援センターのような組織を立ち上げたのが発端でした。当時、私自身は地元で建築の専門家として、バリアフリーなどの住居の改築に携わっていました。副代表は社会福祉法人で介護保険事業全般を担当しておりまして、お年寄りのよろず相談所の形から始まりました。

近隣センターでの取り組みを始める前に、まず、大阪市立大学の先生と一緒に、私たちがモヤモヤしている思いを整理していきました。すると、今で言う地域包括ケアシステムのような図が出来上がりました。その中で、地域では「住環境」と「食生活」という2つの支援が必要というところに行き着いて、「住環境」整備として府営住宅の空き家を高齢者用の支援住宅として改装しました。また「食生活」の支援として、空き店舗を利用したコミュニティレストランと配食サービスを実施しています。

 

活動の背景にある思いを伝えるためのパンフレット制作へのチャレンジ

事務局:

今回はプロボノにどのような支援を依頼したのでしょうか?

西上:

食生活支援における槇塚台(まきつかだい)のコミュニティレストランは8年目になります。自分たちとしては、地域包括ケアの拠点として活動をしているのですが、地域の住民さんからすると、「単なるお弁当屋さんやないか?」と思われていると感じることがあります。

ただ、ありがたいことに自治会さんとの連携はできていまして、年に数回は、校区福祉委員の方が独居の高齢者の見守り活動のツールとして配食のお弁当を利用するなど、うまく活用くださっています。また市立大学の先生とも連携して低カロリーでヘルシーなメニューで、材料も地産地消でこだわってやっています。ただ長く継続していると、当初の活動の思いがだんだんと薄れてきます。自治会の方の中でも理解してくれている方は「良いことをやっている」と言ってくださったり、チラシの配布に協力してくださったりするのですが、中には「なぜ弁当屋のチラシを地域に配らなければならないのか?」と思われている方も居られます。

高齢者、障がい者、子育て世帯など、多世代の交流の場になるよう地域包括ケアを進めていきたい、それを伝えるためのパンフレットができれば、非常にありがたいという要望を出させてもらいました。

 

事務局:

泉北ニュータウンは地域として広いですが、槇塚台以外でも活動をされているのでしょうか?

西上:

槇塚台の他には、隣の校区の高倉台でも4年前から行政と組んで活動をしています。高倉台では、民間のスーパーが撤退していまい、住民の中にも買い物難民になってしまう方もいて、堺市さんからも相談をいただいたことで、働きたい障がい者の方と一緒にやればスーパーを復活できるのではないか、と提案を出して、堺市の協働モデル事業に採択され、堺市、すまいるセンター、社会福祉協議会、社会福祉法人、自治会、市場連合組合といった6つの主体が一緒になってスーパーの運営を開始しました。そのスーパーは障がい者のB型就労事業所として復活することができました。

事務局:

泉北ニュータウンの中には他にも近隣センターがあると思うのですが、槇塚台、高倉台以外にも広げて行きたいという思いがあるのでしょうか?

西上:

私たちのNPOで大事にしていることは、地域で困っている課題を解決する手法として取り組んでいるので、地元の自治会と連携することが一番重要だと思っています。地元の自治会と連携せず、単に弁当を売るとか、レストランを運営するとかだと、外部から見れば民間企業の営利活動と変わらなくなってしまい、やる意義がありません。

槇塚台の取り組みを進める時には、大学、自治会と連携し、高倉台では自治会からの相談があり、一緒にやることになりました。その際、運営協議会の中に自治会の方も必ず入ってくださいとお願いをしています。

今後、他のエリアに広げていく時にも押しかけていく、ということはしません。自治会と一緒に継続的に取り組みができるよう、まずは自治会から困りごとの相談をしてもらいたいので、そのツールとして、槇塚台の取り組みを他の地域の方にも知ってもらうためのパンフレットになればという思いもありました。

事務局:

パンフレットができてどう感じられましたか? またどう活用される予定でしょうか?

西上:

非常に満足をしています。大きなポイントとして、単なるレストランでもお弁当屋でもない、公的な取組がわかるパンフレットになったと思っており、成果物としてとても喜んでいます。

地元の自治会長さんにも相談しているのですが、単なるレストランのチラシだと住民の方から苦情が出る可能性がありますが、このパンフレットだったら良い取り組みだと思ってもらえるという感触を持ってもらうことができています。4月には自治会を通して全戸配布することをご了解いただいています。

 

まずプロボノワーカーに活動にかける思いを伝えた

事務局:

このパンフレットによって、住民さんの活動へのご理解が深まるということが期待されると思います。ここからは、パンフレットをどうやって作ってきたのかそのプロセスを紹介したいと思います。

プロボノワーカーは全部で4人です。一番右の方は泉北ニュータウンで生まれ育ったので、その関係もあって今回のプロジェクトに参加してくれました。平日は空調などを扱う企業でマーケティングを担当されています。その隣はデザイナーの方、左から二番目の女性は貿易事務をされている方、一番左は、コピーライターを担当された方で、もともと広告代理店にお勤めで、現在フリーランスで働かれています。

まず西上さんは最初にプロボノワーカーの方たちとお会いして最初の印象はどうでしたか?

西上:

正直なところ、どんな風に進めるのか、どんなゴールを目指して行くのか、全くの未知数でした。こんなことを地域に伝えていきたいんだ、という思いを一方的に喋ってしまったのですが、最初のミーティングはそれで終わりました。

 

事務局:

まずプロボノワーカー側は団体がどんなことを望んでいるか、しっかりとニーズを把握するために、思いを聞いて受け止めるところから始まるので良い形でスタートしたんだと思います。

写真でプロジェクトを振り返って行きますが、こちらはレストランでしょうか?

 

西上:

大阪市立大の学生さんにもデザインを協力してもらい、地域住民と一緒に作っていったレストランです。真ん中にある積み木のようなところがあるのですが、そこは子どもたちがパズルのように組み立てて完成させてくれました。

 

「なるほど、わかりやすい!」と思ったプロボノワーカーからの中間提案

事務局:

プロボノワーカーの方は、最初の西上さんからの熱い思いと、ただのレストランではない、ということは「思い」として受け止めていましたが、すまいるセンターが何をやっていて、実際の現場はどうなのか分からずリアリティがない状態でした。そのため、2〜3回はレストランを始め様々な現場に足を運びました。たとえば、パンフレットは誰に伝えるもので、そのために誰に話を聞けばいいのか、西上さんから、どんな方にお話を伺えるのか事前に確認をさせてもらい、利用者の方、配食を担当されている方など、ご紹介いただいてインタビューを実施しました。

 

この方は、レストランに来てくださっているお客さんですが、ご飯を食べるなら他にも選択肢がある中で、なぜこのレストランを選んでくださっているんですか?ということを聞いています。すると、そこに足を運んでくださる理由がわかり、レストランのアピールポイントが見えてきます。そのため団体の方だけでなく、利用してくださる方も含め関わってくださる方に話を聞いていきます。

お弁当の配達にも同行させてもらって、どんな方の元に届けているのか、なぜ活動に関わってくださっているのか、ということを移動中に話を聞かせてもらいました。

 

これは中間提案ミーティングと言いまして、団体に関わる方に話を聞いてきて、その情報を分析、整理した上で、パンフレットのコンセプトを西上さんはじめ団体のみなさんにお伝えする場です。

西上さんはこのミーティングではどのように感じられましたか?

 

西上:

レストランでは、単にご飯を食べてもらうだけでなく、2階にはレンタルスペースがあり、健康麻雀、卓球、ダンスなどの活動をしている7団体くらいの方がいろんな活用をしてくださっています。私の思いは、いろんな方が、この場所で集って、コミュニケーションをとって、健康になってもらいたいと思っています。

他にも独居の方に対して有償ボランティアの方がお弁当を届けるということをやっているのですが、以前に地域のお母さんから、未就学のお子さんと一緒に配食を手伝いたいという相談がありました。地域の中には社会貢献をしたいという若い方もいらっしゃいます。レストランに食べに来るだけでなく、そういった方々にも活動にも関わってもらいたいとも思っています。

そういった思いをパンフレットの中に上手く形にしてくださっており、「なるほど、わかりやすい!」と思いました。私たちの考えをまとめてくださってありがたいと思っています。

また、ただ単にレストランの食事メニューとか、美味しいですよ、というだけのチラシでは興味を持ってもらいにくいのでは、とプロボノの皆さんたちと話し合いもしました。

たまたまなんですけど、今度の4月から介護保険の改定で、デイサービスがリハビリの点数をかなり高くしないと事業として成り立たない、という状況の中で、協議会に入って一緒に取り組んでいる介護事業者がレストランの隣の空き店舗を使って、運動のリハビリができる施設を準備しています。

大阪市立大学の先生に以前から高齢者が健康になるためには運動だけでなく、食の栄養管理もしっかりすることが必要と言われていました。きちんとした食事の指導をやりたい、運動の指導をやりたい、それが両輪でできれば、という構想が半年前にありました。

レストランを前面に出すのではなく、別のワードの方が、見てもらいやすいのでは?という話し合いがなされて「健康」「いきいき」というキーワードが出てきました。

 

パンフレット制作を通じて、成果物以外に得られた周囲との連携

事務局:

パンフレットを作ると聞くと、表面的な見た目だけに目が行きがちだったり、すぐに現物が出てくるといった期待を持ってしまいがちかもしれませんが、誰がどんなニーズを持っているか把握して、誰に対して、どういった投げかけをしないといけないか、整理してしっかり伝えていくことがポイントです。今回の事例でしたら10月にプロジェクトが始まり、3ヶ月程度は調査とコンセプト作りに時間をかけてきました。

今回パンフレットを作りましたが、何かそれだけでなく副産物のようなものがあれば教えていただけないでしょうか。

 

西上:

もし自分たちだけでパンフレットを作ると、誰に何を伝えれば良いのかも曖昧なまま作ってしまう可能性があったと思いますが、レストラン単独だけではなく、食事、交流や趣味という大きな視点で地域にアピールするものを作り上げることができたのが一つです。

もう一つが、地元の自治会長さんから近隣センター全体での取り組みであれば、自治会も応援しやすいし、住民の方も来てもらいやすいという意見をもらっていましたので、有料老人ホームや、整骨院といった健康というキーワードに関連する周囲を巻き込むことができたこと、そしてこのパンフレットにも掲載して、自分たちの活動が公共性があることを表せることができたことです。

 

質疑応答

Q:

すまいるセンターさんからは、自治会から声をかけられないと活動しないと言われていましたが、声をかけられるための工夫を知りたいと思っています。地域団体としてどうやって自治会から声をかけてもらう工夫があるのかをお聞かせいただけないでしょうか?

 

西上:

自分たちのやりたいことを直接的に要望すると、引かれてしまうということがあるので、私たちのNPOは前面には出ないように黒子役に徹することにしています。

槙塚台レストランも、スタッフを雇う場合には、槙塚台校区の方しか雇わないということを地域の自治会さんと約束をしています。子ども食堂をやろうという要望が出れば、地域で何かをやりたいという人に来てもらって、その要望を手伝って、地域の黒子役に徹しているというところです。

だからこそ、自治会からも何かあった時には応援しましょうと言ってもらえています。自分たちはコーディネーター役として、人と人を繋いだり地域で困っている課題を結びつけて解決するということしかやっていません。

民間事業者では運営できない領域の活動を、どうしたら継続的にできるのだろうかを考え、これを繋いだら解決できるという事業をメインにしているので、これをやりたい、というすまいるセンター自身が要望する事業というものはありません。むしろ、自治会と地域の課題を解決する取組を一緒におこなっていこうという話し合いをすることが重要だと思います。

 

Q:

活動を展開する中で生活支援コーディネーターとの関わりがあれば教えてください。

 

西上:

槙塚台の取組みは、地域包括支援センターのエリア担当に会議に来ていただいています。過去には認知症の徘徊を発見した事例もあるので、高齢者の情報交換を地域で共有しています。

高倉台は社協さんにも関わってもらっているので生活支援コーディネーターの方も含めてイベントの手伝いや、情報交換をさせてもらっています。

 

 

大阪ええまちプロジェクトでは、すまいるセンターの「空き店舗を活用したコミカフェで、やりたいことはじめませんか?地域の協力を呼びかけるパンフレットを制作。」を応援しています。

 

大阪ええまちプロジェクトのプロボノによる支援によって制作された「すまいるセンター」のパンフレットはこちらからダウンロードできます。

 

 

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